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「大和さん、疲れてそうですね。」
一緒に休憩するために横に座った七菜さんが聞いてきた。確かに疲れているかな。
「うん?そうだね。ちょっと疲れてきてるかも。」
「大和さんばかりに負担が行ってしまいすみません。」
「いや、七菜さんは俺と変わらないかそれ以上に働いてるでしょう。いつの間にやら料理担当だし、商品開発もしてくれているし。」
「大和さんが頑張ってくれていますから料理くらいはしないと申し訳ないですよ。」
「でもさ、切り分けられた肉をスーパーで買ってくるのではなくて、解体から始めないといけないでしょう。料理の範疇を超えているよね。」
「でもモンスターは解体しやすいですから。」
「うーん。色々ともっと楽にならないものかなぁ。」
「そうですね。今は食材入手が一番大変ですから、落ち着いたら農業などをしてみたらどうかと思います。」
「農業か。いいね。先ずは土地からか。」
「はい。水が入手しやすい土地がいいですね。」
「水かぁ。そう言えば川があったな。」
「華さんとあった場所ですね。街は川の傍にあるのですか?」
「街?【鳥瞰図】で見たけど川は無かったな。あれ?水は何処から得てるんだろう。井戸かな?でも井戸から水を汲んでいるところを見かけなかったな。明日行ったら聞いてみよう。」
「まだまだこの世界については知らないことばかりですからね。」
「そうだね。」
「あの件ですが。」
「あの件?あー。」
ハーレムの件だろうな。
「美咲さんも乗り気です。」
「ええ?そうなの?」
「はい。もちろん、私から薦めているせいですが。」
「七菜さんは本当にそれでいいの?」
「私も元の世界でなら嫌です。ですがこの世界にきたことで天涯孤独となりました。家族とは普段は一緒にいなくとも緊急時には無条件で頼れる存在だと思います。近くにいなくとも確かな繋がりがあり、心の芯の部分で安定をもたらしてくれる存在なのだと思います。今はそれが失われてしまい、不安で仕方ありません。そんな今の私が心を許せる存在は、美咲さんと雪さんだけなのです。もう学生時代に偶々クラスが同じだった友人ではありません。生涯共にありたい、いて欲しいのです。そんな二人と家族になれるなら悪くないと思います。もちろん大和さんのことも好きです。二人以上に頼りになる存在だと思っています。ですが今は想いが一方通行で返ってこないことが分かっています。全部とは言いませんが一部でも私に想いを向けて、いただけませんか?」
「うっ、重い話から最後に急に可愛く小首を傾げるなんて、意外とあざとい。可愛くて思わず頷いちゃうところだったよ。」
「頷いて欲しいです。」
「まだ美咲さんから何も聞いていないからね。頷くことはできないよ。それに七菜さんは俺と付き合いたいのではなくて美咲さんや雪さんと家族に成りたいってことだよね。それぞれが家族を作って家族ぐるみの付き合いをした方がより幸せなんじゃないかな。」
「それでいいのかと問われましたのでそれでいい理由をお話ししましたが、前提にあるのは私が大和さんを好きだということです。異世界に連れてこられた直後の一番辛い時を大和さんに救われました。もう刷り込まれています。今更他の人を好きにはなれません。それに家族がおらず心の支えがない状態で、失恋するともう立ち直れません。」
「重い、重いよ。失恋したら立ち直れないって、もう脅しじゃない?」
「脅しでも構いません。好きです。私にも振り向いてください。私はそんなに魅力がありませんか?」
「うっ、聞き方が狡いよ。七菜さんには魅力があるさ。でもこの人と決めた人のために、どんなに魅力的な人がいても見えないふりをするのが誠実さでしょう。」
「ふふふっ。ごめんなさい。好きになった人しか見えないのではなくて、見えないふりをするのが誠実さですか。面白いと思ってしまいました。そうですね。大和さんは大変誠実だと思います。そんな大和さんがやっぱり好きです。」
「参ったな。七菜さんがこんなにグイグイ来るキャラだとは思わなかったよ。とりあえず俺は美咲さんと話をする。それまでこの話は棚上げね。」
「分かりました。それまでは私の想いを一方的に伝えるだけにします。」
それも対応に困るのだけど。とりあえず働きますか。




