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結論から言うと滅茶苦茶怒られました。
門の前に仁王立ちしていたカリンと珍しく眉間に皺を寄せて腕組みをしたシャルさんを見て、オレは片手を上げて挨拶しようとして・・・
あかん、これあかんやつや。
ダッシュで二人の前でジャンピング土下座しました。
「すいませんっしたぁぁ!」
門番がポカンとした顔をしているのを視界の端に捉えつつも、頭は上げない。
無言を貫く二人に冷や汗がタラリ。
「・・・ユウ?随分遅かった、ね?」
シャルさんの語尾が伸びてない!怖い!
「ユウは約束を破る子なの?そうなの?いけない子はお仕置きしないといけないんだよ?」
カリンが饒舌になってる!!怖い!!
「これには事情がありまして、え~・・・言い訳しても?」
「「却下」」
その日、夕暮れの街に悲しげな悲鳴があがったという。
折檻というのも生ぬるい地獄を見たあと、顔中ボッコボコに腫れたまま事情を説明することになった。
心配かけた償いにオレの奢りでいつもの酒場に入っていつもの!と手短に注文を済ませると、最初から話していった。
リザードマンみたいなのと戦ったら竜人族だったこと。
埋めてたら姫さんに感心されて依頼を受けたこと。
内容が分からないまま付いていったら、悪竜退治だったこと。
犠牲者を出しながら何とか倒したこと等・・・。
流石に竜を倒してきたと言ったところで、二人は目を見開いて驚いていた。
「よく・・・無事だったねぇ~」
「ん、無謀」
二人が溜息をついた。
すいません。
「というわけなんだ。一応、依頼の大毒蛙も狩ってはこれたんだけどあっちは洞窟の中だから昼なんだか夜なんだか分からなくてな・・・」
「それで気がついたら1週間経ってたってことかぁ~。う~ん、ユウじゃなかったら信じられない話しだよ~」
「一週間も経ってたとは思わなかった・・・本当に心配かけてすまん!」
「本当に反省してよね~!こっちは神殿で神様に生死の確認したりしたんだから~!生きてるっていうのは教えてくれたからそっちの心配はしていなかったけどねぇ~」
なるほど・・・神様に安否確認をしたのか。
「二人は?何か変わったことはなかったか?」
二人は顔を見合わせた。
これは何かあった、か?
「ん~、カリンのお兄さん?がユウを探しまわってるみたいだよ~?何か無礼がどうとか」
「ん、アンドレアの方」
二人の話を聞くにどうやら馬鹿兄貴のアンドレアが配下の騎士を動かしてオレを探させているらしい。
ギルドに怒鳴りこんだり、居ないとなると入り口を見張っていたり、宿を見張ったりさせているらしい。
「はぁ・・・アンドレアは何がしたいんだ?オレは別に手は出してないぞ?」
「ん。口は出したけど」
カリンと二人で笑っていると、シャルさんにチョップをいただいた。
「まぁ冗談はともかく。それだけ監視されてるならオレが戻ったことも伝わってると考えた方が良さそうだな。とするとこの店に来るかもしれないな」
二人の眉間に皺が寄った。
まさかそこまで・・・?という疑惑と、あいつならやりかねないという考えと。
「・・・どうやらユウが正解らしいよ~?すっかり囲まれているみたい~」
「はぁ・・・せっかく旨い酒飲んでたのに・・・これはちょっとお仕置きが必要ダヨネ」
「ん。制裁制裁」
「あっはっは。ボクもこれはやり過ぎだと思うなぁ~」
ゆらりと立ち上がる三人。
女将さんに事情を話して、食べてる途中で店を出る無作法を詫びてから店を出たところで重装備の騎士達に一斉に取り囲まれた。
「動くなッ!お前がユウだな?大人しく我々に同行してもらおうか」
「はぁ。へいへい分かりましたよ~」
どうやら用があるのはオレだけではないらしい。
カリンとシャルさんも開放される様子が無い。
とすると?
「ねぇねぇ騎士さん。オレだけじゃないの?」
「仲間も連れてこいと言われてるッ!無駄口を叩かずにさっさと歩け!」
ふ~ん・・・?
囲みを突破するのは難しくない、がここらでこの問題も解決してしまいたい。
もう少しこの街で依頼を受けてBランクにはなりたいしな。
大人しく付いていって、面倒そうなら・・・潰しましょうかね。
物騒な事を内心で考えながら、声には出さずに嗤った。
連れてこられた場所は城塞内の練兵施設だった。
カリンは杖を、シャルさんは腰に下げていたダガーを没収されている。
オレは武器を持っていなかったので見逃された。
まぁポーチ位しか装備してないようにしか見えないだろうし。
縛られたまま背中を強く押されて前に出ると、目の前にはニヤニヤと笑うアンドレアが配下達と共に立っていた。
「探したぞ、小僧。チョロチョロと逃げまわっていたようだが残念だったな!」
「逃げる?何言ってんだこいつ?」
「ん、脳筋」
「二人共余裕だねぇ~」
三人であっはっはと笑っていると、顔を真っ赤にしたアンドレアが蹴りを入れてきた。
腹に力を入れて耐える・・・・あれ?痛くねぇな。
「このガキがぁぁ!」
平気そうな顔をしていたのが気に入らなかったのか、大盾で思い切り殴られた。
流石に痛いが、痛そうな顔をして喜ばせるのは嫌なので平気そうな顔を続ける。
さて、いつ反撃するか。
チラリと二人を見ると、いつでも良いと頷いた。
熟練シーフのシャルさんは縄抜けが出来るし、カリンは杖が無くてもある程度魔法が使える。
オレは多分力づくで縄切れそうだ。
さっきから少しづつ力を入れて縄をゆるめている。
そういえば両手を使わなくても足は縛られていないから蹴撃でいけるな。
これも修行、かな?
アンドレアはまだ何か言っていたが、構わずに反撃しようとして次の言葉でピタリと止まった。
「穢れた血の女といい、そっちのチビは味方殺しだと?碌でなし共しか仲間に出来ない分際で・・・」
「今なんつった?」
知らず目の前のアンドレアを見つめていた。
普通に見つめているつもりなのに、アンドレアはなぜか冷や汗を流して後退る。
「おい。今なんて言ったんだ?オレの仲間がなんだって?」
ブチッという音を立てて手首を縛っていた縄が下に落ちる。
後ろでシャルさんがドウドウ!気にしてないよ!とか言ってくるが、無視する。
「ちょっと教育してやろう。かかっておいで。どうした?無手の相手にビビってんのかい?無抵抗の相手にしか威張れないのか?ほら?おいでヒヨコちゃん共!」
挑発しても一向に向かってこないどころか、包囲が広がって距離が空いていく。
一歩ずつゆっくりとアンドレアに近づいていくと、流石に逃げるのは恥ずかしいのか多勢でいることを思い出したのか周囲に指示を飛ばし始めた。
やろうと思えば指示に騎士達が動き出す前にアンドレアを仕留める事は出来たが、あえて待つ。
ゆっくりと辺りを見回すと、視線が合った騎士は身を固くして盾を全面に出した。
おいおい、まだ攻撃してないのに防御体勢とは・・・。
「怯むな!こちらの方が人数は多いんだ!武器も持ってないガキ共に何が出来る!囲め囲め!」
もう既に囲んでいると思う。
「やれ!やるんだ!!」
お前がやれ。
溜息一つ。
指示に従っているだけの騎士達には可哀想だが、1人も逃す気はない。
手を出せば痛い目に合うという事を体に刻みつけて、二度とおかしな気を起こさないようにしないといけない。
圧倒的に、動けなくする程度に、だな。
なんとなく格好良さそうだからと決めておいたハンドサインで殺さず、無力化と伝えると二人がニヤリと人の悪い笑みを浮かべた。
きっとオレも似たような表情になっている。
貴族?上等だぜ!!
一斉に動き出す。
シャルさんが独特な動き出しで騎士達の視界から消える。
カリンは無詠唱で短距離転移、騎士達の後ろへ。
オレはトントンと軽くステップした後で、アンドレアの方へ走る。
訓練された動きで盾を叩きつけるように突き出す騎士達の動きは流石だが、甘い!
彼らを飛び越すように飛んで、足で頭部を薙ぎ払っていく。
気を纏って威力を上げることも出来るが、そこまでしてしまうと多分死ぬ。
足の届く範囲に居た4人の騎士が側頭部を強打して意識を刈り取られて崩れ落ちた。
驚愕に動きが止まる左右の騎士達を蹴撃だけでいなす。
鎧の部分には気を纏って、チェインメイルの部分には普通の打撃でダメージを与えていく。
斬撃に強いチェインメイルだが、刺突や打撃にはあまり効果はない。
丁寧に一人ずつ昏倒させていく。
シャルさんが素早い動きで死角を縫うように通りぬけざまに奪われた武器を取替えしていく。
カリンはサブウェポン用に調整した指輪でいつもと殆ど変わらない威力で魔法を放っている。
1人、また1人と倒れていく騎士達に劣勢を感じたのか応援を呼びに行かせようとするアンドレアだが、させないよ?
走りだそうとした騎士の膝裏を蹴って転ばせた後、足首を取って撚る。
悲鳴と共に足首を折った感触、ポイっと足を捨ててアンドレアに振り返る。
気がつけば立っているのはアンドレアだけであった。
「ば、ばかな・・・20人は居たのだぞ!?それが・・・こんな」
「城の中でふんぞり返る前に修行が足りないな。街を守っているのは何もあんた達だけじゃねぇ。オレたち冒険者だって守ってんだ。最近だってオークキング討伐とかしたしな」
「ぐく・・・お、俺に手を出したらただじゃ済まんぞ!?貴族たる俺に・・・」
「なんだそりゃ」
ここまでされる覚えもないと抵抗すれば、貴族の権威を傘に着てくる。
なんなんだろう?貴族って奴はこういうのばっかりなんだろうか。
物語じゃ良い貴族もいたんだけどなぁ、現実はこういうもんなのかねぇ。
「そこまでにしてもらおうか」
低い声に振り返る。
味方が来たと喜びの表情になったアンドレアは、次の瞬間顔をひきつらせた。
「ち、父上・・・」
「父上?・・・ということは」
カリンを見ると硬い表情で頷いた。
シャルさんは目を細めて状況を見つめている。
シュバルツ辺境伯はゆっくりと練兵場を見渡して倒れた騎士達を見つめ、そして俺を見て目を細めた。
練兵場は夜間でも訓練が出来るよう魔道具による照明設備がついている。
その光が俺の手首にある縄の跡をくっきりと浮かび上がらせていた。
「私刑か・・・くだらんマネをする」
吐き捨てるように言うとゆっくりとこちらに向かって歩いてくる伯爵。
アンドレアは案山子のように突っ立ったまま呆然としている。
ふむ?アンドレアの様子を見るに、伯爵はこの手の陰険なタイプじゃないってことか?
そういやおっさんも悪い人じゃないとか言ってたが・・・。
騎士達のうめき声だけが響く練兵場、息子の前に立った伯爵はゆっくりと片手を上げた。
アンドレアが何事か言おうと口を開くが、
「ち、父上!これはちが・・・グァ!!!」
軽く5mは吹き飛んだ重装備のアンドレアが顔を押さえて悶絶する。
よく見るとヘルムが歪んでいる・・・ありゃ痛そうだ。
しかし・・・素手で打ち下ろしてそれか。
流石は辺境を任される伯爵ということか。
ゆっくりとこちらを振り返る辺境伯。
まぁ、オレも用があったから丁度良いな。
先に口を開いたのは、シュバイツ辺境伯だった。
悪党というのはなかなか書くのが難しいものですね。
読者が嫌悪感を覚える悪党を目指したつもりがなんだか可哀想な子みたいになってしまいました・・・。




