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湾藤たちから女子グループのいる場所の情報を聞き出した後、一旦、湾藤たちの居た場所に跳びそこから捜索を開始する。
先ずは川に出て、そこから上流へと昇っていく。
雨は降り続いている。昨日までは薄手の長袖シャツ一枚で調度良いくらいの温暖な気候だったが、今日は雨のせいか寒く感じる。長時間はきつそうだ。少し急ごう。
小走りで川の上流へと登っていると、川に流れ込む支流らしきものを見つけた。雨で増水しているはずだが、それでも歩いて跨げる程度の幅しかない。深さも無く、普段は湿っている程度なのではないかと思う。だが確かに川に水が流れ込んでいる。この先を確認しよう。
支流らしきものを遡ると、直ぐにちょっとした崖にぶち当たった。水は崖の表面を湿らせるように拡がりながら流れ落ちている。雨が流れているだけの様にも見えるが、念のため崖の上の状態を見ておこう。
少し迂回して崖の上へと登ると、崖の上は再び小さな水の筋ができていた。
これは当たりかもしれないな。水の筋に沿って人が歩いたかの様な足跡が残っている。
そこからは少しきつめの登り坂だった。水の筋を辿り上へと進んでいく。そして、小さな池に辿り着いた。池のほとりにある岩の隙間から綺麗な水が湧き出ており、池に水をたたえている。やっぱり当たりかな。
さて、ここからどちらへ向かえばよいだろうか。
日下部さんの話では湧き水の近くの大木の根元を拠点としているという話だった。【鳥瞰図】で現在値付近で大きな木が無いか探してみる。
あった。【鳥瞰図】拡大してみると、この付近では目だって大きい木が見つかった。その木を目指す。
見つけた。木の根元は直径10メートル位ありそうな大木。根元から歪に捻じれ不格好な木だ。木に近付こうとすると、向こうから人が飛び出してきた。
「そこで止まって!」
制止をしてきたのはクラスメイトの女子。玉田さんだ。やっぱりここで当たりだったようだ。
玉田さんは先を尖らせた木の棒を槍の様にしてこちらに向けている。俺は玉田さんを刺激しないようにその場で止まり両手を上げる。
「玉田さん。何もしないしこれ以上近付かないから、少し話をさせてくれないかな?」
「そのまま話して。」
「先ずは最初に、俺がクラスメイトの鈴木大和だってことは分かって貰えているよね?」
「ええ。分かっているわ。」
「俺は初日から、佐藤美咲さん、真中雪さん、飯田七菜さん、ソフィアさんと暮らしている。昨日までにそこに、甘野さん、井家田さん、鈴木華さんと、男は戸田君と橋基君が合流している。俺たちは洞穴を見つけてそこに住んでいるから今のところ雨が凌げているし、食料も蓄えがある。今日、俺たちが拠点にしている洞穴に西東、田辺、板野と水上さんが来た。全員雨で濡れていたから受け入れることにした。俺たちは雨で困っている人を可能な限り受け入れる方針として、さっき湾藤、東と日下部さんを拠点に案内した。玉田さんたちのことは湾藤から聞いて探していたんだ。もし雨で困っているなら、俺たちの所に来てほしい。」
「私たちは男子を信用してないの。そのまま帰ってちょうだい。それから、こちらに合流を希望する女子がいれば受け入れるから伝えてあげて。」
「近付かないから、雨を凌げているのかを見せてくれ。」
「・・・。そのまま右に進んで行って。」
「分かった。」
指示に従い大木からの距離は保ったまま右へと回り込んで行くと、大木の根元に樹洞が見えてきた。遠目ではっきりとはしないが、そこに小さく丸まって肩を寄せ合う女子が見えた。雨は凌げているが、スペースは足りていないようだな。だが、雨を凌げているなら無理強いはできない。
「ありがとう。後で物資を届けようと思うけど、女子を連れてきたら近付いても大丈夫かな?」
「女子だけならいいわ。でも雨の中を連れ回すのは感心しないわね。」
「ああ、濡らさないように気を付けるよ。」
【マーキング】はしておきたいな。小声ならばれないだろう。
「【マーキング】、32番。」
32番は玉田さん。基本的には会った順なので、異世界に来てからの思い出を探れば思い出せるのだが、思い出すのがかなり大変になってきた。できればここの4人は連続番号にしておきたい。立ち去った振りをして隠れて近付き【マーキング】したいところだ。
十分離れたところで木陰に隠れて様子を伺うが、離れ過ぎて全く分からない。【鳥瞰図】を開いて目一杯拡大し、玉田さんの位置を探ると、大木の周りを動いていることが分かった。警戒の当番なのかな。【鳥瞰図】で動きが分かるから何とかなりそうだが、もし見つかった時に関係が拗れそうだな。ここは約束を守って立ち去ろう。そして女子を連れて物資を持ってきて信頼を稼ごう。
また誤字報告いただきました
ありがとうございます




