#7 後悔
ある日兄から電話が来たんだ。
俺と兄は仲が良くて、でもお互い社会人になって
忙しいし、大人になったら用もないのに
電話する事も無くなるだろ?だから
ケンカしてるわけじゃないけど
兄とは長い間連絡取ってなかった。
そんな兄から突然電話が来たんだ。
〈俺〉
「もしもし?お兄?久しぶりじゃん」
〈兄〉
「おう、お前か?元気にしてるか?」
〈俺〉
「まあ、なんとかね。それよりどうしたの?
何か理由があるから電話してきたんじゃない?」
〈兄〉
「ああ、実は俺なあ、結婚するんだ」
兄が結婚する それを聞いた瞬間、
一気に現実とか社会の固定概念を
突き付けられるような気がして、
心がゾワってなったのを良く覚えてるよ。
〈俺〉
「そ、そうなんだ!良かったじゃん!
おめでとう。結婚式もちろん行くよ!」
〈兄〉
「ああ、有難う。それでな、電話したのは
その事だけじゃ無いんだ。
お前、良い人いるのか?結婚は考えてるか?」
女の体が好きなだけ、女のATMになんか
なりたくない、そんな事言ってる俺が
結婚したいなんて考える訳無い。
セんもんフレんどで満足して
ちゃんとした彼女も作る気もない。
一人で生きて行こうと俺は決めてたんだ。
その時の俺は、人から結婚の事を
とやかく口出しされるのが
嫌だったんだけど、相手が兄だから
やんわり受け流そうと思ったんだ。
〈俺〉
「いや、誰もいないよ。結婚する気は無いよ。
でも、お兄が結婚するのは祝いたいよ」
〈兄〉
「そうか……長い間お前から連絡もなくて、
結婚の知らせも無かったから、
どうしてるのかって思ってたんだ。
おい、悪い事は言わねえ、早く結婚しろ!」
〈俺〉
「い、いや、いいよ。どうしたんだよ急に。
お兄らしくないじゃん」
〈兄〉
「お前はまだ30代だろ、まだ間に合う!
年とればとるほど結婚しづらくなるぞ!
いいかよく聞け、俺の年になったらな、
独りでいたら急に寂しくなるんだよ。
俺がこの年で結婚出来たのは、ただ単に
運が良かっただけだ。
本当は皆凄い苦労してるんだぞ!
弟のお前には苦労させたくないんだよ」
〈俺〉
「いやいいよ、ほっといてくれ。
俺は独りでも寂しくないし、身軽でいられて
人生のコスパ良いと思えてるからさ」
〈兄〉
「それはお前がまだ30代だからだよ!
俺なんかなあ、周りがみんな結婚して子供もいて
話題も合わないし、飲みの誘いも断られるし、
そのたんびにすげえ孤独を何度も感じたんだ!
すげえ辛かったんだぞ。
お前には俺と同じ目に会って欲しくないんだよ」
兄の話を聞いた時、
俺は兄の未熟な所に気付いてしまったんだ。
それで、本音で話してやろうと思ったんだ。
〈俺〉
「……待ってくれお兄、それってさ、
お兄が寂しさを感じてるんじゃなくて、
周りの人達と自分を比べて、
勝手に自分が寂しいって洗脳されてるだけだろ?
お兄が結婚したいと思った感情は
本当にお兄の感情か?
俺から言わせれば、ただ単に
周りに流されてるだけ、みたいに聞こえるよ?」
〈兄〉
「屁理屈言うな。お前には時間がないんだ!
早い内に結婚しろって!
それがおまえの為なんだよ!」
〈俺〉
「俺は大丈夫だって。そう、それに
SNSでさ、#俺Tooってタグをたまたまみつけてさ、
それを見つけてから俺変わったんだ。
独りでも平気になれたんだ。
今はフォロワーも増えて、盛り上ってるんだよ。
だからお兄、俺の事は心配しなくていいよ」
〈兄〉
「……お前今#俺Tooって言ったか?」
〈俺〉
「ああ、お兄も知ってるの?」
〈兄〉
「#俺Tooはやめとけ!真に受けるな!」
〈俺〉
「何で?#俺Tooのタグを載せる人達は皆
自分の意思を持ってる人ばかりだよ!
流されてない!自分で判断出来る人達だって!」
〈兄〉
「やめろ!#俺Tooはやめとけ!」
〈俺〉
「いいじゃないか!何がダメなんだよ!」
〈兄〉
「#俺Too最初に上げたのは俺なんだ!」
一瞬、意味が解からなかった。
以前から#俺Tooを一番最初に上げた奴は
どんな奴だろうって思ってたけど、
それがまさか、自分の兄だなんてね。
〈俺〉
「ええ?あれってお兄が作ったのかよ!?」
〈兄〉
「ああ俺だ!俺がやった!モテなくて
女に相手にされなくて、ムカついて
憂さ晴らしでスッキリしたくてやったんだ!
でも途中で気付くんだ。
ただのストレス発散でしかないってな!
#俺Tooには何の救いも答えも無いってな!
負け組男達が群がって傷なめ合ってるだけだ!
今はあんなタグ上げた事後悔してるよ。
弟のお前まで巻き込むなんてな」
ショックだったのは、
兄が#俺Tooの第一人者だって事もそうだけど、
それよりも、その本人が#俺Tooを上げた事を
後悔してるって事だった。
〈俺〉
「……#俺Tooやめたとしても、俺はもう
結婚出来るような人格じゃなくなったんだ。
独りの法が楽なんだよ。だからもう
俺の事は放っといてくれ」
〈兄〉
「ならその人格を直せばいいだろ!
お前の為に言ってるんだよ
早く婚活しないと手遅れになるぞ!」
〈俺〉
「いい加減にしてくれ!
俺には俺の人生があるんだよ!
俺の人生は俺が決めるんだ!
周りが結婚してるからつられて結婚するような
お兄と一緒にしないでくれ!」
俺は電話を一方的に切った。
久々の兄との電話なのに喧嘩別れ。
結婚式にも行きづらくなった。
もっと冷静に話せなかったかと思っても
すべて過ぎた事。言ってしまった事は
もう変えられない。
#俺Tooに出会ってから俺は、
自分で決める、自分で決断するって事が
自分の自信を保つ柱みたいになってた。
だから結婚して無くても、彼女作らなくても
それがどうした、別に構わねえ、って
思えてたんだ。自分を認められたんだ。
だから兄の、周囲の人達が結婚してるから
焦って結婚したみたいな考えは、
その時の俺には全く理解できなかった。
俺はSNSに投稿したんだ。
『結婚したいならしろ したくないならするな
周りが結婚してるから、結婚してないと
カッコ悪いから仕方ないから結婚しようなんて
絶対思うな
#俺Too #結婚 』
兄が言ってた。
#俺Tooには何の救いも答えも無い。
負け組男達が群がって傷なめ合ってるだけ。
実際その通りだと思う。
そして俺は兄みたいになりたくなかった。
自分を認めて生きていきたかった。
だから俺は、
#俺Tooを傷のなめ合いでだけで
終わらせないようにしようと、そう思ったんだ。
『#俺Tooに集まって愚痴をぶちまけるだけじゃ
何も変えられない。皆それでいいのか?
アクションを起こそうじゃないか。
俺達に何が出来るかって?答えは簡単。
自分に正直になるんだ。
女のワガママがムカつくなら彼女作るな。
年収ばかり見られるのが嫌なら結婚するな。
男女で料金が違うのが納得いかないなら
マチアプなんてやるな。
自分に正直になる事が、
俺達がこの社会に出来る攻撃なんだ。
#俺Too 』
俺のフォロワーは結構増えて来てた。
この投稿がフォロワーの皆に見られて
共感してくれてアクションに移してくれれば
何かが変わるかも知れない。そう思ってた。
SNSで愚痴ってるだけ、何も変わらない。
その現実を変えてみたかった。
そう、俺は、変えたい、
現実を、世界を、明日を、変えたい。
そればかり考えてたんだ。
つづきも読んでくれたらうれしいな




