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リデルの憂鬱


「なあ、クレイ。オレ、何かみんなに嫌われるようなこと、したかなぁ?」


アリスリーゼに来て、はや半年が経ち、オレは新たに建てられた皇女宮にレリオネラ太皇太后と一緒に住んでいた。一緒とはいえ、区画が厳密に分けられており、しかも会うには手続きが必要で、おいそれと会うことはできないのだけれど。


 とにかく最近のオレはある悩みを抱え、鬱々としていたのだ。なので、たまたま皇女オレの私室に来ていたクレイにオレは泣き言をぶつけていた。


「何だ、藪から棒に。久しぶりに会った俺が知るわけないだろう」


「いや、クレイのことだから、オレの周りの情報に熟知してると思ってさ」


 絶対、ソフィアやシンシアから情報は筒抜けに決まってる。


「まあ、否定はしない」


 やっぱり……まったく、オレのプライバシーはいったいにどこに?


「そこは否定しろよ」


「嘘は言えないからな」


 悪びれた様子も見せずクレイは笑って答える。

 その開き直りに多少カチンと来て、オレは嫌味っぽく質問する。


「じゃあ、嘘は言わないクレイさんなら、オレの疑問に答えられるだろ?」


 オレが苛ついているのを悟ったクレイは口調を優しくして尋ねる。


「何か気になることがあったのか? 相談にのるぞ」


 知らない人が見たら皇女に対し不敬罪もいいとこの会話だけど、オレが望んでそうしてもらっているので問題はない。


「実はさ……」


 オレは最近オレの身の回りで起きていることについてクレイの意見を求めた。



◇◆◇◆



「……つまり、身近な人達がなんだか余所余所よそよそしいと?」


「うん、そうなんだ。訳が分からなくてさ」


「別に実害があるわけでもないんだろう。ただの気のせいじゃないのか?」


「それはそうなんだけど、ちょっと……」


 寂しく感じる……だなんて恥ずかしくて言えない。


「リデル……」


 そんなオレの心情を見透かしたのかクレイはクスリと笑ってオレの頭を撫でる。


「な、なんだよ!」


「俺に任せておけ、お前の悩みは俺が解決してやろうじゃないか」


 頭に乗せられた手を外そうとしていたオレはその言葉に動きを止める。


「ホント?」


「ああ、俺は嘘を言わないクレイさんだからな」



◇◆◇◆



「おい、クレイ。オレをいったいどこに連れてくんだよ」


 解決してやると大見得おおみえを切ったクレイは「ちょっと俺に付いて来てくれ」と言うとオレを部屋から連れ出した。


「なあ、付いていけば本当にみんながオレに距離を置いてる理由が分かるんだろうな?」


「まあ、そんなところだ」


「適当だな……ホントに大丈夫か?」


 オレの心配をよそにクレイは先に立ってどんどん歩いて行く。


「おい、ちょっと待て。こっちは不味い、勝手に入ると怒られるんだからな」


 この奥はレリオネラ太皇太后(お祖母さま)の住んでいる区画なのだ。会う前に先触れを出して、向こうの予定を聞いた上で訪れるのが通例だ。皇族は家族であっても、みだりに会ったりできないしきたりとなっているようなのだ。もちろん、アリシア大好きお祖母様はいつ来てもいいと言ってはくれているけど、作法は作法だ。守らなくてはいけない。


 クレイはオレの制止も聞かず、前へと進む。そして、ある部屋の前まで来ると立ち止まった。


「ん、ここは?」


 確か、来賓が来た時に会食するための貴賓室のはずだけど。


「リデル……ここに、ちょっと入ってみてくれ」


「な……何言ってんだ。勝手に入ったら怒られるって……」


「大丈夫だ、俺が責任を持つ……それとも怖いのか?」


「こ、怖くなんてないさ。けど、お前が罰せられるのは嫌だ」


「大丈夫だ、俺を信じろ」


「……ったく、怒られたらお前が謝れよ」


「もちろんさ。さあ……」


 クレイに促されて扉の前に立つ。扉の向こうの様子を窺うが何も聞こえない。

 ええい、どうにでもなれ……オレは意を決して勢いよく扉を開けた。


 と、そのとたん、たくさんの人の歓声が耳に届く。


「アリシア様、お誕生日おめでとうございます!」


「皇女殿下、おめでとうございます!」


「えっ?」


 驚いてクレイに振り向くと奴は笑いながら言った。


「リデル、19歳の誕生日、おめでとう」


 そうだった、今日はオレの誕生日だった。すっかり忘れてたけど。


 呆気に取られて貴賓室に目を向けるとシンシアやソフィア、ユク達が心から嬉しそうにオレを祝ってくれている。中央には満面の笑みのお祖母様もいる。


 そうか、みんなオレに隠れて準備してくれていたのか。余所余所しさの正体はこれだったんだ。嫌われていないとわかってオレは心底ほっとする。

 

 くそぉ、クレイの奴ももグルだったんだな。


「さあ、リデル。みんなが待ってる。中に入ろうぜ」


「なあ、クレイ」


「ん、何だ?」


「やっぱり、お前嘘つきじゃないか」


「お、バレた?」


「全くもう……」


 オレは顔が綻ぶのを隠しきれず、みんなの待つ祝宴に向かった。


リデル君、お誕生日記念第二弾ですw

すみません、ひねりもない単純な話で……。

あと、生存確認の意味も含めての投稿です(>_<)


新作、頑張って書き溜めてはいるのですが、1万3千字ほど書いたところで納得できず、一から書き直して現在1万8千字ほどです。まだまだ、発表には時間がかりそうです。大変、申し訳ありません。

目途がついたら発表するつもりなので、その時はまたよろしくお願いいたします。


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― 新着の感想 ―
[良い点] リデル君、犯人に探偵役を頼むの巻。 宙ぶらりんな僕19歳♪ [一言] 新作ありがとうございます。
[一言] リデル君平和すぎてこの生活暇そう 待ってる( ˘ω˘ )b
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