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話し合いは美咲さんに任せて俺は街へと転移すると、街では雨は降っていなかった。

この街と俺たちのいる森との位置関係は分かっていないが、結構離れているのだろう。


取りあえず乾物屋のおっさんに飴を売りにいく。



「店主。今日も来たぞ。早速だが飴を売りたい。昨日までと同じ物が200個。それから新しい型で作ったこの真丸の飴が約2000個だ。新しい形は重さはほとんど今までと変わらないけど、形の違いで今までより若干小さく見えるかもしれない。」


「おお!!新しい物の方が綺麗だな!これは見栄えもいいしもっと売れそうだ!しかも2000個か。まとめて作れるようになったのか?」


「そうだ。」


「よし、全部買い取ろう。量も増えたしまとめ買いする客が多いから10個ずつに包装して売ろうかと思っている。今までより手間と包装代が掛かっちまうが、売る時の手間を考えるとその方が良いと思ってる。それで価格なんだが、10個で1000円で売りたいんだ。買い取りを1個60円に下げられないか?」


「まとめて作れるなら安くできるだろうってことか?」


「まあそうだ。」



買い取り額が1個100円から60円に下がるのか。今まで3回作って1日に600個×100円で6万円の稼ぎだった。それがこれからは1日1回だけでも2000個×60円で12万円の稼ぎになる。十分だろう。



「分かった。それでいい。」


「おお!そうか!それじゃあ昨日言ってた女を連れて来いよ。包装と接客を任せるからよ。給料は、お前には儲けさせてもらっているからとりあえず1日8千円だそう。それでいいか?」


「今日からか?」


「そうだ。」


「そうか。連れてくる。よろしく頼む。」



よし。小田さんを迎えに行くか。



宿屋に行き、小田さんを呼び出して貰った。



「大和君!今日も来てくれたんだね!」



小田さんがやたらと嬉しそうにしている。いつの間にこんなに懐かれたのか。

・・・。心当たりはあるな。今の小田さんにとって唯一頼れる人、それが俺か。

やっぱり小田さんには自立して貰う必要がある。



「昨日話してた働き口だけど、今日から早速受け入れたいって。行ける?」


「ええ?今日から?」


「何か用事があった?」


「ううん。無いけど。」


「それなら行こうよ。こういうのは先延ばしにすると良くないよ。」


「不安なんだけど。」


「新しい職場ってのは誰でも不安だよね。でも勇気を持って飛び込まないことには何も始まらないから。大丈夫。そんなに大変そうな職場ではないよ。ね。」


「分かった。」



若干不服そうながらも承諾してくれた。気が変わらないうちに連れて行こう。



「行こう行こう!」



小田さんの背中を押して宿の外へと連れ出す。



「ええ!?今すぐ?」


「そうそう。善は急げってね。」



宿を出ると諦めてくれたのか押さなくても歩いてくれるようになった。

道中、何も持ってなくていいのか、何をすればいいのか、など聞かれたけど俺も知らないので答えようがない。全て「行けば分かるよ」で押し通した。



乾物屋に入ると後は店主に任せる。



「店主、連れて来たぞ。彼女が小田さん。よろしく頼むよ。」


「おお、連れてきたか。じゃあ早速飴の小分けをお願いするかな。」


「その前に乾麺、うどんでいいか。うどんを100食分買いたい。」


「代金は飴の買取から差引きでいいか?」


「そうしてくれ。」


「準備するから待ってろ。」



店主が準備を始めるが、その間に小田さんが話しかけてきた。いいから仕事を覚えろと言いたい。



「100食もどうするの?」


「今、森では雨が降ってるんだ。森での食料は狩りが主体なんだけど、雨だとそれができないだろう?だからみんなの分の食料を買って帰るんだ。」


「みんなって何人いるの?」


「既にいるのが14人だったかな。他にも雨に打たれて困っている人がいるだろうから、助けることになると思う。街にいる小田さんは恵まれている方だと思うよ。」


「そうなのかな。大和君は街でも私を助けてくれるし、森ではみんなを助けているし、凄いんだね。」



そこで熱っぽい視線を向けないで欲しい。無視して黙って店主を待つ。



「ほら、うどん100食と差し引いた今日の買い取り額だ。」



金を小田さんに見えないように渡してくれる。この親父、案外気遣いが出来てるんだよな。

今日の売上は飴2200個×新価格60円で13万2千円。うどんが100食×300円で3万円。差引き10万2千円だ。そこそこの大金なので見られると面倒くさいことになりそうだから、見えないように渡してくれるのは助かる。



「後は任せていいよな?な?」


「うん?ああ、任せておけ。」


「それじゃあ俺は用事があるんで。」



急いで去ろうとするが小田さんに呼び止められる。



「待って、大和君。」


「何?」


「ありがとうね。仕事終わったら迎えに来てくれる?」


「え?もしかして道を覚えられなかった?」


「うん。」


「しょうがないか。分かった。店主。終わりは日暮れ頃でいいのか?」


「ああ、日が暮れたら店は閉めるから、その頃に来るといい。」


「分かった。それじゃあ小田さん、頑張ってね。」


「うん!」



店を出て急いで細い路地に入る。


あ~、完全に懐かれた。これはもう、浮気を疑われてもしかたないレベルで懐かれたと思う。小田さんの傍に居たくない。


美咲さん!俺は浮気するつもりは無いからね!

そんな一途な俺の想いとは裏腹に、ハーレム案が進行中というのもおかしな話だ。


正直なところ、雪さんや七菜さんのことは美咲さんと変わらないくらい好ましく思っている。だがそれがイコール浮気ではないと思う。


難しいけど浮気を定義してみよう。

1.美咲さんが知ったら嫌なこと、例えば他の女性と手を繋ぐことを嫌だと思うなら、意図的にそれをしたら浮気。

2.美咲さんが嫌でなくても、世間一般的に彼女にしかしないようなことを別の人にしたら浮気。

3.美咲さんよりも優先順位が高い人ができても浮気。



うん。まだどれにも該当しない。まだ俺的定義においては浮気していない。大丈夫。

だがハーレム案が実現すると、美咲さんがしても良いと言って雪さんや七菜さんに迫られたら拒否し続ける自信がない。2.に抵触しそうだ。その点を今後しっかり話し合う必要があるだろう。


でも小田さんについては大丈夫。浮気してない。俺的定義においてはそう。大丈夫。


よし、気を取り直してホームに戻ろう。




誤字報告に感謝(^^)

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