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何だか不服そうな井家田さんを置いて真中さんの所へ向かった。【鳥瞰図】があるから迷わない。

真中さんは芋掘りをしていた。真中さんの【食物鑑定】で、地上部分を鑑定するだけで「地下茎が食べられる」とか分かるので便利だ。夕暮れまで一緒に作業した。




真中さんと一緒に拠点に戻ると、洞穴の前に切り出された木材が置かれていた。橋基君の【聖剣召喚】が大活躍したのだろう。

洞穴には誰もおらず、みんな佐藤さんの【ホームへの扉】の中に入っているようだ。俺たちも中に入ると、中は暗い雰囲気が漂っていた。



「「ただいま。」」


「「「おかえりなさい。」」」



いいね!「おかえりなさい」、いいと思う。特に佐藤さんの「おかえりなさい」はいいと思う。



「それで、何かあったの?」



暗い雰囲気が気になって尋ねると、佐藤さんが答えてくれた。



「井家田さんが塞ぎこんじゃってて、励ましても駄目みたいなの。」



井家田さんを見ると体育座りで泣いているようだ。



「井家田さんは食事は採ったのかな?」


「うん。」


「なら大丈夫でしょう。放っておいて俺たちも夕食にしよう。」


「いいのかなぁ。」


「大丈夫だよ。」



食事を採ったのなら生きる気持ちが湧いてきているはずだ。何を思って泣いているのかわからないが、自分で解決してもらうしかない。

夕飯を食べた。だが、暗い雰囲気であまり美味しく感じられなかった。残念だ。


今日からシャワーが浴びられるようになった。場所はトイレだ。新たに水道が設置され、佐藤さんがペットボトルを加工して作ったシャワーヘッドが取り付けられている。動作確認済みで、水圧は弱いが機能はするそうだ。この部屋は本来トイレなのだが、まだ佐藤さんが作成中の便座は完成しておらず床に廃棄口が空いているだけなので、そこに排水すれば良い。いずれは専用室が欲しいが、今の所はトイレとシャワー兼用で我慢だ。

タオルも石鹸も飯田さんの【創造スキル日用雑貨1】と【~2】で創ってくれた。

着替えは不足気味だが、俺用の迷彩服は創ってくれてあった。ありがとう。


低圧シャワーで体を流した。流れた水は真っ黒だった。俺は思いのほか汚れていた。久しぶりのシャワーでさっぱりしていい気分だ。

体を拭き、迷彩服に着替えて部屋を出ようとすると、扉の外には佐藤さんが待っていた。



「大和君。お願いがあるの。」



佐藤さんはそう言うと、俺が出ようとした部屋に入ってきて扉を閉めた。佐藤さんは緊張の面持ちだ。もしかして告白の返事か?



「我儘だとは思うけど大和君にしか出来ないからお願いします。湾藤君たちに水と食べ物を届けてあげて欲しいの。井家田さんの気持ちを考えると拠点には迎え入れられないけど、見殺しにしたくはないの。お願い。」



告白の返事では無かった。

しかしそう来たか。井家田さんだけ助けることには俺も違和感を感じていたが、俺は井家田さんも見捨てる方ばかり考えていた。だが佐藤さんは両方助けることを考えたのか。さすが佐藤さんだよ。



「実は俺も、井家田さんを助けて湾藤たちを見捨てることにモヤモヤしてたんだ。でも佐藤さんのお陰で解消だね。ありがとう。」


「頼んでもいいの?」


「もちろんだよ。」


「ありがとう!七菜ちゃんと雪ちゃんには話してあって、協力してくれているの。外に出て水と食べ物を用意してくれているから、外で受け取ってくれる?井家田さんには内緒にしたいんだけどいいかな?」



佐藤さんは井家田さんを傷つけまいとして内緒にしようとしているのだろう。俺も、井家田さんにバレると煩そうだから内緒にしたい。理由は違うが同じ思いだ。



「そうだね。内緒にした方がいいね。それじゃあ俺はこのまま外に行くよ。聞かれたらシャワーで体が熱くなったから涼みに出たとでも言っておいて。」


「うん。大和君なら大丈夫だと思うけど、気を付けてね。」



俺も、俺は大丈夫だと思う。デメリットスキルを組み合わせて単独なら無敵に近いと自負している。佐藤さんたちが狙われた時の方が怖い。


トイレ兼シャワー室を出てそのまま外に出ると、洞穴の中で飯田さんが火を見つめていた。飯田さんは俺の姿に気付くと声をかけてきた。



「大和さん。行くのですね。」


「うん。飯田さんは納得済み?」


「はい。むしろ積極的に協力しています。正直なところ井家田さんの態度に苛立ちを感じていまして、相対的に湾藤さんたちに対する嫌悪感が和らいでいます。美咲さんの両方助けるという考えには共感しました。」


「俺も同じかな。でも俺は佐藤さんに言われるまで両方見捨てることを考えていたけどね。」


「実は私もです。私たちは似た者同士ですね。」



そう言うと飯田さんは自嘲するように笑った。話はこれで終わりのようだ。飯田さんからペットボトルと芋を平たくして焼いた物を受け取ると、洞窟を出た。


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