その後2
「あ、結婚するの? おめでと!」
「あぁ、どうもどうも」
「へぇ、アキラも結婚かぁ」
「はい……そうです」
アヤカに会いに来ました。というか、会うの久しぶりだなぁ、とか思った。アヤカは、アーノルドさん達と一緒に街の復興を手伝っているので、魔法でここまで飛んできた。
「そっかぁ、わざわざありがとね」
「まぁ、直接言いたいと思ったのと、別にそこまで遠くなかったから」
「そんな事ないでしょ? 大変だったんじゃない?」
「いやいや大丈夫、大丈夫」
「やっぱ違うね。ずっと使ってたらそうなるんだ」
「いやぁ……どうだろ? 良く分かんないけど……」
俺はルドリーと契約したお陰で、魔法がいくらでも使えるようになった。なので、ここまでも特に大変という事もないまま来れた。いくらでも力が湧いてくるぞ!
中々凄いな、これは。
ルドリーにも分かるの?
もちろんだ、もはや我はお前みたいなものだからな。
そうだよね、なんか怖いな。
怖がるような事か?
「とりあえずおめでとう。私も誰か良い人居ないかなぁ」
「まぁ、アヤカだったら多分見つかるんじゃない?」
「他人事だなぁ、誰か紹介してよ」
「うーん……あんまり知り合いとかも居ないしなぁ」
「……仕事に戻るぞ……」
「はーい! じゃあ、ごめんね? また今度ちゃんと話そう?」
「オッケー、頑張ってね?」
「アキラも頑張ってよ? じゃーね」
アーノルドさんにも報告……しなくても良いか、したら逆に失礼かもしれない、だって別に繋がりとかそんなにないし。まぁ、失礼ってことないか、どんな反応には困るだろうけど。
……さて、次だ。
○○
(あーあー……)
(あ! こんにちは!)
(え!? オルトラさん!?)
(はい! 元気でした?)
(え、逆に元気だったの? え?)
(はい。大丈夫でしたよ)
マジか、オルトラさんは生きてた。じゃあ、見捨てたみたいに思って病んでたのは無駄だったのか? てか、良く無事でいられたなぁ、ホントに街はボロボロなのに。ほとんどなんも残ってないのに。
(え、今どこに?)
(シェルターの中です。場所分かりますか? 書店の場所)
(シェルター?)
(もしもの時の為に買ってたんですよ、いつ狙われるか分からないので)
(へ、へぇ……)
そんな都合良い事があるのか。まぁ、生きてるなら良かった、マジで良かった。
お前も死んでなくて良かったな。
かもしれないね。
他人の事は生きてて良かったと思うのに、自分は死のうとしてたんだな。
まぁまぁまぁ、あんまりその話は良いじゃない、ね?
そうだな。
(まぁ、とりあえず行ってみる。場所も多分、分かるし)
(待ってますね)
……オルトラさんに結婚した事を伝えるべきなのかは迷うが、まぁ、言っても良いか。
魔法でオルトラさんの場所を確認しながら街を歩く。実際にオルトラさんは地下に居た。その上の建物は無くなってしまっていたが、瓦礫は撤去されている。
「あぁ、お久しぶりです……」
「そうですね。会えるとは思ってませんでした」
「まぁ、正直俺も会えるとは……」
「ありましたね。機会」
「いやぁ、良かった。会える機会があって」
感極まっちゃって泣きそうだ。普通にオルトラさんが生きてた事が嬉しい。再会出来る事がこんなに嬉しいだなんて……うぅ、ごめん……みんなぁ。
自殺しようと考えて自分を少しだけ情けなく思ってしまいそうになったが、それはそれでちゃんと考えた結果だったし、それに、まだ……
まだ?
まだ完全に無くなったわけじゃないしね。
無くなるといいな。
のかな?
「……」
「どうですか? そちらの調子は」
「俺? 俺は……あの、実は、結婚する事になりまして……お陰様で」
「えぇ! 既婚者!?」
「すみません……なんか色々と驚かせてしまって……」
「なるほど、既婚者となればもうダメですね」
「……」
「あの人はどうなんですか? グレィースさんでしたっけ?」
「あぁ、あの人は多分、そういう人はいないと思いますよ」
「今度紹介してくださいよ、仲間じゃないですかぁ」
「……はい……機会があれば……」
「よろしくお願いしますね?」
「はい……はい……」
「カッコいいですよね。あの人」
「思います……はい」
オルトラさんと大臣が付き合うなんてあんまり想像出来ないなぁ、でも意外と上手くいくかもしれん。てか、大臣って本当にそういう人居ないのかな? 意外と居そう、だとしたら相手はどんだけ寛容な人なんだってちょっと思うけど。
「じゃあ、また今度、その時はグレィースさんも連れてきてくださいね?」
「はい……まぁ、また今度」
なんか、次の約束がドンドン作られていく。ドンドンやらなきゃいけない事が増えていく……こんな感じで結婚式って生まれたんだろうなぁ、一度に済ませるかって思いで始まったのかもしれない。
○○
最後は二人で挨拶に行く。村での挨拶を一通り終えたカエデさんと合流して、親方の元に向かった、さてさて、これで最後かな? 多分、ルイスくんも一緒にいるだろうしね。
「あ、親方」
「ん? どうした二人で」
「あの、実は私達……」
赤面し始めたカエデさん。今までもこんな感じで報告してたのかな? お互いにこういうのは苦手っぽい。
ふぅ、まぁ、ここは俺から切り出すとしますか、ギリギリ俺の方がちょっとだけ得意だろうし。
「あの、結婚する事になりました」
「……そうか、おめでとう。めでたいな」
「まぁ、そんな感じです……はい」
思ったよりも反応が薄くて困っちゃう。まぁ、実際結婚報告なんてされても、どうすれば良いのか分からないよなぁ、え、この空気どうなるんだろ?
「これまで色々ありがとうございました! ミリアさんには本当に助けられる事が多くて……」
「そういえばお前たちと一緒に暮らしてた時期もあったな、覚えてるか?」
「はい! 覚えてます!」
「その時からお似合いだと思ってたんだ。良かったよ、それから関係性が進んだみたいでな」
「ありがとうございます……」
「……そのお揃いの指輪は、結婚指輪なのか?」
「え、いや、そういうつもりで買ったやつじゃないですよね?」
「うん……そうだね……」
この世界にもその文化あるんかい。なら、お揃いの指輪買ったのって割とヤバい人だったな、まぁ、受け入れてくれてた時点で、もう大丈夫だったって事か、あんなにプロポーズで悩む必要なかったって事か。
「なら、私に作らせてくれ。大丈夫か?」
「あ、もちろんです! アキラさんも良いですよね?」
「もちろん大丈夫だよ? 親方のなら信頼出来るし」
「そうか。まぁ、時間は掛かるかもしれないが、必ず良い物を作るよ。それは約束する」
「ありがとうございます!」
「こんな世の中でも良い事はあるんだな。二人ともありがとう」
「……」
うぅ、その言葉は少しだけキツイ、辛い。だって、俺が死んでたら親方にとっておそらく悪い事になってたかもしれないわけだし、カエデさんも辛い思いをしてたかもしれない。
生きてて良かったか?
なんか、そればっかだな。
どうだ?
面倒くさー、頭の中にもう一人いるってメンド……
聞こえてるぞ?
うるさいうるさい!
なんなんだお前は。
「……」
「あの、また来ますね!」
「ああ、いつ来ても大丈夫だぞ」
「ありがとうございます!」
そんな感じで、一通り挨拶を終えた。ふぅ、もう居ないよな? 大丈夫だよな? 言い忘れた人とか居ないと良いんだけど、どうだ?
自分の知り合いの中でも、特に関係が深い人を一人一人思い浮かべてみる、思い出を辿る中で、二人だけ思い浮かぶ人がいた。
一人はイーリカで、一人はカエデさんのおばあさんだった。
サクラさん、つまりおばあさんにはお墓があるから、一応報告には行けるんだろうけど、イーリカにはどうやって報告すればいいんだろう。
……生きてる内に言ったらどんな反応してたんだろうなぁ、意外と祝福してくれたかもしれないし、全く興味を持ってくれなかったかもしれない、どっちにしても、何にしても、何か言ってくれるだけで嬉しかったかもな。
悲しい……
「それじゃあ、帰りましょうか?」
「……うん、そうだね」
「村のみんなもアキラさんに会いたがってましたよ?」
「そっか……考えないとね」
二人で腕を組んで街を歩く。俺はいつまで生きていけるんだろ。少し傾いた陽の中で感傷的になった。