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飯田さんと二人きりでの冒険が始まった。

クラスメイトだがまともに話したことのない女子と二人っきり。正直言って、気まずい。



・・・。

「やはり舗装されていない道は歩き辛いですね。靴を変えておいて良かったです。」

「そうだね。」


・・・。

「下草を払う道具が欲しいですね。適当な棒でも拾って使いますか。」

「俺は棍棒があるから大丈夫だけど、良さげな棒を見つけたら言うよ。」


・・・。

「虫が多いですね。今は我慢しますが、将来的に虫除けが欲しいですね。」

「確かに。」


・・・。

「手を着いたりすることが結構ありますね。このままでは手を怪我しそうです。手袋を作りましょうか。」

「お願いします。」


・・・。

うーん。何だか思い描いていた冒険と違う。モンスターとの戦いより先に、気まずさと自然の厳しさとの戦いだった。特に自然はかなり手強い。進行速度がかなり遅い。これは長い戦いになりそうだぞ。既に飽きてきた。



「もしかして疲れていますか?休憩しましょうか。」



飯田さんの心遣いが痛い。単に飽きてきただけとは言えない。



「大丈夫。むしろ、走ったりしたいくらい。」


「焦って体力を使ってしまうと危険ですよ。慎重にいきましょう。」


「そうだね。まだ疲れてないってだけで、走ったりしないよ。」


「なら良かったです。」



・・・。

「あれは、赤い、キツネ?」



きたー!!モンスター!!俺たちを見つけると走って襲い掛かってくる。ちょっと問題ある色をしているけど、モンスターですよ!おっと、喜んではいけない。気を引き締めていかないと。



「俺に任せて!」

「【マーキング】、20番。」

「【ロックオン】、20番。」

「【自滅スキル発動】。」

「よっしゃ、突撃しまっす!」



瞬殺。弱ったキツネ(赤い)を棍棒でぶん殴り殺した。



「なるほど。大和さんは言っていた通り強いのですね。」


「【自滅】スキルだよりだけどね。」


「頼もしい限りでしたよ。」


「俺はもう少し楽しみたかったけど。おっと、失言。」


「やはり男の子は戦ったりするのが好きなのですね。」


「いや、そうでもないよ。ただちょっと自然との戦いに嫌気がさしていただけで。」


「確かに辛いですものね。ところでどうしましょう。その赤い、キツネは持っていきますか?食べるなら血抜きとか必要でしょうか?」


「モンスターって食べられるのかな。持って帰ってみようか。道具が無いし血抜きは難しいけど。」


「そうですね。やり方も分かりませんし、血抜きは諦めてそのまま持っていきましょう。」


「OK。俺が持つよ。」


「すみません。お願いします。」



俺たちはキツネを持って再び歩きだした。



「それにしてもなぜそのキツネはそんな目立つ色をしているのでしょうか。森で生活する上で損しかないと思うのですが。」


「モンスターに理由を求めても無駄かもしれないよ。キャラデザ同じで色だけ変えて別のモンスターとかよくあるから。」


「それってゲームの話ですよね。」


「まあね。でも、スキルとかボーナスポイントとか、自然発生的な物とは思えないから、この世界は誰かがデザインして作った世界だと思うんだ。例えばあの悪魔とか。そういった誰かが作った世界で生物もデザインされた物だとしたら、ゲームと同じかもしれないよね。」


「なるほど。確かにそうですね。大和さんは面白い発想をしますね。」


「そうかな?」


「ええ。」



その後は再び時々話したりしながら探索を続けた。



途中で飯田さんの様子がおかしいことに気付いた。あれは、トイレだな。そういえば俺もそろそろ出しておきたいな。



「飯田さん。ちょっと休憩していい?トイレに行きたい。」


「分かりました。休憩しましょう。私も済ませておきたいので交替でよろしいですか?」


「もちろん。良かったらお先にどうぞ。絶対見ないから安心して。」


「信用しています。」



飯田さんは少し離れた繁みに身を隠した。俺はそちらを見ないようにする。次は自分の番だし、変な気は起こさない。そういえば佐藤さんたちはトイレ大丈夫だろうか。まだ部屋も解放できていないし、トイレは外に出ないと出来ないよな。大丈夫かな。女の子同士だし交替で見張ったりして対応できているといいな。



「終わりました。」



考えているうちに飯田さんが戻ってきた。



「それじゃあ俺も、失礼して。」



飯田さんがしたのとは反対方向に離れる。男は立ってできるから楽だ。これも自然との戦いの一つだな。



「待たせてごめんね。」


「いえ。お互い様ですから。」


「そういえば今は何時くらいなんだろう。お腹も空いたし喉も乾くよね。」


「ええ。ですがそれは美咲さんや雪さんも同じでしょう。待たせているかもしれないのでそろそろ戻りましょうか。」


「了解。結局この二人だけの探索は何だったの?」


「気になりますか?」


「そりゃあね。」


「失礼を承知で言いますが、法もなく大人が守ってくれない状況ですので、男性を警戒するよう二人に言いました。ですが二人とも大和さんのことは信用できると言っていました。私も二人がそういうのであれば大丈夫だろうと思いましたが、念のため二人っきりで行動しながら大和さんを観察していました。」


「男性を警戒しているのに二人っきりになるなんて矛盾してないかな?」


「美咲さんに告白したということでしたので私には何もしてこないだろうと思っていましたし、最悪、自分が犠牲になろうと思っていました。」


「犠牲って、それは良くないと思うよ。」


「大和さんは大丈夫だとは思っていたのもあるのですよ。最後の確認のためです。」


「それで俺は信用できそうかな?」


「一つだけ質問させてください。こんな環境での子作りについてどう考えていますか?」


「突っ込んだ質問だね。現状では子作りなんてあり得ない。男はいいけど、相手の女性を殺すような行為だと思う。妊娠中の不自由さ、出産の危険性、産めたとしても育てる環境もない。現状では絶対に無理だよ。俺は人殺しになる気はないよ。」


「分かりました。大和さんを信用します。」




話はそこで終わりとなった。飯田さんが何を思ってその質問をして、俺の回答を聞いてどう思ったのかは分からない。だが、悪い回答をしたとは思っていないし、信用すると言ってくれたので大丈夫だと思う。


再び森を進んでいく。

帰りは何故か多くのモンスターと遭遇した。


ピンクの蛇が出た。倒した。気持ち悪いから捨てていこうと思ったが、飯田さんが持っていくと言うので棍棒に巻きつけてもっていくことにした。


体が50cmくらいある巨大な蜘蛛がいた。倒した。さすがに持っていかないと意見が一致した。


嘴が鋭く尖った鳥の強襲を受けた。刺さったところから少しだけ血が出た。でも直ぐに【マーキング】~【自滅】コンボで倒した。小さかったので飯田さんに持ってもらった。


頭に角の生えたカエルがいた。近付かれる前に【自滅】させて止めを刺さずに放置した。




そして。扉が見える距離まで戻ってきた。


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