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異世界10日目。


俺は朝の目覚めが良い方だ。今日も人より早く目覚めて周囲の様子を伺う。

隣の雪さんとはもう手が離れていたが、そのまま眠れているようだ。可愛い寝顔だな。和む。


俺の他に朝が早いのが七菜さんだ。俺が体を起こすと七菜さんも体を起こしており、目が合った。手を振ってくれたので振り返すと、七菜さんが静かに立ち上がって俺の方へと歩いてくる。何か用かと思い俺も立ち上がる。

七菜さんは他の人を起こさないように俺に顔を寄せて小声で話しかけてくる。



「おはようございます。良かったら外の様子を見に連れて行ってくれませんか?」



美咲さんが起きないと【ホームへの扉】は開けられないので外に出ることはできないのだが、俺は転移で出入り自由だ。七菜さんが希望するなら断る理由はない。



「おはよう。いいよ。背中に乗って。」


「少し用意をしてもいいですか?」


「もちろん。」



七菜さんが荷物を準備している。

俺も靴を履く。パジャマは無いので服を着替える必要は無い。俺は制服のワイシャツとズボンで寝たのでそのままだ。

七菜さんが指差すので冷凍室に入る。七菜さんも入って幾つかの食材を集めていた。

七菜さんも準備を終えたようで近寄ってきた。無言でしゃがんで背中を見せる。七菜さんの荷物を持った手が俺の前に回される。七菜さんの足を掬うようにして持ち上げながら立ち上がる。

耳元で七菜さんが囁く。



「まだ雨が降っているかもしれませんので、洞穴の中にお願いします。」


「了解。【トランスポート】、80番。」



外に出た。まだ薄暗く、雨は降り続いていた。

取りあえず七菜さんを下ろす。



「雨は止んでいませんね。晴れていたら一緒に外に出たいと思っていたのですが。」


「早く止むといいね。」


「そうですね。ですが雨の可能性も考えて用意して来ました。」



七菜さんが持ってきたのは調理器具と幾つかの食材。



「チャレンジメニューです。一緒に挑戦してくれませんか?」


「もちろんいいよ。」


「先ずは牛乳から作ったバターです。トーストに塗ってみたかったのですが、パンは売られていないのですよね?」


「うん。街では見かけなかったな。」


「小麦の種類の問題でしょうか。パンが作れないか試してみたいですね。今度粉で買ってきてくれませんか?」


「了解。えーと、米も昨日探してみてくれと頼まれたな。忘れないようにしないと。」


「大和さんに頼りっきりですみません。」


「そんなことないさ。七菜さんには俺も助けて貰っているよ。」


「そうでしょうか。」


「そうそう。それで何を作るの?」


「バター醤油で炒めた焼きうどんを試そうと思っています。そう思って昨日のうちにうどんを茹でておきました。具に長ネギっぽい野菜とキノコを入れて、卵を絡める予定です。」


「聞くだけで美味しそうだね。手伝うよ。」



本当はあまり焼きうどんは好きではないのだが、別に嘘を吐いたわけではない。七菜さんが俺のために作ってくれるというだけで美味しそうに思えてくるのだから不思議だ。




七菜さんと二人で作った焼きうどんバター醤油味は美味しかった。

食べ終える少し前に【ホームへの扉】が開いてみんなが出てきた。



「おお!美味そうな匂い!」


「本当だ!何食べてるの!?」


「焼きうどんです。バター醤油で炒めました。全員分は出来ていないので今から炒めますね。」



七菜さんはみんなのために調理を開始した。七菜さんの耳元で七菜さんだけに聞こえるようにお礼を言う。



「七菜さん。ありがとう。美味しかったよ。」


「味見に付き合ってくれてありがとうございました。」



そう言って微笑む七菜さんは綺麗だった。


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