表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/35

某日にて作戦決行


「それぞれ配置には付いたか? 」


 最上の渋い声が無線機から流れる。


「こちら狙撃班、所定の位置にて待機中、どうぞ」


 四条は朝から相模の狙撃の準備に付き合ってたからなのか、あくびをしながら答える。


「四条ごめんね、朝から付き合わせて」


「別に仕事だし、その辺は気にしなくていいわよ」

 

 日が沈む瞬間を見ながら遠目で言う。


「ところで何食べてるの? 」


 相模は四条が口の動きの訳を聞く。


「アンパンよ、それと牛乳」


 携帯用の椅子の下から取り出したのはアンパンのかけらと、牛乳パック。


「それ張り込みしてる刑事意識してる? 」


 細目で四条を見て、尋ねる。


「べ、別にそう言うのじゃないから、普通にアンパンと牛乳の相性がいいだけよ」


 少し恥ずかしそうな表情を浮かべる少女は、アンパン頬張り詰まらせながらも一気に食す。

 それ以上言及しなかった相模はスコープの調整を始めていた。


「そういえば、あんたってなんでそんなに狙撃能力が高いの? 」


 すっかり辺りは暗くなり、街灯とビルの明かりで灯されていた。


「才能……かな、別に欲しくはなかったけどね」


「あんた謙遜もなく、よく言えるわね」


 飲み残していた牛乳を音を立てながら飲み干す。


「でもその代償を背負ってる 」


 その言葉に四条は少し言葉を詰まらせていた。


「じゃなんでこの仕事してるの? 」


 深刻そうな表情を浮かべ、顔を覗き込むように尋ねる。


「四条……仕事始める時の掟忘れたの? 」


 彼は乾いた唇を舐めた。


「互いの過去の不干渉だっけ? ……別に教えてくれてもいいじゃない」


 最後の方は話すと言うより独り言に近いものであった。


「じゃ逆に四条はなんでこの仕事始めたの? 」


「簡単よ、最上さんの恩返しよ」

 

 双眼鏡でターゲットと見られる姿を視認する。


「じゃ俺もそんな感じ」


 四条はほくそ笑んで、無線機を手を取った。


「ターゲットを確認できました、時間通りの到着のようです」


 腕時計を見て四条が報告する。


「随分と豪華な船ね」


 フェリーとまではいかない大きさだが、デッキにはプールの設備があり高級であるのは間違いない。


「今回は大丈夫そう? 」


 心配そうに四条はスコープを覗くスナイパーに声をかける。


「今は大丈夫そう……とりあえず気持ちを落ちつかせる」


 少しばかり呼吸の乱れがあるが、四条は何かするわけでもなく、椅子に横にあった黒いスーツケースから拳銃を取り出していた。

 ずっしりとした銀色のデザートイーグルは彼女の相棒であった。

 マガジンの装填と安全装置を外し準備を完了させる。


 夜風が相模の頬を触る。


「この時間が……また来たか」


 深呼吸する音が微かに聞こえる。


「ターゲット捕捉」


 彼は右目でレンズを通し、船から降りるギルを発見し、無線機に報告を入れた。

 相模はターゲットに向けて、レテイクルを合わせる。


「風は木の動きから……北西方向」


 スコープのつまみを捻る。


「風速とかも全部マニュアルで計算するとか化け物のね」


 四条は拳銃を布で拭きながら声をかけるが、相模の耳には届いていないようだった。


「狙撃許可を……」


 相模は無線機越しに命令を待つ。


「狙撃許可を降ろす」


 最上の乾いた声が雑音混じりに聞こえた。


 相模は引き金に手を当てた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ