トルティの説明
今回少し文の調子を変えてみました。
殿下が気を失われてからのことをお話しします。
殿下の仰る通り、あの場にはライオンがいました。それがですね、驚かないでください。アーデル・ヘイダルのヘサーム第二王子殿下だったのです。私たちの目の前で人間の姿に戻られて、殿下の御身を抱いておられました。
確かに彼の国は”高潔なる獅子”という意味を持つアルヴィア語を頂いていますが、実際に獣の姿を持っていたのは古の民だそうで、所謂先祖がえりのようです。それも、ヘイダルに伝わる民話によればライオンの姿をとれる者を”守護獣”と言い、神に仕える尊い存在と崇められていたそうです。え?あぁ、それはヘサーム殿下の母君、シェヘラザード陛下に伺ったのです。
殿下は幼い頃、今と同じく言葉を発せられなくなったことがおありらしく、ただそれは今の今まで忘れていたくらい一瞬のことだったそうで、何が引き金となって変化したのかは陛下にもわからないと。
それから襲撃してきた集団ですが、ヘイダルの隣国”獅子の眼”ヘイダル・アインの刺客ではないかということでした。昔は一つの国でありましたが、シェヘラザード女王に反発した勢力が分裂し、今は自治区という扱いになっています。宝石の利権でも争っていますね。そのアインが独自に持つ”隼”という異能集団があるらしく、空中を自在に飛び回るそうです。はい、その通りです。殿下がご覧になった白鯨は彼らの使う魔術の類かと思われます。陛下が思われた根拠としては、顔を覆っていた黒いヴェールが挙げられます。”隼”の者たちは皆一様にあれを身に着け決して人に顔をさらさないそうで、姿を見せることもそうそうないそうです。
はい?目的ですか?はい、そうでしょうね。殿下のお命を狙ったのでしょう。全く…アル、わかったから落ち着いて。…わかったよ、交代しよう。




