表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法銃士の少年は美少女アイドルとともに竜の歌の夢を見る  作者: 三ツ矢 鼎
第一部 魔法学園編
9/88

双子の天敵

「おはようございます。七時になりました。皆さん、起床してください」


 チャイムの音と共にアナウンスが流れた。その声と共に左手につけた端末がぶるぶると震え、朔也は目を覚ました。一瞬ここがどこだがわからなくなっていた。朔也がぼんやりとしていると、目の前の間仕切りが開けられた。


「おはよう、真山。今日から学校だから起きた方が良いよ」


(学校……?)


 そもそも、真山と呼んだ少年は一体誰だったか。朔也の動かない頭が少しずつ起動し始める。そしてようやく答えを導き出した。


「遠野か……そうか、ここは御子神学園だったんだな」

「何を当然のことを言っているんだよ? まだ寝ぼけているんだな。急げよ、今日は制服や銃の支給があるんだから」


 朔也は遠野の言葉で、ベッドから起き上がった。遠野はもう白い学ランにベルトの付いた特徴的な制服に、身を包んでいた。


「カッコいいけど、コスプレみたいな制服だね」


 そういうと双子たちも顔を出してきた。同様の制服に腰にはガンベルトが付けられている。


「言うなよ。高名なデザイナーの作品らしいぜ。『青少年の学習意欲をかきたて、優秀なる戦士に相応しい正装』だそうだ」

「まぁ、色なしじゃこの制服着てたって誰も見るやつもいないから、あんまり気にすんなよ。さあ、朝飯行こうぜ」


 双子に連れられて行くと、学食は昨夜以上の混みようだった。双子たちのような白い学ランの学生は少なく、白いブレザーの学生がほとんどだった。


「ああ、朔也は色付きの連中の制服見るのも初めてか。たまに戦闘動画とかで知ってるやつも少なくないんだけどな」

「蛟との戦闘の動画?」

「そう、もちろん違法だけどな。たまに勝手にアップロードする奴らがいる。それで話は戻すけど、あいつらのブレザーの襟とネクタイやリボン、スカートがそれぞれ色が違うだろう?」


 言われてみてみれば、デザインこそほぼ同じだが色合いが違っている。


「昨日雨森辺りから聞いてるだろうけど、俺たち色なしは赤、青、黄、緑、白、黒の六色に色が付くんだ。そうすると各色の制服が支給されて、各寮に移動することになる。まぁ、時期は人それぞれだから、それまでよろしく頼むぜ」


 朝飯は和食と洋食のそれぞれバイキングになっていた。学生たちは食券を買うこともなく、列に並び各々好きなおかずと汁物、主食を選んでいく。高級ホテルの朝食並みのサービスで、朔也が数えただけでも十種類のジャムがあった。席に着くと、朔也はずっと心配していたことを口に出した。


「なぁ、ここの授業ってどんな感じ? 普通の学校と比べて難しかったりするの?」

「色なしの勉強は基本的な魔法の分類とその使い方、聖石銃の操作法、飛行訓練とかだけだから、あんまり危険ではないけど……まぁ、今までの学校での勉強はあんまり役に立たないな」

「各属性の特性の時には科学的なことがちょっと書いてあったな。どうも大学クラスの話になるらしくて大幅にカットされてた。色付きになると戦闘訓練が入って、フォーメーションとか戦略的なことを学ぶらしい」


ケンがパンを口に詰め込み、ジョーがご飯をかきこみながらそう答えた。


「少人数しかいないから、個別指導になるんだ。今日支給されると思うけど、座学はタブレット端末で授業を受ける。そこで試験を受けると次のカリキュラムに進んでいく仕組み」


 遠野が小さくパンをちぎってジャムにつけながら説明した。


「そうか……僕、そんなに頭も運動神経も良くないから心配でさ……」


 双子が口の物を飲み込み、口を開きかけたところで背後から声がした。


「なるほど、そんな心構えで蛟と戦うなんて、俺なら君みたいな人間に背中を預けられないな」


 後ろを振り返ると背の高い凛とした少年が立っていた。長めの黒髪に精悍(せいかん)な顔立ちは美少年に分類されるだろう。双子の方を見ると苦いものを食べた顔をしており、その様子から彼が長谷部であるということを朔也は察した。


「真山朔也です。長谷部くんで合ってるかな?」


 ふんと長谷部は鼻を鳴らした。


「俺の名前を知っているってことは大方(おおかた)そこの双子から話は聞いているだろう。せいぜい、英雄気取りで浮かれ気分に(ひた)ってろ。そういう奴から死んでいくんだ」


 長谷部の後ろから百八十センチは優にあるだろう巨体の少年がやってきた。


「長谷部、どうかしたのか?」


 低い落ち着いた声で声をかけてきた。


「榎木、何でもないよ。新入りの腑抜(ふぬ)けに挨拶していただけだ。行こう、広田が待ってる」


 二人は(きびす)を返して、奥の席へと歩いて行った。双子は二人がいなくなるまで無言で睨みつけていた。


「あれが、長谷部。嫌な奴なんだ。とにかく人を見下してきて、まぁ実際優秀なんだけどさ」

「あとから来たデカブツが榎木。あの二人はよくつるんでるな。あと広田っていうのはちびのがり勉。勉強すれば全部何とかなると思ってるんだ」

「落ち着けよ、二人とも」

 

 遠野が二人を静めさせた。


「真山も心配しすぎだけど、長谷部も蛟に対して敏感すぎるだけなんだ。いずれ、命を()けるんだからそれくらいの慎重さも時には必要だと思うよ。さぁ、早く食べてしまおう」


 遠野が言うと双子も黙って朝食に集中し始めた。朔也は白米を少しずつ口に運びながら、長谷部の言葉を反芻した。


(そういう奴から死んでいく……か)


 朔也はその通りだと思った。その途端、胃に重りが入ったように、食事が喉を通らなくなってしまった。結局、食事を半分残して四人は寮へと戻った。


「長谷部のこと、あんまり気にすんなよ。それじゃあ俺たち、授業があるから先に行ってるな」

「真山は雨森先生が迎えに来ると思うから、寮で待ってた方が良いよ」


そう言い残して三人は授業へと向かった。

お読みいただきありがとうございます。


次回『衝撃の再会』を今度こそよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ