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国見つけたから立ち寄っただけの話

久しぶりすぎですね…汗

次話投稿の見通しつかないですが先に…。












「なかなか大きい所に着いたわね。」

「ええ、此処は『アスレイ王国』で、私たちの国の約三倍の国土に倍以上の経済効果を発揮しているそうですよ。」

「あら、勉強熱心ねセレン。」

「…このくらいは知っているものです…、はあ。」



ドドン、と聳え立つ大きな城を見上げて二人は呑気にそうこぼしていた。

アシェル一行は何度か小さな町を行き来して約半年、時々食料到達のために近くの街に寄って宿に泊まって、を繰り返して次に二人が着いた場所は大国『アスレイ王国』だった。生まれ育った国より遥かに栄えている大国に寄ったのは、勿論アシェルの思いつきだった。


「そうだわ、セレン。どこかの王都に行きましょう。服を買いたいわ。」

「さっき王国一つ越えましたけど!?その時は寄らなくていいとおっしゃったじゃないですか!」

「今行きたくなったのよ。それにほら、金貨は十分あるし。」

「そりゃあお嬢様が旦那様からぶん取って来たからじゃ…、イタイイタイごめんなさい!」


そんなこんなありセレンが急いで近くの国を探せば、あらビックリ。大変大きな国を見つけました、みたいな感じである。

二人は数秒その大きな城を見上げたあと何事もなかったかのようにスタスタと背後にあった賑やかな街へと歩いて行った。


まずは宿探し。二人は、いやセレンは露店の店主に聞き込みを行い宿をいくつか教えてもらった。それを回りつつ二人は、主にセレンが吟味して一つの宿にたどり着いた。王都内でも一番値段は高いが設備もサービスもしっかりしているのが決め手だ。そもそもだが、アシェルは侯爵令嬢なのだ。彼女は自覚がないようだが生活や言動がもう貴族としての習慣が根付いてしまっている彼女にはそこらへんにある宿では不十分であるのだ。


取り敢えず荷物だけ置こうとセレンが部屋に運んでいる間、アシェルは旅館のロビーで優雅に出された紅茶を飲んでいた。その光景はどう見ても深窓の令嬢といってもいいのだが、いかんせん読んでいるものが小説ではなくこの国のガイドブックなるものだったし、加えて凄まじいスピードで読んでいるため見た目詐欺を起こしている。アシェルの要らない特技、速読のお披露目である、いらん。


「お待たせ致しました…ってお嬢様それいつ買ったんですか。」

「女将に貰ったのよ、買ってない。」

「お嬢さん他に必要なもんはあるかい?何でも用意するよ!」

「いえ、この本もペンも頂いたのにそんなにはいただけませんよ。あ、そうだわ。今晩の夕食はこの国の昔ながらのものを食べたいです。」

「お安い御用だわ!」


「この人誑し…。」

「なに」

「イエナニモ。」


いってらっしゃい!とそれはもう素晴らしい笑みで女将や従業員の人たちに見送られつつ二人は宿を後にした。その際呑気にアシェルは手を振っていたが、こんな光景は旅に出て何度も見ているからかセレンは大きな溜息を一つ零しただけで突っ込みたい気持ちを心の中に仕舞い込んだ。


「溜息つくと幸せが爆発するわよ。」

「逃げませn…って爆発!?爆発するんですか!?」

「最近ツッコミスキル上がってきてるようで嬉しいわよ、セレン。」

「入りませんよそんなスキル!そもそも貴方がボケまくるから…!」




「まずは何か食べたいわ。」

「ええ、探しましょう。」

「あ、あれ大衆食堂っぽくて素敵よね、彼処にしましょう。」

「見つけるの早くないですか?それにご令嬢なんですよねちゃんと?え、僕の勘違いですか?」


「何言ってるの、私が貴族じゃなかったらそもそもあんたが従者してないでしょう。」

「…(もう何も言うまい。)」



いつも通りな二人はいつも通りな漫才をしつつも食事処へと進む足は止まる気配もみせないため、なんだかんだ言いつつもこの漫才は二人のコミュニケーションになっているのだろう。カランコロンと耳に優しく入ってくる鐘の音と共に二人が入れば中は人が一杯で賑わっていた。すると従業員だろう若い女性に誘導されつつ二人はカウンター席に座った。そこからはキッチンで忙しく動き回る料理人たちの姿が見えた。この世界では男女共に料理人として雇用されているようだった。私が行きていたあの世界では基本的に料理人とは殆ど男性が中心だったため、そこに目が行くのは仕方がないのだろう。しかしキッチン内でk合わされる言葉の応酬は女性も勿論男性も、両方とも言葉遣いが決して良いとは言えなかった。そこはやはり男性が主軸になっているからだろうか。


そしてまたしてもここでセレンにとって頭の痛いことが起こった。


「お嬢ちゃん食べっぷりいいねえ!」

「ほら、これも食べろ!」

「ありがとう、とても美味しいわ。」

「いいねいいねえ!ほらたんとお食べ!金はいらないよ!」

「あら、本当?こんなに美味しいもの食べてタダなんて私は幸せ者ね。」


「またか…、またかこの人誑し…!!」


カウンターに座ったが運の尽き。一人、また一人とアシェルの周りに人が集まったと思えば今はもう端の方の席で食べていた筈の客までもがアシェルのそばに来てこれは俺の奢りだあ!とか言っている。なんてこった。アシェルは隣で頭を抱えたセレンに見向きもせず、休みなく前に置かれて行く料理を平らげている。アシェルのいらない特技第二弾、ブラックホールの胃である。ご令嬢であるため作法は完璧で大衆食堂なのにどこか高級フレンチにいるような振る舞いをみせる明日エルだが、いま平らげた料理は手羽先(巨大)である。なんてこった(二回目)。

そしていよいよ終盤かという頃のアシェルが甘いもの食べたいの一言で並んだデザートたちを機に即席大食い大会参加者一名が終了した。アシェルの圧勝である。なんてこった(三回目)。




「ふう、いっぱい食べたわね。大満足よ、私。」

「ソウデスカソレハヨカッタ(そんなこんなで食費はまだ一回も払ってませんよね!)」


お腹いっぱいだわ、とあんなに食べたのに膨らむ気配も見せないアシェルの腹部に二の句が告げることが出来ない。旅に出て約半年、アシェル一行はアシェルのみの食事代を出さずにここまで来ているためまだまだ金貨はそこが見えなかった。まあそもそもアシェル自身一杯食べなくとも満足するたちなため、自身で払う時はちゃんと一般量を食べるのだ。ただ、無料で食べれるんだったら沢山食べたほうがいいとの謎の持論で食べているだけだ。そのことにも気づいているセレンはもう自分の主人の省エネに尊敬すらしそうである。こうなりたいとは全く思わないが。


そして今度こそ、この国に寄った最大にして一つの目的である衣装探しに出た。王都の中でも比較的穏やかで周りの人間がおしゃれな服を着ている所へとフラフラ進んで行くアシェルとそれについていくセレンの光景は、二人の関係性を知らない者から見れば飼い主と忠犬のようである。主人と従者という関係に似ている所を良かったと思う所か、セレンがもはや人間ではない所に悲しむべくか悩むところである。

五軒くらい回った時にはもうセレンの顔が見えないほど積まれた袋たちに一度宿に預けて再び街に繰り出した。そのことに疑問ももたない所を見るにやはり侯爵令嬢としての感覚が抜けてないのだろう。



本日八軒めを出た頃にはさっき程ではないがセレンの腕に積まれた荷物にもうそろそろ宿に戻ることになった。辺りもだんだん暗くなり始め、今は赤い光が王都全土に放たれている。


「綺麗な街ねえ。」

「そうですね、外壁が白である所も一因でしょう。」


ほのぼのと会話していた二人の耳にある悲鳴が届き、とっさに二人は視線を声のした方へと移動させた。そこには、


「おい、あんたいい所の旦那だろー?俺ら金に困ってっからちょっと貸してくれねー?」

「いやいや、これ明らかにカツアg」

「ああ!?」

「ヒッ!」


「…セレンみた?」

「…ええ、間違いなくあれは堂々としたカツアゲですね。」

「さてと、早く宿に帰りましょう。」

「そうですね、こんなに荷物ありますし。」


「ちょ、ちょっと!!!見てたら助けようよ!?」


「ちょっとした冗談じゃない。はあ、しょうがないわね、…ちょっとそこのカツアゲしてる頭の中空っぽで将来ハゲそうな馬鹿な奴!」

「わあ、一言でこんなに暴言って纏めれるんですねー。」

「な、なんだよ!お子ちゃまは黙ってろ!!」


「お子ちゃまだってセレン。貴方今年でいくつよ。」

「あれは完全に貴女に向かってましたが?」


「はあ、まあここで見ぬフリは目覚めが悪いし…。セレン!早く終わらせなさい!」

「はいはい。」


さも興味ないというように腕を組みセレンに指示したアシェルは印のいっぱい付いたガイドブックを読んでいる。そしてセレンは面倒そうなのを隠しもしない顔でスタスタと騒動の根元に近づいたと思った次の瞬間。


「、ぐっ!?」

「っが、!?」


一瞬にして不良たちを地に沈めていた。呆気ない。カツアゲされていた本人も一瞬で好機に変わったこの状況についていけないのかぽかんとした顔で呆けている。


「お嬢様終わりましたよ。」

「そう、お腹すいたから早く戻るわよ。」

「はい」


さっきの現場を振り返る事なく、何事もなかったかの様に立ち去っていく二人に気づいたカツアゲされていた男は慌てて彼らの後を追う。


「ま、待ってくれ!」

「なに、なんか用でもあるの?」

「た、助けてくれたお礼をさせてくれ!」

「いいわよ、大した事してないし。」

「あ、丁度いいね!この店取っても美味しいんだよ、ローストビーフとか!」

「しょうがないわ、ご馳走してもらいましょう。」


「…お嬢様…はあ、」













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