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294 怪しい腕輪

 

 王子様が居なくなった街の王様はハヤトとエラさんの二人だった。ただただ王冠を二人に献上するだけの義務的な王位継承式が行われてからは、何事も無かったように当たり前の日常へと戻る。

 俺もその式を見ていたが、ハヤトの横にハリォードさんが居てビビった。そんなに近しい関係になっていたとは……その時に目が合った。手を振ってくれたので、どうやら俺の事は覚えているらしい、当たり前か。

 その後、テレパシーでハリォードさんに呼ばれたので、お城へと向かった。王子様が居なくなっても、お城に行く機会があるとはな。ちなみにカエデさんは村のみんなに挨拶をしに行ったそうな、まぁ、今まで忙しかったしね。


「おぉ、久しぶりだなぁ、ありがとなぁ」

「え? 何がですか?」

「いやぁ、ほらこれ見てくれよぉ」


 会っていきなり感謝をされたので、どうしてか聞くと、目の前に謎の腕輪を出された。なんか、普通の腕輪って感じじゃなくて、どこか機械的な雰囲気を感じる。だって謎の液晶付いてるし。


「え、これは?」

「これを付けると魔法を使った事が分かるんだよぉ。ちょっと付けるぞ?」


 ハリォードさんは怪しげな腕輪を付けてから、手のひらに女神像を出現させる。すると、腕輪がピィーッピィーッと高い音を立てて鳴り出した。

 慌てる事もなく、その音を消したハリォードさん。どういう原理? どうせ原理とかもなく動いてるんだろうけど。


「これはぁ、音だけじゃなくてシグナルも来るようになってるんだぁ。だから魔法を使わないように出来るだろ?」

「ん? どういう事ですか?」

「これの着用を義務付ければ、魔法を過剰に使った人をすぐに見つけられるって事だなぁ」


 監視社会。まぁ、それ以外には無さそうだし、そうするしかないんですかね? てか、義務化なんてしたらハヤトも殺されちゃうんじゃないの? そんな事はない?


「義務って……出来るんですかね」

「出来なかったらぁ、まぁ、気付かれない形のセンサーを作る事になるのかなぁ、許可が取れたらそれが一番良いなぁ」

「なるほど……」


 めちゃくちゃ陰謀論みたいな話してるけど大丈夫か? まぁ、別にそこまで説明する義務が存在してないから、問題ないのかもしれないけど、これはこれでまた別の問題が発生しそうなカオリがする。


「いやぁ、大変だよぉ。魔法の使用を反対する集会も開かれちゃっててなぁ、どうしたら良いのかぁ」

「集会?」

「そうだよぉ。ご高齢の方々を中心にそういう活動が広まってるんだなぁ、若者もちょっとずつ賛同していってて、大変だぁ」

「うーん、なるほど」

「鍛冶屋を開いてた変わり者が始まりなんだってさぁ。名前は忘れちゃったんだけどなぁ」

「……へぇ」


 親方か? と思ったけど違うか……ご高齢の鍛冶屋を開いてた変わり者って、あの人じゃない? 俺も名前忘れちゃったけど、親方に紹介されていった所の人? 確か、剣でドラゴンを殺すな、弓で殺せ、みたいに怒られたんだっけ? まぁ、それで言うと魔法は相当アウトだし、そういう活動しててもおかしくないのか。てか、大丈夫か? この国。


「だからなぁ、ちゃんと説明すれば、受け入れてくれる人も多いと思うんだよなぁ?」

「あの、すみません、こんな大変な事に巻き込んじゃって」

「んん? そんな事ないよぉ。だってやらないとダメな事だしなぁ、むしろ感謝してるよ」

「本当ですか?」

「本当だ。はははぁ」


 どこまでが本心なのか掴み辛いハリォードさんは、そう言ってくれた。この人ってめちゃくちゃ良い人なのでは? 今まで会った人の中では間違いなく一番だ。もちろん実際のところはよく分かりはしないけど、今んとこ欠点らしい欠点は一つも見つからないような……


「その時は手伝ってなぁ、それじゃあ、久しぶりに会ったから呼んじゃったよ」

「いえいえ、いつでも呼んで頂ければお手伝いしますよ?」

「そぉ? ならよろしくねー」


 そんな感じで、お城から出ていく。お城の関係者に危険な事が起こってるって中で、ハリォードさんを結果的にここで働かせる事になっちゃったのは、少し申し訳ない。

 俺も手伝わないといけないんだろうけど、忙しいと思われてるせいか、誘われることもなく自由に割と暇な時間を過ごしてしまっている。特に最近はそうで、イーリカの問題が解決した事もあってか、今から新しく何かに取り込もうという気持ちが全く湧かない。

 あぁ、空っぽだぁ。まぁ、あとちょっとだけこんな感じで生きていこう、どうせ問題なんてまた起こるんだし。


 今の状況のままではいけないかもしれないけど、こんな生活をしている自分に対しては割と満足していた。このままの生活だったとしても、それはそれで……はぁ……カエデさんとの結婚は考えとかないとなぁ。

 どういうシチュエーションでプロポーズすればいいのか全く分からなかったし、正直、出来る事ならそんな事はしたくなかった。本当の話をすると、カエデさんから言ってきてくれないかなぁ、とか思ってた。


 そうは成らなそうなので、何か考えとかないと……はぁ……鬱だ。

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