3-4 正式加入と新たな仲間?
「はい?」
「え!?」
「おっ!」
エルフの予想外の言葉にシャラム、ミエリ、アフタレアが三者三様の反応をする。
「うーむいきなりだな……理由を聞かせてくれないか?」
「ああ、私は今その……金がなくてな、今回クルルメウの沼地にいたのも今夜の宿屋代を稼ぐためだったんだ」
「金欠なの?もしかして宵越しの金を持たないタイプ?」
「身なりは森の巫女って感じなのにギャップがあるなぁ、それともゴロツキに襲われて金取られたか?」
シャラムとアフタレアが妙に興味深々で質問する。
「頼むからあまり詳しくは聞かないでくれ……とにかく今は貴方たちに払う金は持っていないんだ、だから体で払う」
「ほー……いいこと聞いたぜ、アタシ好みの肉付きのいいエルフちゃんだし早速今夜からお楽しみといこうじゃないか」
「まあ戦力になるんなら文句はないよ、あとこのトカゲ女の言葉はまともに聞かなくていいから」
「俺ももちろん文句はない、ミエリの指揮能力ならユーエインと二人で入っても支障はなさそうだからな」
「え゛、わたしってもしかして過大評価されてない?」
「過大評価じゃねえよ、お前のおかげでアタシたちはヤツを倒せたんだから」
「ほお、何があったかは知らないがこの幼い少女は有能なんだな、よろしく頼む」
「いえ、わたくしめはただの荷物持ちです、あまり期待しないで……あと26歳です」
目を泳がせ、カチコチになりながらミエリが返答する。
「なに?ヒューマンでその年齢にしては容姿が幼いな」
「うるさい!どうせわたしは童顔で幼児体型ですよ!」
「あのー……私と二人で入るとは……」
ふざけたやりとりを聞いていたユーエインが後ろからしずしずと会話に入ってくる。
「ん?言っただろう、このパーティがお前を受け入れられる状態になったら入ってこいと」
「たしかそんな話だったっけ、まあトカゲ女は信用できるし、ミエリももう立派な解明者だから私も次からはヒーラーのあんたに入って欲しいかな」
「皆さん……はい!ヒーラーのユーエイン、これから皆さんと共に戦います!」
「とりあえずはダンジョンに潜る予定も無いからそんな気張らなくていい、次の目標が決まったら連絡する、とりあえず端末からパーティ登録の申請と連絡先の交換だけしていてくれ」
「分かりました!では皆さんに私の連絡先を教えておきますね!」
そう言って端末を取り出してメンバーとやりとりをしている最中、ミエリがイサオにふとした疑問をぶつけた。
「そういえばイサオさんって戦闘要員が二名増えたらパーティ抜けるって言ってなかったっけ?」
「その条件を出したのはお前だろ、それにしてもお前から口火を切ってくるとはな、その話を出したと言うことはもう俺に抜けて欲しいのか?」
「そんなわけないって、ただビルセティとエルフさんとユーエインさんが入るから黙って抜けるんじゃないかと思って」
「俺もそこまで甲斐性無しじゃない、俺はまだビルセティ……いやシルクレンビスのことを警戒しているからな、もう少し様子を見たいんだ」
「ビルセティは悪い子じゃないよ、でも残ってくれるなら嬉しい、頼りにしてるよ」
「ミエリ!あんたも連絡先教えときなよ!」
「わかってる!」
シャラムの呼び声に反応してミエリが端末片手にみんなの元へ駆け寄っていく、その様子を見たイサオは黙って蘇生院を降りる階段の方へ向かった。
………………
階段を降りきり治療院の中を抜けて外に出ると何やら大路の真ん中で簡易テントのようなものに揉みくちゃにされている人物が見えた。
「なんだあいつは?」
よく見ると若い男が広がるテントに荷物を巻き込まれて身動きできない状態のようだった。
「おい、お前大丈夫か?助けが欲しいなら欲しいと言え」
「た、助けて下さ〜い……」
男の情けない声に呆れながらもナイフを取り出して絡まる紐をイサオが切ろうとする。
「あ、テントには傷を付けないでくださいね」
「助けてもらってるのになんだその態度は」
「そうは言ってもそこは譲れないんです!あ、あとバックパックもやめてくださいね高いので」
「注文の多い奴だな、ちゃんと金は貰うからな」
そう言ってぐちゃぐちゃになった紐や金具を丁寧に取り外していき、数分かけて解ききって男を助け出した。
「いやー!本当に助かりました!ありがとうございます!」
「一体どんな馬鹿をしてたら道の真ん中でテントに絡まってダルマになるのか理解できん」
「実はついさっき新しいテントと携帯シャベルを買ったんです、で喜びを抑えきれずここで開いたらシャベルが引っかかって慌てて解こうとしたらご覧の有り様に……」
「そうか、次からは気をつけるんだな、それより約束のものを貰うぞ」
そう言ってイサオが右手を出した。
「ああ!お礼でしたね、それなら一番のお礼として次のダンジョン調査に僕がついて行きます!」
男の意外すぎる提案に一瞬イサオが硬直する、しかしすぐに気を取り直し男を睨む。
「別にお前など要らん、そもそもさっきの話から察するにお前がキャンプ道具を試したいからついて行こうとしてるだけだろ」
「バレましたか、でもポーターは便利ですよ!戦闘以外の生活面でのサポートは僕に任せてください!」
「生憎だがポーターは間に合ってる、それに俺はパーティを抜けるつもりなんだ、今のパーティに男のお前を入れる気などさらさら無い」
「うーん、それならあなたがパーティを抜けたあと僕と組みません?タンクだけではダンジョン調査は上手くいきませんよ!」
「それならまあ……いいだろう、その時は連絡する、連絡先を教えといてくれ」
「はい!毎日美味しいご飯を作りますね!」
「なんだその語弊を生みそうな言い方は……」
ポーターの男の押しの強さに折れたイサオが端末を取り出し連絡先を交換する。
「お前の名前はゼノルと言うのか」
「はい!ゼノル・アーチランドと言います!」
端末に表示された名前を読みあげたイサオにゼノルが満面の笑みを返してくる。
「よし、交換完了!それじゃあパーティ抜けたら絶対呼んでくださいねー!待ってますよー!」
男が大きく手を振りながら去っていく、嵐のような展開に若干疲弊しながら見送ったイサオの後ろからミエリたちの声がかかってきた。
「あ!イサオさんどこ行ってたんですか!」
「おっさん、アンタはいつか抜けるつもりなんだろうけどそれはそれとして連絡先教えるくらいしろよ、勝手に抜け出しやがって」
「なんでもいいけど早く宿に戻ろう?もう疲れたよ……」
「貴方はイサオと言う名だと皆から聞いた、私の名はエンロニゼ、これからよろしく頼む」
「そうか、俺のフルネームは神崎 庸だ、よろしくな」
「自己紹介は終わった?じゃあ戻ろうか」
「ちょっとシャラム!待ってって!」
「お前勝手に行くなよな!」
そう言って差し出された手を握り返してイサオが改めて自己紹介をする、そんな様子を無視してシャラムはどんどん宿屋街の方へと進んでおり、ミエリとアフタレアが慌てて追いかけていく。
「……では行こうか」
「ああ」(このパーティも、だんだん賑やかになってきたな……)
そんな様子を見てイサオはこの騒がしさに仲間たちの絆のようなものを感じていた。
(やはり俺はもう必要ないぞミエリ……ビルセティが信頼に値するか見極めたら俺はこのパーティを去ることにしよう)
そんなことを一人考えながらイサオは四人の後を静かについていった。




