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祝!ダンジョン初潜入!(でも嬉しくない)

お待たせ致しております。

突然の高熱に二日間うなされたあとに書いたものですので、多少おかしいところがあるかもしれません。

不本意ながら、「大事なもの・タエコ」として初潜入を果たしてしまった、みんなが「遺跡」と呼ぶ建物は、とってもとっても見覚えのある建物だった。


真っ直ぐに伸びる廊下に、片方は窓が、もう一方にスライド式の扉が等間隔を開けて並んでいる。木製の扉を開けばどこも広い部屋で、奥の壁は窓が一の字に並んでいる。扉から見て左右の壁には深緑の板がかかっていた。


部屋の中にはなにもないし、スリッパじゃないからキュキュッと足音がしたりしないんだけど、これってやっぱり、学校なんじゃ……。


実は、外観を見たときから、あれ?って思ってたんですよね。

いやでも、ホラーゲームかってくらいに朽ち果ててたし、若干傾いて、三分の二くらいは地中深くに沈んでたんですよ。しかも極め付けは、教室の窓から侵入してたしね。

というかそもそも、ここ異世界だよね?

異世界に自分たちの世界の学校があるとか思わないって。


え?もしかして、異世界トリップかと思っていたけど、実はめっちゃ遠い未来へタイムスリップしてたとか?


おいおい、人類よ。

なぜお前たちは進化の過程で科学を捨てたんだ。


あれかな?魔法の力を得る代償として、科学という概念が消えたとか?

たしかに魔法には憧れるけどさ、テレビや洗濯機の方がはるかに実用的で便利だと思う。

攻撃魔法とか、別に銃とかでよくね?

手榴弾とか、ファイラくらいの威力あると思う。

ブリザドは凍結スプレーで、サンダーはスタンガン。


それよりなにより車が恋しい。

移動手段とかさぁ、馬車とか退化してるじゃん!!

人類は宇宙にまで手を伸ばしていたというのにっ!!!


衝撃的すぎる現実(まだ仮定だけれども)を前に、ここで暮らしていけるのだろうかと不安を感じていると、ふと、階段の裏らしき場所にたどり着く。


こういう場所って、アレがあったりするんだよなぁ、と思いながら唯一動かせる首を巡らせると、目的のものを発見。


「デュオさん、ストップ!ストップしてください!!」


私が声を上げると、デュオさんだけじゃなく全員が立ち止まってくれた。


「何ですか、タエコさん。持ち物であるあなたに発言権なんてないんですよ」

「やっぱりただの持ち物かよ!って、違う!そうじゃなくて!!ちょっと気になる箇所があって、調べたいからこの縄外してもらえますか?」


どうする?とばかりにヒイロさんたちは顔を見あわせる。


「こんな真っ暗闇の中、一人で逃げたりしませんよ!!屍人とか出てきそうじゃないですか!私には視界ジャックも神代の血もないんでお仲間にされて終了です!!」


電気がないうえ建物自体が地中に埋まってるから真っ暗なんですよ。

セイラさんとラグロさんが魔法で光の玉を出して辺りをぼんやりと照らしてくれるんですけど、光の向こうは真っ暗で何にも見えない。

リアルホラーゲームですよ……。


「よって自由になったところでデュオさんにしがみついて離れない自信があるのであります!!」


身体を動かせないので心の中だけでビシッと敬礼しながら宣言すると、なにやらデュオさんが「離れないなんて、タエコちゃんってば積極的……」ともじもじしだした。

全く意味がわからないのでとりあえずスルーします!


「何を言っているのか理解できませんが、とりあえず、あなたがひとりで動けないというのだけはわかりました。まぁ、ひとりで逃げたところで、モンスターに襲われて終わりでしょうがね」

「……え?モンスターいるんですか?」


いや、いるとはおもいましたけど、まさか屍人的な!?


「いますよ。普段はうっとうしいくらいにわんさか湧いてくるんですがね。今回はなぜだか、滅多に姿を現さなくて……そのせいで依頼された妖精の羽も集まらなかったんですよ」

「そのおかげで誘拐されたタエコを保護できたんだがな」

「そういえば、あの依頼はどうするの?タエコさんを誘拐しようと出された依頼のようだし、このまま途中放棄したほうがいいかしら?」

「いや。そうすればパーティの経歴に傷がつくからな。多少の傷は仕方がないが、こんなくだらない理由で傷がつくのは許せない。報酬はさきにギルドが預かっているはずだから、タエコを連れて探検する間にモンスターを倒して妖精の羽も集めよう」


なんだかよくわからないけど、モンスターのドロップアイテムが妖精の羽ってことかな?

となると、屍人じゃないよね。屍人が落とすのは金属バットかバールぐらいだもん。


リアルホラーゲームいらない!!


ぐるぐる考える私をよそに、ヒイロさんたちは私を拘束する縄を解いた。

晴れて自由の身になった私は、諸手をあげて喜びを表し、その後ストレッチをかねて屈伸してから、発見した例のアレへと近づいていく。


さてさて、皆さん想像してみてください。

学校の一階階段裏にあるもので、真っ暗闇のこの状況をもしかしたら改善してくれるかもしれないもの、な〜んだ?


「テッテレー、ぶれーかー」


青い猫風に言ってみたけどそれを理解してくれる人は周りにいなかった。

視線が痛いけど、多恵子ちゃんは過去を振り返らないんだいっ。


「ぶれーかーとは、一体なんですか?」

「建物全体の電気をつけるものです。といっても、これだけの廃墟に電気が通っているのかはなはだ疑問ですけどね。まぁ、ものは試しです」


「でんき?」と首をかしげるヒイロさんたちを無視して作業を開始する。

電気がなんぞやなんて高度な知識は持ち合わせていない。電気は電気だよ!という世代です。

ブレーカーのふたを開けるため、ボタンを押してはめ込み式のノブを引っ張り出す。

背後で「そんなところにボタンが!?」と驚く声がきこえたけど、無視。

ノブを引っ張ってふたをあけてブレーカースイッチを見てみると、残念ながらどれもオンになっていた。

やっぱり電気通ってませんよねー、とがっかりしていると、端っこに他より大きいスイッチを発見。

それが唯一、オフになっていた。


「まさかまさか……」


期待に胸を躍らせながらスイッチをオンにしてみると、バチンッと大きな音がして、少しの間を空けてから、ぱっと明かりがついた。

久しぶりに見る蛍光灯の光は目に痛いくらい明るくて、白く染まった視界が色を取り戻すまでしばらく時間がかかった。


やっと機能するようになった私の目が最初に映したのは、私よりさきに視力が回復していたらしいヒイロさんたちの驚く顔だった。


「これは、どんな魔法だ?」

「建物全体を照らすなんてそんな大規模な魔法……私は聞いたことがありません」

「私もです。神殿の聖魔法の資料に、そんな記述はありませんでした」

「タエコちゃん、いったい何をしたの?」

「ただ単にスイッチ入れただけです。これは、私の世界で光を作り出す装置です。で、これはその起動スイッチ」


多分に嘘が含まれているけど、だいたい間違っていないはず。


「では、この遺跡はタエコさんの世界と関係があると?」

「そこが微妙なんですよね。皆さんが遺跡って呼んでいるこの建物、たぶん私の世界にある学校だと思うんですよ。あ、学校が何かとか面倒くさいんで聞かないでくださいね。ようするに、私の世界にいくつもある、なんの変哲も無い普通の建造物だということです」


先手を打って学校に関する質問を拒否すると、口を開きかけていたヒイロさんは渋い顔をして唸っていた。


「ただですね、私の世界に当たり前に存在していたものとよく似ているからといって、それが私の世界のものか、と言われるとわかりません。だって、この世界と私の世界の関係性がわからないんですもん」


まったく別の世界かもしれないし、平行世界とかかもしれないし、やっぱり遠い未来なのかもしれない。

でもそれらのどれかが正解だという根拠はまったく無いんですよねぇ。


ここが遠い未来だとしたら、私の家族はもうみんな死んでるってことになるのか。

家族が、死んで……死ぬ?



誰が、死んでるの?



カサカサカサ、というなにかが動く音が聞こえ、私ははっと我に返る。


「久しぶりのお出ましですね」

「まさかお前たちに会いたいと思う時が訪れるとは思わなかった。妖精の羽、むしり取らせてもらうぞ!」

「セイラちゃん、タエコちゃんをよろしく」

「はい。みなさん、頑張ってください!」


ヒイロさんたちはそれぞれ武器を構えて私たちを背にかばうように立つ。セイラさんは私のすぐそばに来て、安心させるように背中に手を添えてくれた。


みんなが見つめる先、廊下から現れたモンスターを見た私はーー




「ぎぃやあああああああああっ!!!!」




色気もなにもない叫び声をあげたのだった。

真紘はホラーゲームが大っ嫌いですが、怖いもの見たさでいろいろ調べたり見たりする派です。

その後しばらく怖さを引きずる迷惑な奴です。

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