表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/179

25

「それじゃあ今後はみんなで協力するとして、まずは。戸田君。食事取れてる?」


「見たことが無い植物しか無くて食べてないよ。野草の知識とかあっても異世界じゃあどうしようもないね。下手に毒草とかの知識があるせいで適当に食べるのを躊躇しちゃうし。」


「それなら真中さんが【食物鑑定】というスキルを持っていて、食べられるか調べられるんだ。俺たちはある程度の食べ物を確保してあるから取りあえず食事にしようか。」


「いいのかい?」


「食べられる時に食べておかないとね。みんなで食事にしよう。佐藤さん。【ホームへの扉】を出して貰っていい?」


「もちろん!」




佐藤さんが【ホームへの扉】を開いた。知らなかったメンバーはホームに興味深々なようであれこれ聞いてくる。面倒なのでホームの説明は佐藤さんに任せて、中に仕舞っていた薪や肉を取り出して焼く準備を始めた。

飯田さんが戸田君に【創造スキル】でペットボトルの水を出してあげていた。【創造スキル】の説明も飯田さんに任せる。

俺は薪にライターで火を点ける。戸田君は昨晩火起こしに挑戦して挫折したそうで、文明の利器は便利だとしきりに言っていた。





ガスコンロだとかの文明の利器が無いと食事の準備も時間が掛かる。みんなで食事を終えた頃にはあたりはすっかり暗くなっていた。



「暗くなってきたし今日の所はもう休もう。それで明日からなんだけど、佐藤さんの【ホームへの扉】は機能拡張のためにここでMP回復に専念してもらって、他の人で探索してはどうかと思うけど、どうかな?」


「私だけ安全なところで休んでいるだけっていうのは気がひけるなぁ。」


「もちろん永久にってことではなく、取り急ぎ必要な設備が揃うまでだけでも。それから一人というわけじゃなくて、飯田さんの【創造スキル】もMPが必要だから一緒にホームに籠って貰いたいと思っている。あとはソフィアさんの【創薬スキル】も今日集めた素材で明日は研究をしてもらいたいかな。」



トントンと肩を叩かれた。振り向くと真中さんが自分を指差していた。



「真中さんは【食物鑑定】を持っているから俺と一緒に探索。」


「モンスター怖い。」


「俺が守るから安心して。」


「驚愕。キュン台詞に全くキュンとこない。」


「はははっ。※ただしイケメンに限るって奴だね。」


「はっ!?美咲が落ちないのは顔のせい?」


「違うからね!!」



真中さんと戯れていると佐藤さんが突っ込んできた。顔じゃないとすると何が問題なのだろう。既に佐藤さんにも「俺が君を守る」的なことを言った気がする。キュンと来なかったのだろうか。いや、嬉しいとは言われた気がする。



「大和君も、顔とか関係ないからね。ただ急だったから戸惑っただけだから。」


「ああ、うん。気にしてないよ。冗談はさておき、三人は明日はホームで待機。俺と真中さんは森の探索でいいかな?」


「僕はどうしたらいいかな?」



戸田君が聞いてきた。



「正直言うと、好きにしていいよって思ってる。戸田君は飯田さんと同系列のスキルだから明日はMP回復と物資創造に専念するというのもありだと思う。その場合はみんなの護衛を兼ねてもらう。でも戦闘系スキルとも言えるから探索してもいい。ただ、緊急時には俺は真中さんを優先するから自己責任で。」


「それなら探索したいな。もちろん守って貰うつもりは無いよ。自分の身は自分で守るし、大和君たちとは別行動でいい。」


「それじゃあそうしようか。俺たちは転移で帰ることができるからなるべく遠くを探索するよ。戸田君は近場を中心にお願いしたい。」


「分かった。」




戸田君との話が済むと次は甘野さん達だ。



「私もか弱い女子だからホームで待っていていい?」


「働かないとそのうち追い出されることを覚悟してのことなら良いよ。」


「ひどい!佐藤さんたちも同じでしょう?」


「佐藤さんと飯田さんには拠点や物資を調達するだけの道具のような扱いをしてしまって申し訳ないと思っているけど、当面はそれが一番効率的だから我慢して貰うんだ。ただ休んでもらうのとは違うよ。」


「私はホームに軟禁でもいいよ?」


「ゴブ吉と橋基君に指示するだけでも良いからさ。拠点の整備でも何でもいいから働いてよ。洞穴の中の掃除とか、周辺で薪拾いとか。」


「それならやるよ!!ありがとう!」


「橋基君もそれでいいかな?」


「・・・。」



そうだった。甘野さんの指示で黙るように言われているんだった。



「うーん。甘野さん。せめて喋るくらいはさせてあげても良いんじゃないかな?」


「こいつ、口開くとろくなこと言わないよ。」



哀れ。【聖剣召喚】スキルなんて勇者っぽいスキルを持っているのに散々な言われよう。一体二人の間にどんなことがあったのだろう。



「とりあえず今だけでも意思確認したいからお願い。」


「分かった。橋基君、喋っていいよ。」


「このクソブス!早く【強制使役】を解きやがれ!!」


「黙れ!!・・・。ね?」



マジかー。橋基君、頭がおかしくなっちゃったのかな。

はっ、もしや、聖剣の精神侵食?もしそうなら聖剣の定義が揺らぐ。魔剣と呼ぶ方が相応しいのではないだろうか。

橋基君とは教室でもあまり話したことなかったし、これで通常通りの可能性もある。あるいは、今は【強制支配】されていることで不満が溜まり暴言を吐いているだけで、ちゃんと話せばわかって貰えるかもしれない。


ゆっくり丁寧に、子供に諭す様に話しかけてみよう。



「橋基君。非協力的な態度を取っていると何時までも信頼が得られず、扱いが悪くなっていってしまうよ。俺たちは同じ教室で一緒に学んできた仲間なんだから、信頼できればそれなりの対応もするからさ。協力してくれないか?」



橋基君は俺の話を聞いて頷いてくれた。大丈夫かな?



「甘野さん。もう一回お願い。」


「橋基君、喋っていいよ。」


「甘野のことはムカついているけど、大和たちには悪気はないんだ。俺なら戦闘になれば甘野より役に立つぞ。こいつを殺して俺を助けてくれないか?」



冷静に話しても駄目だった。冷静に甘野さんを殺せと言ってくるとは。



「マジで聖剣じゃなくて魔剣なんじゃないかな?精神侵食されてない?人を殺してまで橋基君を助けるわけないでしょう。」


「冷静に考えろよ。人間をスキルで使役する奴より俺の方がまともだって。」


「冷静にみて、武器が出せるだけの橋基君よりも、モンスターを使役できる甘野さんの方が俺にとってはありがたいんだよね。橋基君は甘野さんと折り合いをつけてくれ。俺はどちらの肩も持たないのが最大の譲歩だ。」


「おい大和!頼むよ!」



もういいや。甘野さんをチラリと見る。甘野さんが頷いた。



「ケダモノ。黙れ。」


「チッ!」



舌打ちだけして橋基君は沈黙した。

どうしたのだろうか。通常の精神状態とは思えない。でもステータスの状態異常には【使役】しか出てなかったんだよな。分かったのは、これ以上関わり合いたくないということだけだ。



「よし。甘野さん。後は任せた。」


「いーやーだー。大和君助けてよ!」


「俺には無理だった。使役者である甘野さん自身でしっかり向き合ってあげてくれ。」


「うぅ。本当はもうどっかに行って欲しいんだけど、解放すると襲ってきそうだし、飼い慣らすしかないよね。」



二人の事には俺はもう関わらない。

任せよう。



「気を取り直して、大まかな役割分担は以上かな。みんな、明日からよろしく。もう暗いから、寝床を準備しよう。」





佐藤さんのホームの廊下は空調があるので快適な温度に保たれている。外で寝るよりは圧倒的に快適だ。更に飯田さんに【創造スキル寝具】でマットレスを追加で創ってもらえたので昨日よりも圧倒的に快適だ。但しまだ数が足りない。男女に分かれて、男は一つのマットレスを三人で使っている。シングルベッドサイズのマットレスを横に使い、上半身だけを乗せて寝る。狭い。




「何だか修学旅行みたいだね。」



暢気だな。戸田君。俺は精神的に疲れていて返事をする気力がない。



「あれ?もう寝ちゃった?」



そうだね。大和はもう寝たよ。おやすみ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ