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うどんを食べ終えて落ち着いたところで4人を連れて拠点に帰ることにした。4人に簡単に転移の仕組みを説明する。
「俺におんぶか抱っこされている人は俺の転移で一緒に転移できる。これが俺のスキルね。そして、雪さんに触れている人は雪さんが転移する時に一緒に転移できる。こっちが雪さんのスキル。だから、俺が雪さんをおんぶするから、みんなは雪さんに掴まってね。」
「何だか複雑ね。」と玉田さん。
そう複雑なのだ。もっと言えば俺の転移は【マーキング】と【小石転送】と【転移巻き込まれ体質】により実現しているのだが、それをわざわざ説明する必要は無いだろう。
拠点に戻ると七菜さんが出迎えてくれた。
「結局連れ帰ることになったのですね。」
一緒に連れ帰った4人は初めての転移の感想で盛り上がっている。雪さんを下ろしながら七菜さんに応える。
「うん。そうなった。受け入れてくれる?」
「そうなる可能性は考えていましたから準備してあります。食事は済ませましたよね。では先ずはシャワーから。」
「それで、俺は約束があってまた街に行かないといけないんだ。後は七菜さんに任せていいかな?」
「はい。大丈夫です。今日の分の飴が用意できていますが持っていきますか?」
「そうだね。明日の朝いかなくて済むし、そうさせて貰おうかな。」
「準備するので待っててください。」
連れ帰った女子のことは七菜さんに任せれば良いだろう。
もう日が暮れてきているので、俺は小田さんを迎えに行かないといけない。小田さんの就職先である乾物屋から小田さんの住む宿屋までの道案内だ。
今日も色々あったが、これが今日最後の仕事だろう。七菜さんから飴の入った包みを受け取り街へ転移後、乾物屋へと向かう。
「店主。もう店終いか?」
「おう、迎えに来たのか。これから閉めるところだ。もうちょっと待ってな。」
「そうか。明日の朝の分の飴も今持ってきたんだが、買い取りできるか?」
「おう。そこに置いておいてくれ。」
「分かった。」
飴を置くと店の隅へと移動して待たせてもらう。
小田さんは接客をしている。飴だけでなく乾麺などの販売も担当しているようだ。初仕事なだけに疲れてはいそうだが、ちゃんと働いているようだ。
ぼんやりと小田さんの働きぶりを眺めていると店主が近寄ってきた。
「ほらよ。飴の代金だ。」
「ありがとう。今はあまり飴は売れていないようだが?」
「うん?今日ももう売り切れたぞ。しばらくは物珍しさで即完売だろうな。だがまとめ買いしている客が多いから、一通り行き渡ったら販売量が安定してくるだろう。生産は今くらいで良いと思うぞ。」
「売り切れていたのか。販売量の見込みも参考になったよ。それじゃあ飴は現状維持として、次の商品でも考えないといけないな。」
「良い物があればうちに持って来いよ。」
「ああ、そうさせてもらうよ。」
店主との話を終えてしばらくし、客足が途絶えたところで閉店となった。
「アマリ、今日の給金だ。後はやっておくから帰っていいぞ。明日も朝から来てくれ。」
「はい。お疲れさまでした。」
小田さんが店長に挨拶して帰宅となった。
「大和君。お待たせ。帰りましょう。」
「お疲れ様。今日は送るけど、明日からは自分で来れるように道を覚えてね。」
「迎えに来てくれないの?」
「俺も忙しいからね。自分で何とかして。」
「ぶぅー。分かった。」
小田さんが不満そうに頬を膨らませているが、俺としては我儘言うなといいたい。
でも同じ事を美咲さんに言われたら可愛いと思っちゃうんだろうな。結局どんな言葉や態度も、お互いの関係性が大切なんだよな。教室に居た頃に俺が気障な台詞を言っても気持ち悪がられるだけだっただろうが、今の俺がクラスメイトの女子に気障なことを言っても格好いいと受け入れられる気がする。
小田さんを宿に送り届けて念押しする。
「明日は迎えに来ないから、自分で職場に行って自分で帰ってね。いいね?」
「うん。分かったよ。」
「それじゃあね。」
「また来てね!」
「店には顔を出すと思うから、その時に。」
「店じゃなくて部屋に来てくれてもいいのに。」
最後の言葉は聞こえない振りをして立ち去る。とりあえず、小田さんの生活の目途がたった。後は放置で良いだろう。




