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296 護られていない

 

 時間が過ぎていく。気付けば近くに居たのはイーリカだけだった。みんな忙しい、俺以外はみんな忙しいみたいです。


「何してんの?」

「……さぁ」

「へぇ、まぁ、なんでも良いけどね」

「……イーリカは知ってるの?」

「うん。知ってるよ」

「そうなんだ」

「ミリアが今剣作ってるよ? とにかくデカイ剣。ドラゴンの首を斬れるほどの大きさ」

「そっかぁ、イーリカは見たの?」

「完成したのは見てないけどね」


 思ったよりもイーリカは明るかった。これだと俺が死ぬみたいだな、それぐらいに逆だ。まぁ、正直な話、俺が落ち込んでいるのは、別にイーリカの事だけじゃない。もっと色々、なんか色々な事があって疲れた、っていうのは本当の話だ。


「スューリとカエデの二人は頑張って進行を止めようとしてるらしいよ? ミリアの剣が出来るまでの間ね」

「そっか」

「このままだと街に突っ込むんだって。被害が増えないようにって」

「……」


 どう考えても、俺も手伝った方が良いんだろうな、だって二人だけで、どんだけデカイのかは知らないけど、何万年も生きてるドラゴンに時間稼ぎをするって大変だろうし。


「アヤカとかアーノルドも壊れた街の修復に向かったんだって」

「へぇ……え、二人の事知ってるの?」

「ん? 知らない。けど、スューリに言えって言われた」

「…………」


 溜め息が出そうになってしまったが、イーリカの前だったので、なんとか抑えた。どんな目的があって俺にその事を伝えるようにイーリカに言ったんだ? 手伝わなくて良いとか言ってたけど、本当は手伝ってほしいのか? どうしたら良いのかは教えてくれないと分からない。

 わざとやってるんだろうな。俺が落ち込んでる事を知ってて、わざとそういう事をイーリカに言うように仕向けたんだろうな、そういう人だし。


「……イーリカは……」

「どうしたの?」

「遠くまで逃げたりとかしたらさ、イーリカも助かったりしないのかな」

「しないって。もう言われたから」

「そっか」

「スューリもミリアも考えてくれてたんだよ、その事を」

「……」


 ………………

 しばらくの間は、複雑に色々な事を考えていたが、この家は真っ暗で明かりが点いていない事に気付いて、照明を点けないといけないと思ったが、そんな事をする気力が無かった……てか、ウザいな。ほとんど理由なんてないようなものなのに、なんでこんなに落ち込んでるんだろ? 気色悪いな。

 自己嫌悪の結果、死にたくなってきていたが、隣にイーリカが居るのにそんな事を思った事が嫌だった。とはいえ、自分の心なんてどうやっても操れないので、困っていました。


「まぁ……散歩でも行く?」

「え? 行かない」

「あぁ、そう」

「私が居なくなるのってそんなに嫌だった?」

「……まぁ、そうかもね」

「でも、多分違うよ?」

「え?」


 イーリカには俺の心が分かるのだろうか? 確かに、イーリカが居なくなるということだけでここまで落ち込んでいるわけじゃない。そこまで分かって、多分違うよ、と言ったのかな?


「もう護られてないから。ずっと前から」

「イーリカが?」

「アキラが」

「あぁ、通りで」

「不幸だった?」

「少しね」

「どんな感じ? 不幸って」

「……何にもない感じ。というか、色々?」

「何にもないって?」

「正直な話をすると、よく分からないんだよ。それに、分かろうとしても、分かろうとしてないというか」

「なにそれ」

「どうでも良いんだと思うよ。でも、本当はどうでも良くないんだと思う。自分の事も、イーリカの事も」

「どうでも良いって思ってるんだ」

「……ちょっとだけね。だって解決出来ないじゃん」

「ふーん」


 イーリカ曰く、俺はもう女神様に護られていないらしい。通りで最近不幸な事がいきなり積み重なってきていたのか、前にも同じような事を体験しているはずなのに落ち込んでいるのか。

 この虚しさはどうしたら良いんでしょうか? 神様にでも祈ってみようかな、助けてくれるらしいし。


「自分で護らないとね」

「へぇ」

「自分で自分の事を護らないと、私みたいに幸せになれないよ?」

「イーリカは護られてるじゃん」

「私みたいに幸せにってそういう意味じゃないよ。私は生きていられてる事が幸せだし、この後死ぬ運命にある事、それさえ幸せだって思ってるの。だって、それは自分のまま死ねるって事だし、なによりも女神様に導かれるって事だから」

「ふーん」


 どうやら宗教的な話をしてきているらしい。まぁ、もしかしたら今の自分に必要なものは宗教かもしれない、というか、女神様が存在している以上は、ただの宗教的なものだと吐き捨てる方が間違ってるのか。ちゃんと受け入れた方が良いのかもしれない。なんだか気色悪いけど。


「……街がまた潰されたんだってさ。鐘の有った国が」

「……」

「知り合いが居たんでしょ? 言ってるよ?」

「……」

「全部賢者は予言してたんだって。本に書いてあったらしいよ」

「そっか」


 鐘のあった国にはオルトラさんが居た。きっと、助ける事は出来たと思う。そういう機会を作り出す事は出来たはずだなぁ、

 もうどうしたら良いんだ。


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