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チャプター62:「突崩」

 状況が次第に切迫し始めるToBの一方。

 VAC AFは数に物を言わせ、まさにToBを押し潰す勢いで迫っていた。


「弾薬を惜しむなッ!火力を維持しろッ!」


 一部の火力支援担当の隊、要員は遮蔽に配置して多種多数の火力をばら撒き。

 それに任せ、それの火力支援を受け。攻勢主力の各員はその脚を止めることなく進み上げて行く。

 敵からの攻撃に誰かが倒れ、崩れようとも。攻勢の動きが止まることは無い。


「動き続けろッ。潰せ、押し通すぞォッ!」


 大きな動きの中でコマンドー小隊の指揮官が、自身もリボルバーを撃ち向けながら張り上げ。

 それに呼応する怒号をまた上げながら、周囲の各々は怯み臆することなく、果敢に押し進む。



「ッぅ!」


 また、ToB防衛陣地側のその中心。

 そこには部下たちに混じって己も戦い、今は急く動きでレーザー・マークマンのエネルギーセルを入れ替え再装填を行うオルスレーの姿がある。


「シニア、防御線が崩壊しつつあります!」

「一番機関銃、弾薬無し!」

「三番機関銃も弾切れ!戦闘不能!」

「このままでは維持できませんっ!」


 しかしそんなオルスレーの行動すらを阻むように、周りの兵たちから聞こえ届くのは、絶望的な状況を知らせる報告の数々。


「クソ……」


 そんな最中で、オルスレーが思わず零したのはそんな小さな悪態。


「……全部隊!今より防御陣地は放棄、施設内部へ退避する!最後の戦いをしようッ!」


 そしてしかし、次にはオルスレーは顔を上げ。

 決断の言葉を、命令を。兵たちに向けて発し伝えた。



 そんな一方、二手に分かれての行動に入ったVAC AFの車輛機動隊は。ToBがAF主力からの攻撃に抑え込まれている間に、その正面防御をそれぞれ迂回して越え。

 その背後の両側方に侵入到着することに成功していた。


その車輛機動隊の片方の動きを代表して見る。


「――ッ、ありったけばら撒けッ!」


 場に至るや否や、急停車した火力支援担当の四輪駆動車から。搭載の中機関銃の射撃掃射が惜しみなく敵に向けてばら撒かれ始め。

 その支援の元、車輛機動隊の各員はそれぞれのオートバイやバキーを降車し、戦闘班として再編成。


「行けッ」


 その指揮を執るは他ならぬサミュエル。

サミュエル率いる戦闘班は、散会展開して戦闘に入っていく。


 戦闘班がまず相手取ったのは、遺跡施設の後方側面に築かれていたToBの防御陣地。

 しかしそれは正面防御にくらべて申し訳程度のものであり。そこに配置していたToB兵たちは現れた戦闘班を相手取ろうとしたが。

 だが数の差と、状況による動揺からの戦意低下も災いし。戦闘班側の射撃、戦闘行動を前に、碌な抵抗もままならずに容易く撃ち仕留められて無力化されていった。


「上を抑える」


 ToBの側面防御を無力化し、戦闘班は遺跡施設の一角に至る。


 戦闘班を先陣を切り、サミュエルはその遺跡施設の一角に作り付けられていた、昇降梯子に取り付き脚を掛けた。

 サミュエルは随伴する隊員等の援護の元、素早く梯子を上り。次には遺跡施設の屋上上階へと踏み入る。


「!――ぐあっ!?」

「がァ!?」


 そこで相対したのは、屋上で監視に当たっていたToBの兵たち。


 彼らは慌て、しかしすかさず現れ侵入して来たサミュエルに武器を向けようとしたが。

 だがそれよりも速く唸りを上げたのは、サミュエルの持ち扱う大口径リボルバー。

 それが連続して唸りを上げ、次には相対したToB兵たちを立て続けに屠り沈める。


「ッ」


 その直後瞬間に、サミュエルの近くを銃撃が掠める。それは別方側方まだ居たToB兵からのもの。

 しかしサミュエルはそれに怯むことなど無く、直後には身を捻る動きで大口径リボルバーをそちらへ突き向け。

 発砲。


「がぅ!?」

「あ゛!」


 恐るべき精度の射撃でそのToB兵たちをまた撃ち抜き沈めて見せ。

 その次には何事もなかったかのように、手早くスピードローダーにてリボルバーに再装填を行って見せた。



「弾をくれ!」

「こっちも最後だ!」


 ToB の防御態勢は完全に崩壊。

 今は残る戦闘可能な者が展開して戦う中を、それに庇われながら兵たちが遺跡施設内へ駆け込み退避していく光景がある。


「シニア、これ以上は限界です!正面扉を閉めないと!」

「だが、まだ全員の退避が!」


 その中で、陣頭指揮を執るオルスレーに一人のPA兵が訴える様子がある。

 その通り、これ以上外で戦い持ちこたえることは限界であったが。遺跡外部にはまだ少なからずの兵が取り残されていた。


「間に合いません!他の者が危険に晒されます!」

「く……っ!皆、中へ入れ!」


 しかしPA兵に畳みかけるように訴えられ、オルスレーは苦渋の決断を下す。

 周囲で戦っている兵たちに張り上げ伝え、戦闘態勢を解かせて遺跡施設内部へ駆け込ませる。

 そして近くから全ての兵が対退避を終えると、オルスレーは遺跡の正面扉の操作コンソールをPAの拳で破壊。

 外部からの操作を不可能とすると同時に、緊急遮断を起動させ。


 自身も最後に閉まりかける重い扉へと飛び込み。そして遺跡の正面扉は重い音を立てて閉じられた。



 一方。外部では残されたToB兵のほとんどは無力化されたが。

 殿として残された三体のファイアサポートボットは、遺跡正面に居座り続け。その強力な火力にて依然としてVAC AFを相手取り、出血を強い続けていた。


 しかしその居座るボットとの交戦距離の内にも、VAC AF各隊各員が続々と辿り着き、飛び込み。

 戦闘線、隊形を構成し。数多の火力が向けられ注がれ、ボットのその装甲を叩いて金属音を上げている。


「ヅァッ!?」

「一名撃たれた、衛生員を!」

「ヌォ!?――ストイー2-3が撃破されたッ!」


 ボットからの機関砲の火線が掠め、ランチャーからのロケットの着弾で爆炎が上がり。

 それにより隊員が傷つき倒れ、巻き込まれ崩れ。接近を試みた装甲車が撃破される。


「怯むなァッ!叩き込み続けろッ!」


 しかし戦闘線には絶えることを知らぬまでの様相で、味方戦力が続々到着。

 増え続ける戦力、火力が唸り響き、撃ち崩すべき敵へと叩き込まれ続ける。



「――行けそうだ」


 それとタイミングを同じくして。正面に陣取るボット隊形の、その横側方に気配が忍び寄った。

 それは迂回し遺跡の背後両側方へ回り込んだ車輛機動隊からの一個班。


 カウボーイハットやターバンなど、特に目を引く部分を始め。

 ストロング コマンドーとも標準的な隊員とも違う。よく言えば自由、言ってしまえば一貫性の無い装備に、その隊員等はそれぞれ身を包んでいる。


 フィールド コマンドー。


 コマンドーの内でも特異な枠の一種で。フィールド任務、サバイバル行動などに特に優れ、また軽快な活動行動を得意とするのが彼等だ。


 遺跡建物の遮蔽から、ボットのがら空きの側面を伺うそのフィールドコマンドーの彼等。

 その内の一名の手にあるのは、異質な発光部品を伴うグレネードの類の装備――電磁グレネード。


「よし行けッ」

「投てェきッ!」


 この場のフィールドコマンドーの指揮官の合図とほぼ同時。

 電磁グレネードの扱いを担当する隊員は、遮蔽より最低限飛び出して、次にはグレネードを思いっきり投てき。

 それは放物線を描いて、向こうに並び陣取るボットの内の、端の一体の脚元に落ちる。


 直後瞬間。

 電磁グレネード特有の、電気電波が可視化された炸裂が発生。


 それを諸に受けて包まれたその一体のボットは、その大きな胴体構造を跳ね震わせる動きを見せたかと思うと。

 次にはまるで脱力したかのように、火器や可動部を降ろして沈め。それ以上動くことは無くなった。



「一体無力化ッ」


 正面の戦闘線からも、その様子は目視確認できた。それを観測した一個小隊の小隊長が、事実確認の声を上げる。


「戦車ちゃァーくッ!」


 そして間髪入れずに、続けて他の誰かがそんな報告の言葉を張り上げ周囲に響かせる。


 その到着を知らされた存在――A101重戦車 ドーンベヒーモスが。

 背後後方からキャタピラ音とエンジン音を響かせ、そしてその独特の重鈍な動きで。そして零れ来るボットからの火線をしかしその装甲で容易く弾き退けながら、堂々と戦闘線に合流到着。


「ッォ!」


 到着と同時にすでに砲塔旋回、照準行動を始めていたA101は。

 隊員等の背後に鎮座停止すると同時に、備えるその120mm戦車砲を唸らせ劈かせた。


 撃ち放たれた砲弾は、一瞬後には向こうに残るボットの内の一体に叩き込まれ直撃。

 強力凶悪の体現のボットようであったボットも、流石にその直撃にはひとたまりも無く。

 戦車砲弾の直撃部分、胴体のそのど真ん中に大穴を空けられ。直後瞬間には炸裂した砲弾に千切られ弾かれ、木っ端微塵に消し飛んだ。


 そして残るボットは一体。

 最期の一体となったボットは、多すぎるVAC AF側の戦力に制御認識が追い付いていないのか。その火力の照準にムラを見せ、無駄弾をばら撒くことすらをしている。

 その様は、まるで狼狽えているかのよう。


「GOォッ!GOォッ!!」


 そんな最後に残るボットに向けて、畳み掛け決着を付けるための一手が迫る。


 中隊指揮官の号令を背に受けながら、ボットに駆け進み迫る一個チームの姿。

 それはスーパーヒューマン系隊員の一名を主とし、ヒト系隊員とユーダイド系隊員が一名ずつ援護に着く肉薄戦チーム。


 その主たるSH隊員が持つは、火炎放射器。

 それもSHの巨体での運用を頼りに、標準の物よりも大型化された強力なもの。


 それを扱うSH隊員は有効射程に踏み込むと同時に、トリガーハンドルをその太い手で引いた。


 吐き出し向けられたのは、濁流の如き巨大な火炎。


 噴き出す粘性の特殊燃料に乗せられた肥大した火炎は、次にはボットの大きな胴体をしかし呑み込むまでの様で包み込む。


 その中でボットが上げて見せるのは、動作不良の音を立てての歪に動く様。

 それはまるで、まるで苦しみ悲鳴を上げて藻掻いているかのよう。


 そしてそれも束の間、次には動力系に火が行ったか。

 最後のボットは巨大な炎の中で、爆発四散した。


 ――イィェエエエエエッッ!!


「やったぞッ!」

「全ての無力化を確認ッ」


 全てのボットが無力化されて沈み、ついにToBの防御線を完全に崩しせしめた事実に。

 AFの戦闘線の各隊各員から、勝利への歓喜の拳に、張り上げられた声の数々が広がる。


「敵防御陣地は完全無力化ッ、これより遺跡施設内部への侵入攻略へ移行するッ」


 その内で、自身も前線に身を置き陣頭指揮に当たっていたジョンソンは。自身もその光景を見つつ。

 後方指揮所への報告内容を言葉にして、動向している通信員に伝え託す。


「あァ、やぁれやれだねッ!」


 そのジョンソンの横隣りでは、いつものように悪態を吐きながらも。

 そのSHの巨体で構える20mm機関砲に弾倉を叩き込んで再装填を終え。他各員に零れずに侵入攻略準備を整えるコースの姿もある。


「行くぞッ!」


 そしてジョンソンは次には、自身の扱う大口径リボルバーを掲げ振るって。

 この戦いに決着を付けるべく、周りの各隊各員へ促す声を張り上げ。そして遺跡施設に向けて踏み進んだ。

長らく掛かりましたが今戦闘の大局はこれで決着です。

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