#8 シャッター
『女がセクハラって言えば何だってセクハラ
セクハラのレッテルを貼られたら男の人生は
終わる。だから恋愛離れになる。
こんな状況で少子化が直ると思うかい?
日本政府はこの現実に一向に向き合わない。
仕事サボってるのと同じだな。
#俺Too #セクハラ 』
『男女平等の時代ってテレビも新聞も
散々言ってるのに、なんでマチアプとか
街コンは未だに男の方が値段が高いんだ?
え?文句あるなら行くなって?
わかりました行きません。
#俺Too #男女差別 』
『なんで若者が恋愛離れになってるか
誰もテレビもネットニュースも言わないから
俺がハッキリ言ってやるよ。
面倒?趣味の充実?傷つくのが怖い?
忙しい?デートのお金が無い?
全部違います。答えは簡単。
何言ってもセクハラ、何やってもストーカー
何してあげてもそれが当たり前状態
社会進出して強くなったのに
告ったりプロポーズの責任は男に押し付ける
そんな女が嫌いなんだよ。
どうだ?俺の事嫌いになったろ?
ありがとう。もっと嫌ってくれ
#俺Too #恋愛離れ 』
俺は、あおった。SNSで皆の気持ちを少しずつ
焚きつけて、大きな炎を起こす種火を燃やす。
そんな事を繰り返した。
男が虐げられてるこの社会で皆の心の中で
モヤモヤしてる怒りや不満、納得いかない、
不公平だ、そんな感情を気付かせるような、
その感情を思い出させるような、
目を逸らさずに直視させるような、
そんな投稿を繰り返した。
そんな事を続けてたらフォロワーも増えて、
返信というか反応も増えて来た。
機が熟したと判断した俺は
初めてSNSの投稿のパターンを変えてみたんだ。
『男性差別の面で皆がムカついてる事は何だい?
マチアプ?セクハラ?婚活?
それとも女ばかりヨイショするメディア?
何でもいい。返信とかDMで教えてくれよ
#俺Too #男性差別 』
俺は初めて問いかけたんだ。
自分の愚痴をぶちまけて終わりじゃなく、
フォロワー達の不満や意見を集めた。
それはまるで皆から材料を少しずつ集め、
それを組み合わせて新しい何かを作る様な、
そんな気分だった。
SNSで愚痴るだけじゃなく、そこから何かを
生み出せる。そう思えた瞬間だった。
何の救いも答えも無いと兄が言ってた#俺Tooを
俺は意味を生み出せる物に変えようとした。
皆から予想より多くの返信やらDMやらが来た。
皆の意見を集めると、男女で料金が違う
マチアプとか街コンとかにムカついてるって
意見が多かったんだ。
俺は男女で料金が違って、かつ、
俺達が結果を出せそうな目標を考えた。
そして投稿したんだ。
『みんな、同席居酒屋の代表格、
【同席屋】を潰してやろう!
今は東京に3店舗残ってる。同席居酒屋なんて
行くなってSNSで拡散しまくってくれ。
男が行かなければあんな店すぐ潰れる。
不買運動みたいなもんだ。
もうSNSに愚痴るだけじゃない。
現実にアクションを起こして行こう
#俺Too #同席屋 』
同席屋って知ってるかな?
男女が気軽に出会える居酒屋で、
男性は有料で女性は無料なんだ。
男女の不公平の典型例で、実際そのシステムへの
不満からか、全盛期からは店舗が減って
東京に残ってる店は3件だけだって
ネットで調べたらわかったんだ。
フォロワーの皆と協力してネガキャンして
結果を出すには的確な目標と思ったんだ。
俺は次の日SNSで、#俺Tooで検索してみた。
そしたらみんな協力してくれてたんだ。
『いまだに同席屋とか行ってる原始人
マジでいるんか?マジで顔見てみたいわw
#俺Too #同席屋 』
『男女で料金が違う不公平な店は多いけど
その中でも特に悪質なのはやっぱ同席屋だな。
あんな店言ってる奴には、
金づるにされてるって気付けよと言ってやりたい
#俺Too #同席屋 』
『同席屋だけはやめとけ
男は出会いの為なら
ホイホイ金払うと思ってる奴らを
調子に乗らせるだけだぞ。
もう男は不公平なシステムには参加しないって
世界に分からせないと駄目だ
#俺Too #不公平 』
こんな感じ。他にもみんな沢山の人達が
#俺Tooを載せて投稿してくれてたんだ。
これはもう立派なムーブメントだと思ったよ。
もう愚痴ってるだけじゃない、俺達は
#俺Tooで繋がって、自分達の不満や怒りの対象を
壊す為に行動を起こしてる。
#俺Tooで何かを変え始めた瞬間だったんだ。
数日後、テレビのニュースを見てると、
あるニュースが流れたんだ。
〈キャスター〉
「かつての出会いの場を象徴する場所が、
その役目を終えました。
本日、東京渋谷にある最後の店舗が営業を終了し
一大ブームにもなった同席屋が都内から
姿を消しました。
最盛期には都内各所に看板を揚げ、
男女の新しい出会いの場を提案した同席屋。
近年はマッチングアプリの普及や
若者の恋愛離れによるライフスタイルの変化の
波に押され、本日、最後の一灯が消えました…」
俺は自分の目を疑った。目の前のニュースが
信じられなかった。心臓が高鳴ってるのを
自覚しながらネットニュースを調べてみたら
確かに同様のニュースが載っていたんだ。
俺は部屋を飛び出し電車で同席屋渋谷店へ
急いだ。駅を降りてから夢中で走った。
その心臓の鼓動は走って心拍数が上がったのか
それとも胸の高鳴りだったのか
自分でも分からない。俺は夢中で走った。
同席屋渋谷店は確かに閉店して、
シャッターが閉まっていた。
俺は証拠を手に入れる為に
シャッターが閉じた店をスマホで撮影した。
その瞬間、俺の中で押さえきれない感情が
込み上げて来た。それを何かに当てはめるなら、
「勝利」それが的確だったと思う。
モテない負け組男の集まりだった#俺Tooが、
初めて自分達の不満や怒りの対象に
ダメージを与えた、倒した瞬間だったんだ。
俺は気持ちを抑えきれずに、
撮影したシャッターの画像を載せて
その場でSNSに投稿した。
『みんなニュースは見たか?最後の同席屋が
潰れたってよ。俺達の勝利だ。
皆で力を合わせて手に入れた勝利だ。
みんな有難う おめでとう お疲れ様
#俺Too 』
俺は、いや、俺達は変えたんだ。
現実を、世界を、明日を。
俺達が日常に歪みを与えた。爪跡を刻んだ。
#俺Tooが意味を持った。
それが俺は嬉しかったんだ。とても。
そして俺はこの流れや勢いを
止めてはいけない、活かさないといけないと
思った。それでその夜SNSに投稿したんだ。
『同席屋の閉店は始まりに過ぎない。
俺達の復讐は、これからが本番だ
#俺Too 』
つづきも読んでくれたらうれしいな




