表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で、なんか、流されるように生きている  作者: 豚煮豚


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

331/334

300 ルドリー

 

(起きろ)

「うぉ! びっくりしたぁ」

(死ぬつもりか?)

「いやぁ、危なかった、死ぬところだった」

(死にたくないのか、死にたいのかハッキリしろ)

「うーん、よく分かんないね。正直、どっちなのかは分かんない」

(お前、このままだと本当に死ぬぞ? 痛みがないから実感もないんだろうが、本当に死ぬぞ?)

「そっか」

(良いのか?)

「まぁ、別に良いかな。だってね、イーリカも死んじゃったし、他にもオルトラさんも……まぁ、オルトラさんはまだ分かんないけど」

(友人が死んだからと言ってお前が死ぬ必要なんてないんだぞ)

「いや、そういうわけじゃないんだけどね。ただ、死んでも問題無いなら死んでも良くない? 問題無いんだし」

(そうか?)

「まぁ、そうだと思う。だって問題無いんでしょ? 女神様が幸せにしてくれるんでしょ?」

(そうかもな。ただ、本当にそれで良いのか?)

「うん、てか、そもそも俺は一回死んでここに来たわけだし、そうなると、死んでも問題無いでしょ」

(……本当に問題は無かったのか? 元の世界の人間は悲しんでるんじゃないのか? お前がいなくなった事でな)

「かもしれないけど、そんな事言ってもしょうがないじゃん、死んでるんだし」

(確かにな。ただ、今のお前はまだ死んでないんだぞ? しかも、生きていこうとしたらいくらでも生きていけるんだ)

「良いじゃん。もしかして、ルドリーは俺に生きててほしいの?」

(あぁ、当たり前だろ。お前が死ぬという事は我が死ぬということでもあるからな)

「大臣は……そっか」

(そうだ。お前を生かそうとするのは当たり前だ)

「そんなのさぁ……うーん、でも、ルドリーは俺の問題を解決してくれないでしょ? 生きてる時の問題」

(まぁな)

「それなら俺が大変になるだけだから、うん」

(どうしたら生きてくれるんだ? 教えてくれ)

「まぁ、なんだろ。分かんないなぁ」

(というか、お前本当にそろそろ死ぬぞ? それすら分かってないまま死ぬのか?)

「マジで?」

(あぁ、魔法で麻痺してるんだろ。死ぬなら一度ちゃんと話してから死ね)


 どうやら俺はもうすぐで死ぬようだ。ただ、流石にこのまま死ぬのは消化不良なので、少しだけ傷を治してまた生きていこうとする。というか、こうなると俺は本当に死にたいのかどうかが分からなくなってきたな。


「まぁ、もうちょっとだけね」

 そうか。

「てかさぁ、無責任じゃない? いつも自分が話したい時だけ話しかけてさ、もっと助けてよ。普通に」

 分かった。これからはそうするから生きてくれ。

「本当に? 信じられないなぁ、だって正直、今死ななかったらずっと死ななそうじゃない? とりあえず時間稼ぎをしたいだけでしょ?」

 それはお前が自分で確かめてくれ。とにかく死なないでくれ。

「そんな……まぁ、そこまで言われたらなぁ、なんか、これだと本気で死ぬ気なんてなかったみたいに思われそうだけど」

 ホントに死ぬところだったんだぞ? そんな事思うわけないだろ。

「そう? 俺はそうだったんじゃないかって思い始めてるけどね」

 そうか、まぁ、とにかく生きてくれるならそれで良い。

「はぁ……大臣にまた会うの恥ずかしいなぁ、結局生きてんじゃんって思われそう」

 笑われるかもな。

「そう。いやぁ、ちょっとやっぱり…….」

 でも、きっと喜ぶと思うぞ。アイツも、他の奴らも。

「喜んでくれると良いけどね。まぁ、もう起きようかな」


 俺は、このまま死ぬつもりだったが、ルドリーに説得されたので生きていく事にした。今考えてみると、どうして死のうとしていたのかもよく分からない。ただただそういう気分だっただけかもしれない、そういう気分の時に、酷い事が沢山積み重なってしまっただけ。

 でも、ホントに死んでたかもしれないっていうのは驚きだ。なんか、本当にカッコ悪いかもしれないなぁ、ダサい。ドラゴン討伐も手伝えば良かったし、イーリカとももっと楽しい思い出を作れば良かった。そうすれば死ななくて済んだ人が居たかもしれないし、後悔なんてしてなかったかもしれない。

 そう考えると本当にダサい。


 死んでた方がダサいぞ。

「そうかもなぁ」

 生きてるなら生きていけば良い。なにがあるか分からないからな。

「前にもそんな事言ってたっけ?」

 言ったかもな。死んでしまうよりは生きてる方がマシだろ。

「俺的には分かんないけどね」

 少なくとも周りにとってはそうだろう。

「今はそうかもしれないけど、将来的にはどうなるか分からないじゃん」

 お前もアイツに死んでほしいと思ってたんだろ? じゃあ今はどうだ? 今でも殺したいか?

「今は……そんな事もないかな。そうだと思う」

 そういう事だ。死んでほしいと思っていたとしても、いつかはその事を忘れてしまう。いつかはどうでも良くなることの為に死ぬ必要なんてないだろ。

「いやぁ、でも、問題が解決しなかったら一生付き合っていかないとじゃん」

 その時はその時に死ねば良い。お前の問題は本当に解決しないのか?

「俺の問題……」


 俺が抱えてる問題ってそもそも何? 正直な話をすると、イーリカが死んでしまったので問題はなくなった。それが嬉しいはずはないが、その事について考える必要がなくなったのは間違いない。どうしてこんなにウダウダ悩んでるんだろ。


 お前が悩んでいるような問題なんてないんじゃないか?

「そうかも……てか、あれ? おかしくない?」

 やっと気付いたか?

「うん、てか、え? 契約出来たの? なんで?」

 さぁな。ただ、瀕死のお前には、魔法を使う力が残っていなかった事は教えておくぞ。

「そっか」

 お前の事を守りたいと思ったんだ。そして、お前は我と話したいと思った。だから、出来たんだろうな。

「……マジか、そんな事面と向かって良く言えるね。え、マジで?」


 お前の事を守りたいと言われて、死ぬほど嬉しかったが、ちょっと、こういう感じの事を言う人だと思ってなかったので、相当驚いている。意外だし、シンプルに凄いなぁと思った。

 嬉しいなら良かったよ。言って良かった。

 うわぁ、頭の中に入ってきた。

 これからはこういう風になっていくんだ。慣れてくれ。

 マジか、え、今からでも元に戻らない?

 戻る事は出来ない。

 そうなんだぁ


 そりゃ中々踏み切れないわけだ。これは中々厳しいというか、大丈夫なのか? これからの生活。

 帰らないのか?

 うーん、まぁ帰ろっか。


 というわけで少しオレンジになってきた空を眺めながら、歩いて帰ることにした。カエデさんは家に居んのかな、ドラゴン討伐のお礼も言っとかないと……他にも言わないといけない事がぁぁ。

 結婚か?

 まぁ、そうだよね。そうなるよね?

 お前なら出来るだろ。死ぬよりは楽に出来るはずだしな。

 そうだよねぇ、死ぬよりは……えー、でも出来んのかな?

 大丈夫だ。カエデもお前の事を愛しているはずだ。

 マジでぇ? ホントにぃ?

 感じないのか?

 それはノーコメントで。


 カエデさんからの愛はめちゃくちゃ感じる。

 やっぱりな。

 おいー! 別に話しかけようとしてる訳じゃないんだよ。ただ頭の中を整理しようとしてただけにいきなりやめろ!

 愛を感じるならそれで良いだろう。後はお前だけだ。


 歩きながらルドリーとそんな事を考えていた。考えてみた結果、俺はカエデさんにプロポーズする事にした。向こうからしたらあまりにも無茶苦茶な状況かもしれないけど、タイミングを待ってたら一生無理だ。

 そうだな、お前はいつ死ぬか分からないしな。

 いや、それは言わなくて良いんだって。

 死なないように頑張れよ。気持ちの面でもな。

 はいはい。

 守らないとな。

 はい、そうします。俺が……ええー、もう無理かも……

 大丈夫か?

 守らないと……俺がカエデさんを守らないと……うわぁー。

 お前の事は我が守る。から安心すれば良い。

 そうなの? まぁ、よろしくね。


 もう家の目の前まで着いてしまった、もし仮にここにカエデさんが居なかったらそれはそれで辛い。どうせいつかはしないといけないなら、今しちゃいたい。自殺しようとした後にプロポーズするっていうのも無責任な話だな、まぁ、いいか。


「ただいま」

「あ! おかえりなさい!」


 居た。居たら居たで辛い。はぁ……嫌だなぁ……

 どうした? 出来ないなら代わりにしてやろうか?

 いや、それは良いよ。うん。


「あの、カエデさん? ホントにいきなりなんだけどさ?」

「はい? どうしたんですか?」

「うーん、まぁ、結婚しよう」

「え!? え、ど、どういう……」


 俺は頭がおかしくなっちゃったのか? 色々ありすぎてどうかしちゃったような気がする。だって、どう考えても今じゃないしなぁ、でも、ここでコレをやっとかないと、また死にたくなっちゃいそう。


「……あの、よ、よろしくお願いします……」

「……俺が守るから、うん、カエデさんの事を」


 言ったな。ちゃんと守れよ?

 はいはい……まぁ、守らないとだなぁ。


 晴れやかなのか、辛いのか良くわからない気持ちの中で、カエデさんに抱きつかれた。それにちゃんと抱き返す。はぁ……これからどうなるんだろ?

 さぁな、ただ、生きてて良かっただろ?

 ……どうだろ。


 色々な事を犠牲にしてしまった。だから、そんな自分は死ぬべきだと思ったが、どうやら人間は、というか、生き物は生きていく為に生きているらしい。なので、醜くても俺はこうして生きている。

 本当に生きてて良いのかは良く分からないし、イーリカやフレイデルくん、大臣やオルトラさんなど、沢山の事を考えるとやっぱり死にたくなる。


「生きてて良かった」

「ありがとうございます! 心配させてすみません」


 はぁ……これで良いのかなぁ。

 さぁな。

 分かんないなぁ。

 それでも、お前は生きていく事を、守っていく事を選んだんだ。それだけでも良いんじゃないか?

 ……ルドリーもありがとうね。

 気にするな。

 これからよろしくお願いします。

 改まるな。


 問題はまだまだ山積みだし、これが全て解決する事は絶対にないような気がした。ただ、俺はカエデさんと一緒に暮らしたかった。


 それが俺の『やりたい事』なのかもしれないなぁ、とか思ってみたりした。


「これからもよろしくお願いしますね? アキラさん?」

「こちらこそ、よろしくお願いします……頑張ります」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ