ヘサームの受難2
ひっそりと新キャラが(笑)
「ねぇ…つまらなくて死にそうなんだけど」
ヘサームにだらしなくしなだれかかるリュエルがそう言った。
叩いて催促し、座ったヘサームの背中を押したり引いたり散々ちょっかいを出した挙げ句、構い疲れたらしくヘサームを枕にし始めた。
王女の横暴に無言で耐え(ているように見え)るヘイダルの第二王子の株は急上昇し、護衛の近衛兵の中で密かに王子を応援する声が聞かれたのは極秘事項だ。
と、裏庭に騎士が駈けてきた。えらく緊張した面持ちにヘサームも警戒する。
「城内において不審な人物を捕らえたとのこと、至急中へお連れしろ」
騎士が近衛兵にそう告げたのが聞こえた。
ライオンの耳はとても快適だ。普段聞こえないような距離でも耳に入ってくる。
腰を上げると、リュエルと此方に歩いてきていた近衛騎士は目を丸くした。
「わぁ!やっとその気になってくれたの!?」
(違う)
渋い顔をするヘサームとは違い、騎士はとても爽やかな笑顔を浮かべる。
何となく想像はついた。
王女を部屋に連れ戻すのがとても大変なのだ。
そしてヘサームにくっついて離れない様を見て手間が省ける!と喜んでいるのだろう。
だとしたら、彼は迂闊過ぎる。
このじゃじゃ馬の相手をする上で油断は大変なものを引き寄せる。
「リュエルさま、不審な人物を捕らえたと連絡がありました。お部屋へ戻りましょう。」
「わかった。もさもさ、あの入り口を入って右に曲がって。」
「リュエルさま、そろそろ降りませんと」
騎士の言葉は完全に無視され騎士は眉を下げたが、彼女にしてはおとなしかったからだろう。何も言わずに引き下がった。機嫌を損ねないのが得策と考えたのだろうが、ヘサームは一応国賓なのだ。そこのところは大丈夫なのだろうか。
リュエルの言葉に従って中をテクテクと歩いて行くと二人の屈強な騎士の護る大きな扉が見えてきた。いつの間にか後ろにいた騎士はいなくなっている。
「ここ入って」
リュエルが指差した。
流石はガヴィネルの王族、第二王女に与えられる部屋にしてはかなり立派な扉に驚いているとまた催促された。ペシペシと手で叩かれたところが地味に痛みを訴えるのが怖い。
(わーかったって!)
憤慨するヘサームにリュエルが「何ぷりぷりしてるのよ」と言うせいで妙に力が抜けてしまって上手く怒れない。
(ぷりぷりって何だよ)
アルヴィア語にはない表現のため、もしかしたら今自分は人から見たら何か滑稽なことになっているのではないかと不安に駆られる。
むつかしい顔で考えていたところ、目の前で大きな扉が音もなく開いた。
「お兄様っ!」
中ではベッドで身を起こして此方を見るキルヴィと、
《ほう、これは異なこと。御上の遣いと言われる聖獣が人の子を乗せてるネ》
凄まじい威厳を纏う“何か”が両手足を組んでヘサームを見下ろしていた。




