第40話 会いに
靴の紐を結び直してから、リタは籠を持った。
祖母が戸の前で、新しい赤を肩へ掛けてくれた。端の一列は少し曲がっている。そこを直すには長くほどかないといけなかったので、そのままにした。
「何をしに行くの?」
リタは籠を覗いた。
新しいリンゴが、布の上に並んでいた。
「会いに」
祖母は頷き、戸を開けた。
*
根のそばへ来ると、リタは籠をいったん下ろした。
古い赤と、添えた新しい糸が残っている。道は根の裏へ続いていた。
低い枝に肩を擦り、日本の地面へ足を置く。
遥が待っていた。
差し出された左手を取り、もう片方の靴を出した。籠が傾き、紬が横から支えた。
「重い」
紬が言った。
「リンゴだから」
「前もそうだった?」
「前は、もう少し」
路地に立ってから、リタは顔を上げた。
灰色の壁の間に空がある。
叔母が袋を覗き、家へ行こうと言った。
*
叔母は先に帰って湯を沸かすことになった。
三人で少し遅れて歩いた。紬の寄りたい店は、通りの向こうにあった。
「リンゴを置いてから」
リタが言うと、紬は籠の中をまた見た。
「先に食べる?」
「食べてもいいけど」
「じゃあ、食べてから」
遥は新しい布を見ていた。リタが曲がった所を手で隠すと、顔を上げた。
「自分で?」
「うん。ここも」
隠していた所を見せた。
遥は触っていいかと聞いた。頷くと、縫い目を指でなぞった。
*
家の戸を二度叩いた。
湯の沸く音がする。少し待つと、叔母が開けてくれた。
リタは靴を脱いだ。紐をほどくのにも、前ほど時間はかからなかった。
食卓へ籠を置く。
「おばあさんから、よろしくって。ありがとう、も」
「こちらこそ」
叔母が一つ受け取り、重さを見るように掌で転がした。
紬が椅子を引いてきた。遥は湯のみを並べている。
リタも皿を一枚受け取り、自分の前へ置いた。
「おかえり」
遥が言った。
「ただいま」
答えてから、リタは少し笑った。
「遊びに来ました」
紬が笑い、遥も笑った。
叔母が包丁を取りに行く。紬は皿を二枚、余分に出した。
「それ、何人分?」
「おかわり」
リタは一枚を受け取った。遥が向かいへ座り、最初のリンゴを四つに切った。




