表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ストレンジフィールド  作者: 大犬座
2章 実戦と濡れた人形
19/79

2-4 異形で人形

「おーい!イサオー!ミエリー!くそっ!どこ行ったんだ!」


「完全に見失っちゃったね、一人でもなんとかなりそうなイサオはともかく、ミエリは早く見つけないと」


「馬鹿!わざわざこの状況で長くダンジョンにいる必要はねぇっての!早く脱出して人呼んで死体探した方が全滅するよりマシだろ!?」


「じゃああんた一人で逃げれば?私は残って二人を探すから」


「アタシだけで尻尾巻いて逃げられるかよ!それに二人で行動した方が無事に出られる可能性が高いって言ってんだよ!訳わかんねえ意地を張んじゃねえ!こんな霧の中じゃ飛べねえのに一人で残るとか自殺行為だろうが!」


アフタレアの言っていることはもっともだった。この状況では捜索自体が不可能なのだから、先に脱出して救援パーティと合流することが最適解なのはシャラムにも分かっていた。


「……でもミエリは私を慕ってくれた後輩、置いていくことはできない」


「おまえなんなんだよ!ああもう分かったよ!1時間だけ付き合ってやる!それを過ぎたら引きずってでも脱出するからな!」


「……ありがとう、救援は既に呼んでいるからとりあえず足跡を辿って元の道を引き返そう」


「え?いつ呼んだんだ?」


「あんたがずっと叫んでた時にさっさと済ませたよ」


「おまえ……本当にずっと一人で活動してたのか?なんか集団行動に慣れてる気がするぞ」


「今はそんなのどうでもいいよ、足元は私が見るからあんたは空からマーダーバットが来ないか見てて」


「くそっミエリの奴、変な事しねえでじっとしててくれよ」


「……ありがとうね、付き合ってくれて」


「うるせえ!」


そんなやりとりの後、シャラムが進行方向と地面、アフタレアが後方と上空と確認しながら二人はもと来た道を引き返していく……


一方、そんな二人のやりとりなど何も知らないミエリは一人はぐれた事実に焦燥し、冷静さを失っていた。


「ど、どうしよう……早くみんなと合流しなくちゃ」


そう言ってさっきまで進んでいた方向、と思しき方へ走り出す。


しかし、パニックになっていたミエリは足元を全く見ておらず、シャラムたちが言っていた「泥に紛れる不自然な液体の流れ」に足を踏み込んでしまった。


「え?ひや!?」


液体の流れは大きくうねりミエリの足に絡みつき転倒させた。慌てて上体を起こし足元を見ると、泥から姿を現したのは薄いピンクの液体に気泡が混じったスライム……アフタレアが言っていたリビドースライムだった。


(!?まずい!)


すぐに起き上がり、足についたスライムを運良く振り払って走り出す。だがスライムが巻きついていた足にもどかしい痺れが走り、うまく動かせない。


(このままじゃ追いつかれる……!そうだ武器!)


ミエリはハンドガンを取り出し、流線形のフォルムで近づいてくる対象に発砲する。が、無情にも弾丸はスライムの体をすり抜け、そのままミエリの下半身に巻きついた。


「あ!やめてよ!ひあっ……!」


スライムは下半身を飲み込み、ミエリの身体を侵食する。


(このままじゃ絶対やばい!やばいどころかもう手遅れかも……)


身体に走る強い快楽がミエリの思考を鈍らせ、抵抗力を奪っていく。


「ひうっ!あ、あ、あ、あ!」


(まあいっか……どうせ元から死んでるんだし……気持ちいいな……)


思考が快楽で塗り潰される中、頭の片隅で全てを諦めたその時、近くの岩場から何かが飛び出し、その空高く飛び上がった何かの影がミエリたちに覆いかぶさった。


(あれ……なんだろう?)


夢心地の中ぼんやりとそれを眺めるミエリ、すると飛び上がったそれが物凄い速度で落下し、彼女を襲っていたスライムの中にダイブした。


「え?きゃっ!」


着地の衝撃でミエリはスライムから弾き出され、地面を転がりながら吹っ飛ばされた。


「あがっ!いったぁ……」


結構な距離を転がったミエリは水を吸って柔らかくなった倒木にぶつかって止まった。


何が起こったのか理解しようと、ミエリが痺れる体を無理矢理動かして立ち上がる。


「……え?」


先程スライムがいた場所は液体が蒸発するような音と共に凄まじい蒸気が発生しており、にも関わらず何故か周辺の視界はむしろ良好で、その中心には少女が立っていた。


そして少女のその両手は陶器が割れたように砕けており、その中からは暗い緑色の触手が飛び出していた。


その少女は触手でスライムと思しき液体を吸い尽くすとミエリの方を向き、軽くポーズを決めてこう呟いた。


「えっと……待たせました、「ヒーローは遅れてやってくる!」……これでいいんでしょうか?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ