その後
「あ! おはよう?」
「あ、どうも……こんにちは……」
「ははは! 元気そうだね?」
「あ、はい、お陰様で」
「ははは! そっか」
まぁ、何事もなかったかのように大臣の目の前に来てみた。すると皮肉っぽい事を言われながらも、なんだかんだ受け入れられてる気がして嬉しかった。
またそうやって騙されるんだな。
いやいや、もう騙されない……というか、騙すも何もないよ。
そうだと良いな。
「あの、実は結婚します」
「あっははは! そっか! ははは!」
「……」
「随分遅かったね? もうしてるもんだと思ってたよ」
「そんなもんなんですか?」
「まぁ、忙しかっただろうしね。ははは」
誰のせいで忙しかったんだ。って思いました。
「あの、ついでなんですけど、魔法ってどうなりそうですか?」
「ん? あぁ、今法律でも作ってみようかなって思ってるところだよ?」
「法律……」
「魔力を検知できるセンサーをさ? この国の全体に張って、一定以上使った人がいたら僕たちで捕まえるっていう感じかな?」
「なんか、一つ疑問なんですけど、そのセンサーに掛からないように魔法を使うとか無理なんですか?」
「はは。今のところそれも可能だから、何重にも張り巡らせてみようかなぁって」
「どういう事ですか?」
「一つや二つなら掛からないように出来るんだけど、数百とかに掛からないようっていうのは無理そうだからさ。そんな感じかな?」
「へぇ」
「僕だけじゃないからさ? ハリォードも考えてくれてるみたいだし、なんとかなるんじゃないかな?」
「良かったです、はい」
比較的安全なやり方で解決しそうで良かった。みんなの記憶は消されないっぽいな
「まぁ、それじゃあ、また」
「ははは、またよろしくね?」
「いや、手伝うかは分からないです、はい」
「ははは! まぁ、手伝いたくなったらいつでも言ってよ」
「まぁ、無さそうですけど……」
「正直、もう一人で全部出来そうだから、良いんだけどね?」
「え? そうなんですか?」
「まぁ、契約出来たしね。ははは」
「はや……」
「あっはは! なんか気が合うんだよねぇ。はは」
大臣と気が合うってどんな変人だよ。
「それにさ? どうしようもなくなったら記憶を消せば良いだけだしさ? ははは!」
「……それ以外の方法で、出来れば……」
「努力するよ。出来る限りね?」
「ありがとうございます、信頼して任せます」
「ははは、そう? まぁ、またね」
「あの、これからもよろしくお願いします……」
「こちらこそ。ははは!」
この国はハヤトとエラさんの二人が王様になっている。だから、大臣が本当の大臣に戻る日は近いのかもしれない。
どうしてずっと大臣と呼んでたんだ?
さぁ、まぁ、でも、最初がそうだったしね。
途中からそうじゃなくなっただろ。
まぁ、こればっかりは性格の問題?
そうか。
○○
「ハヤト? あの、実は……俺、結婚するみたい、てか、結婚する事になった」
「え? そうなの? おめでとう、カエデさんと?」
「うん、そう」
「そっかぁ……」
こうして色んな人に挨拶周りをしているのだった。俺は俺でやってるけど、カエデさんはカエデさんで大変らしい、村の人たちがいるから。そっちはそっちで俺も行かないとなぁ。中々大変な事になってきた。
「……あの、実はさ、言ってなかったんだけど、僕もエラさんとそういう約束をしててさ……」
「え!? 婚約してたの?」
「うん、まぁ、今は忙しいからアレなんだけどさ、まぁ、落ち着くことなんてあるのか分かんないんだけど……」
「マジかぁ、びっくり」
二人が付き合ってるのは知ってたけど、そこまでいってたなんて思わなんだ。はや。
お前が遅いだけじゃないか?
いや、流石に二人が早いでしょ? これは。
どっちもかもな。
まぁ、確かに。
「カエデさんにもいつか挨拶したいな。だってアキラくんのお嫁さんなんでしょ?」
「まぁ、そうなるんですかね。てか、この国って結婚あるんだよね?」
「あるよ? 難しい事とかもないよ?」
「そっか」
「あの、やるのか分からないけど、もし結婚式とかあるんだったら呼んでね?」
「あぁ、そっか。ハヤトはやるの?」
「どうだろ……忙しいからなぁ」
「そっか」
結婚式かぁ。今んとこ開くつもりはないけど、カエデさんがどう思うかだよなぁ。てか、別に魔法なら手間なんてかからないんだし、人集めるだけならやっても良いような気はするけど、マジで普通に恥ずかしいんですが。
「まぁ、考えとく。そんな感じでした」
「ははは、じゃあ、僕も仕事に戻るね」
「……手伝える事があったらいつでも……」
「はは! 全然乗り気じゃないじゃん! でも、ありがとね」
はぁ、次は誰のとこ行こうかなぁ。
○○
「まぁ、こんな事、アイラに言う必要ないかもしれないけどさ。結婚する事になりました」
「おめでとうございます」
「……まぁ、そうだよね。そんな事言われても、って感じだよね」
「そんな事言ってないじゃないですか。おめでとうございます、って言ったんですよ?」
「確かに……まぁ、報告でした」
「カエデさんとですよね? 良い人じゃないですか。アナタには勿体無いくらい」
「まぁ、それは否定出来ないかもしれない」
「自信持ってくださいよ。そんなんじゃこれから先大変そうですけど」
「自信かぁ……まぁ、頑張ります、はい」
アイラにも話をしにきた。正直、アイラに報告する必要があるのかは分からなかったが、話さないのはそれはそれで変だと思ったので、一応来た。興味を持ってくれてるのか、くれてないのかはよく分からない。
「必要か分かりませんけど、カエデさんの分の女神像をあげます」
「あ、良いの?」
「はい。持ってきますね」
そう言ってアイラは奥の部屋から女神像を持ってきてくれた。チラッと一瞬部屋の中が見えたけど、めちゃくちゃ増えてたなぁ、このままだと前と同じくらいにはなりそうだ。
「はい、どうぞ」
「あぁ、ありがとうございます……」
「良い事あると良いですね」
「そうだね……まぁ、あると良いね」
「今度は二人で来てくださいよ。他にも贈り物とか用意しておくので」
「あぁ、うん、ありがとう」
「それではまた」
「まぁ、また」
なんだかんだ祝福してくれたなぁ、と両手に女神像を持ちながら思った。てか、めちゃくちゃ上達してるじゃん、もはや普通に女神像だ。
アイラも頑張ってるらしい、ふぅ、俺も頑張らんと。