ユニット会議 司令
それからは暫く何事もない日々が続いた。時々、先輩聖銃士たちが訓練から消えることがあったが、もう『クロユリ』の出動要請がかかることも無かった。朔也もやっと新しい銃の扱いが慣れてきたころ、墨村が朔也を呼び止めた。
「真山さん、ユニット会議が来週開催されることが決まりましたよ。もう幽谷さんと長谷部さんにはお伝えしました」
「ユニット会議……いよいよですか」
朔也はため息をついた。自分も本格的に戦場に立つことになるのだ。
「ユニット会議は司令が今までの訓練内容を考慮して決定します。その日は訓練がお休みですので講義室で待機していてください。候補生たちが揃っているところで発表がありますので」
はいと朔也は短く答え、そっと聖石銃に触れた。銃自身も朔也の緊張に応じて熱くなっているように感じた。
あっという間に一週間が経った。その間、ただでさえ神経質な幽谷はますます神経過敏になった。長谷部はあれから変わりなく、自分の事を話してくれたことで距離が縮まったかといえばそうではなかった。朔也は幽谷ほどではなくとも、自分のユニットと司令がどんな人物になるのか気が気ではなかった。
当日、緊張しながら朔也は講義室へと向かった。講義室にはもう数人集まっているようだった。周囲を見渡そうとした朔也は影から肩を羽交い締めにされた。
「さーくーや!」
「わっ!? ケン? 発色したの?」
驚く朔也にケンが得意げにブレザー姿を見せびらかしてきた。
「おう、朔也が発色して少しした後、俺たちも発色したんだ。なぁ」
「ケン、朔也が驚くから止めろって言ったのに。久しぶり、朔也」
ジョーもブレザーになっていた。ラインの色を見るとケンが赤、ジョーが青だった。
「二人とも別の色に発色したんだ」
「そっ。だから今回のユニットでは俺たちペアになるしかないだろ?」
「万が一違ってたらどうするんだよ」
「直談判するしかないな」
「生まれてこのかた、初めて別々に寝起きして行動するようになったけど、性格は変わらないな」
二人の掛け合いを見るのも久しぶりで朔也は緊張が解けていくのを感じた。
「じゃあ、今無色組って誰かいるの?」
「いや、あの後からやっぱり新入生は来なくて。榎木は黄、あと真由ちゃんが白。堀川が黄、沢村が赤だったかな」
「そういうわけで今、天虹寮は空っぽってわけだ」
へぇと朔也が話を聞いていると、扉が開いてみつきと樺倉が入ってきた。
「あ、ケン君、ジョー君、真山君」
「お久しぶりです、三人とも」
二人は揃いのシルバーのラインの入ったブレザーを着ていた。久しぶりのみつきとの再会で朔也は再び緊張がぶり返してきた。
「み、鶴来さん、樺倉さんご無沙汰してます」
「どうしましたか、真山君。コンタクトにしたのですね。お似合いです」
「きっとみつきちゃんと……じゃなくてユニット会議で緊張してるんだよ」
みつきの言葉に真っ赤になった朔也を樺倉が慌てた調子でフォローを入れた。
「真由ちゃん良かったな。鶴来さんと同じ白に発色して」
「うん。月白寮とか訓練は一緒。だけど、同じユニット組めなくて残念だな」
「真由はすごい努力して射撃も防御壁も上達しました。誰と組んでも大丈夫です、ね」
みつきが珍しく微笑んで樺倉の背中を軽く撫でる。ユニット会議が不安なのは樺倉も同じらしい。
「一体どういう形式でやるのかな?」
「先輩は本当にドラフト会議みたいにやるって言ってたな。あとは司令同士内々に決めてきて、発表するだけにしておくって」
五人がわいわいと講義室の後ろの方に陣取った。五人で集まるのはあの昼食会以来で、朔也はあの日々を懐かしくさえ思った。
やがて講義室の扉が開かれ、三人の男女が入室してきた。先頭は気弱そうなやせぎすの三十代半ばの男で、残りの二人は女性だった。二人は全く対極と言っていい雰囲気を纏っていた。
一人は長い黒髪を後ろで束ね、フレームレスの眼鏡をかけた黒のストライプのスーツの似合う知的な美女だった。
もう一方は高いヒールにタイトなミニスカートから伸びる脚は長く、モデルのような完璧なスタイルだった。髪は明るい栗毛で耳元で切り揃えていて、何故か室内にもかかわらずサングラスをかけていた。
「おお、入ってきた。あれが司令か?」
「司令ってあれだろ? 旧都大を首席で卒業しないとなれないっていう……」
「そうそう、防衛戦略科のマスターコース出身なんだよな。それにしちゃ、女性の二人は若過ぎるな」
お読みいただきありがとうございます。
ユニット編に突入です。
次回「ユニット会議 指名」をどうぞよろしくお願いいたします。




