第九話「三人と猫対竜」
洞窟の中なのに太陽の光が降り注ぐ洞窟の最深部で俺達は竜と対峙していた。
「貴様、今何と言った?」
目の前の黒い鱗に覆われた竜が怒りを隠そうともせずに言い放つ。
「俺達と戦い、俺達が勝てばこの洞窟から出て行けと言ったんだ」
竜は大きい、と言うよりも巨大な身体を震わせながら言う。
「三人と一匹の子猫で我に勝てると思っているのか?」
レンが服の中に居るのに気付いていたようだ。
「やってみなければわからん事もある。
それとも、人間如きに負けるのが怖いか?」
竜は翼を大きく広げる。
「よかろう。そこまで言うならば戦ってやろう。だが、死んでも文句は言うでないぞ」
「当然」
竜は俺の返答を聞き終えると部屋の上にある大きな穴から飛び出していった。
ゴブリン達に竜が竜が飛び出して行った場所に案内してもらい、竜と対峙する。
「行くぞ!」
竜が声と共に強靭な四本の足で地を踏みしめて駆け寄ってくる。
俺はそれを見ながら冷静に居合いの構えをとる。
「はぁ!」
竜が間合いに入ると同時に一歩前に飛び、刀を抜く。
「甘い!」
横の一閃を竜は空に飛び上がり避ける。
「ギル!」
「わかってる! 銃を構成、『M2重機関銃』」
ギルが叫ぶとその手に重機関銃が現れる。
現れた重機関銃を空に飛んだ竜に向かい、ギルが引き金を引く。
「その程度の威力とは笑止!」
上空に飛んだ竜に重機関銃の弾が当たるが竜は避けずに吼える。
「其の程度の力量で竜に挑んだ浅はかさを呪え!」
竜の口が大きく開けられる。
「させません」
開けられた竜の口に黒い光が集まり始めると同時にマリーがナイフを投げる。
「がっ!」
投げられたナイフが竜の口の中に入り、竜が口を閉じる。
俺の服から飛び出したレンが人の姿に変わり、右手を竜に向ける。
「『大気に散りし火を炎に変えよ』」
言葉と共にレンの右手に炎が集まる。
「発射」
レンの右手に集まっていた炎が竜に向けて飛んでいく。
「子猫が! 魔法を扱えるからと調子に乗るな!」
竜が翼を一度振ると、レンの生み出した炎は掻き消える。
「風と火は魔界の力。
我は黒竜、魔界の力を借りて使う魔法では永久に傷つけられぬぞ!」
レンは左手を構える。
「『大気に散りし水をこの手に、形状は槍。数は十』」
レンの周りに水か集まり、集まった水が槍の形になる。
「ほう、子猫が侮ったわ。
黒魔法だけでなく、白魔法も使えるか」
それを見た竜が上空から言う。
「面白い、撃ってみよ」
「言われなくても、発射」
竜が笑みを浮かべながら言い、水の槍が竜に向かい放たれる。
「惜しいな。
我がもし、唯の黒竜であったならこの魔法は有効だろう」
竜の鱗が黒から白に変わる。
「しかし、我は白竜でもあるのだ。
残念だったな子猫よ。
貴様はこの戦いで足手まといでしかない」
水の槍は竜の鱗に当たると同時に唯の水に戻る。
「レン」
其の様子を呆然と見ているレンに呼びかける。
「お前は回復魔法ってヤツが使えるんだ。
誰かが負傷した時の為に後ろにいろ」
レンは一瞬だけどう答えるか迷ったようだが、頷く。
「わかった。
ご主人様とギル、マリーが傷ついても大丈夫なようにしておく。
後、ご主人様………」
「おう」
小声である言葉を教えてくれたレンの頭を撫でながら竜を睨みつける。
「ふん、最初の一太刀から戦いに参加していない者が偉そうに」
「空に飛ばれると俺は何も出来なくてね」
「言い訳か」
「さあ?」
居合いの構えをもう一度とる。
「主従契約って便利だな」
小声で呟く。
「俺は本来、魔法が使えない筈なのにこんな事ができるんだから」
先程、レンに教えてもらった通りに言葉を発する。
「『風よ刃に集い離れし敵を切刻め』」
刀を神速の速さで抜き、竜に目掛けて刀を振る。
「魔法使いの真似事か?
仮に成功したとしても我を傷つける事は出来ぬぞ」
竜の身体を包む鱗が白から黒に変わる。
「『水よ刀を包み刀身を伸ばせ』」
竜の全身が黒に変わると同時に水で刀を伸ばして斬り付ける。
「ッ! 黒魔法と白魔法の同時行使か!
流石は龍神の預言にでし者だ! 恐らく初めてであろう魔法を同時に使うか!」
竜の身体を風の刃が切刻もうとするが、全て竜の黒き鱗に弾かれる。
風の刃を全て防ぎきると同時に竜の身体が黒から白に変化する。
「残念だったな」
白く変化した鱗に水の刃は弾かれ、竜は悠然と言うが。
「残念なのはお前だよ。地に落ちろ」
ギルが上空に向かって再度、銃を放つ。
先程生み出した重機関銃では傷つかなかった竜の鱗を突き破り、竜の右翼に小さな穴をつくる。
「小娘が!」
竜の高度が少し下がると同時に竜の左翼に何本ものナイフが刺さる。
「私の存在をお忘れでしたか?」
両方の翼にダメージを受けた竜の高度が一気に下がり、竜は地に下りる。
「人如きが調子に乗るな!」
地に下りた竜に止めを刺そうとし、近付こうとした瞬間に竜が黒と白の光りに包まれた。
それと同時に物凄い風圧を俺は受けた。




