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ブリーフィング

「ブリーフィングを始めるわよ! 蛟の発生地点は現在大規模山火事発生中の伊吹山に流れる翡翠川! なお、発生した蛟の色は……」


 そこで、鈴宮はいったん言葉を切って朔也たちを見た。その言葉を飛鳥が引き継ぐ。


「白です。 ユリグループは至急戦闘準備をお願いします。他グループもいつでも支援に飛べるようトンボとゴーグル着用を」


 朔也たちは急いで戦闘用意を済ませた。緊張感をもって四人は出動命令が下るのを待った。鈴宮と飛鳥が並び立つ。


「わかってるわね。リーダーは長谷部、ブロッカーは鶴来、樺倉、メインアタッカーは真山よ」

「先程のブリーフィング通り、現在、蛟発生地点では大規模火災が発生しています。周囲では消火活動をしている民間人もいます。そして、この状態では守護庁職員による結界も設置できません。その点を十分留意してください」


 はいと四人は答えた。


「ユリグループ、出撃!」


 鈴宮の号令の元、四人は空へと飛び立った。


「ほら、春田、行くわよ。出来るだけ、接近できるルートを選んで」

「了解です。鈴宮司令」

「あなたに任せて、大丈夫なんですか?」

「何言ってるの。基地を空にして、他に蛟が出た時、誰が対応するのよ? じゃんけんで負けたんだから、大人しくしてなさい」

「くっ、何故、聖銃士時代から運がらみの勝負に一度も勝てないのか、謎です。イカサマしてますよね?」

「アタシが神に愛されてるからよ。それじゃあ、あとは任せたわ」


 鈴宮は春田と共にバンに乗り、春田はそれを確認すると車を発進させた。


「聞こえてる? 長谷部、真山、鶴来、樺倉」

「こちら、長谷部です。聞こえています、鈴宮司令。ご指示を」

「蛟発生地点までおよそ直線距離で二十キロ、到着予定時間約十五分。ただし、恐らく山林火災の影響で視界不良が予測されるわ。配布した酸素ボンベの持ち時間は一時間。残量には注意して」


 了解と四人がそれぞれ答えた。


 飛行してすぐ伊吹山の方向は分かった。緑珪支部の上空から、既に白煙が視認できた。四人は真っ直ぐ目標地点へと飛ぶ。長谷部と朔也が前にその斜め後ろにそれぞれ樺倉とみつきが続いた。目標地点周辺は白煙で視界が悪くなっていった。それでも紅葉した山の裾がさらに真っ赤に燃え盛っているのが見えた。


「こちら、長谷部。鈴宮司令、目標地点付近に到着しました。視界はよくありません」

「全員、サーモグラフィーに切り替え、酸素マスク装着。翡翠川の中にいる標的の熱源を確認の後、攻撃開始。リミットは現刻より一時間。行きなさい」


 四人は簡易ボンベを装着すると白煙の中へ突っ込んで行った。蛟が発生したと思われる翡翠川に入ると通信が徐々に不安定になっていった。


「おうと……しなさぃ。状況……つめいを」

「鈴宮司令、電波状況が良くないため、通信が不明瞭です」

「げんば……しきは……長谷部に……至急……向かう」


 長谷部は空中で反転し、朔也たちを見た。


「おそらく谷間に入ったことによる、電波障害だ。俺の指示に従ってもらう」


 有無を言わせない口調で長谷部は告げた。一呼吸置いてから、ちらりと樺倉を見た。


「メインアタッカーを真山から俺に変更だ。真山と樺倉は後方から支援を」

「そ、そんな! 鈴宮司令の指示とは違うよ」


 樺倉が精一杯の勇気で反論すると、長谷部の冷たい声が耳元から聞こえてきた。


「不服か?」

「……長谷部くん、それはさすがに横暴ではありませんか? 鈴宮司令の指示やこれまでの訓練内容からしても、リーダーである長谷部くんこそが後方から指揮をとるべきだと思います」

「――悪いが、俺は真山を信用していない。確かに魔力は甚大かもしれない。だが、ユニット対抗戦や黒玖での戦闘の話を聞く限り、聖銃士として不適切な行為を取っていると思う。そんなヤツに俺たち全員の命運を預ける気になれない」


 朔也は言葉に窮してしまった。聖石銃をもつ手に力が入る。


「だったら、長谷部くんのブロッカーはあたしがするよ! だって、バディーなんだから」

「ダメだ。樺倉は実戦経験がほとんどない。こんなイレギュラーな戦闘では、少しでも不安要素を減らしたい」


 言外に役立たずと言われた樺倉は、言葉を失った。みつきが珍しく静かに怒りをたぎらせた声で長谷部に問いかける。


「真由まで貶めるつもりですか?」

「そんなつもりはない。それよりも、どうする? 酸素の残量は減ってきている。俺に従うのか従わないのか、さっさと決めろ」


 三人は押し黙った。しかし、ここで我を張っても仕方ないと朔也は覚悟を決めた。


「……わかった。この戦いは時間との勝負だ。僕は後方支援に入る」

「よし、それじゃあ行くぞ」


 長谷部と朔也は場所を入れ替わり、川を上っていった。緊張と不和から誰も声を発しない。


お読みいただきありがとうございます。


次回「ユリグループ」をどうぞよろしくお願いいたします。

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