第十二話「主従契約二回目」
人に負けた。
竜の姿で放ったブレスは斬り裂かれ、里の仲間を傷つけた忌まわしい力も通じなかった。
人の身で挑めば、顔に一筋の傷を付けられた。
しかも、手加減されていなければ首が飛んでいた。
「馬鹿な」
自分の顔に走る熱を感じながら呆然と呟く。
「御主は本当に人か?」
呟いた言葉に答えが返ってくる。
「さあ? 一度死んでるから、人じゃないかもしれないが、自分では人だと思ってる」
呟きに答えた人が居るほうを見る。
其処には、黒目黒髪の人の中でも東の大陸に住まう者の姿をした人の男が立っていた。
「嘘を吐くな! 時に干渉するのは神と同等以上の格が必要なのだぞ!」
男は私の叫びに冷静に答える。
「そうなのか? 俺は『神殺し』とか言うのが関係してるだけで、自分は人だと思うが」
其の答えは自分を絶句させるには十分だった。
『神を殺す人。
其の者は時に干渉し、時を操る。
我ら竜人族は、選ばねばならない。
時を操る神を殺す人と戦うか、それとも神々と戦うかを』
竜人族に昔から伝わる言葉を思い出す。
『御主は、神を殺す人に出会う。
その人は、人の身を超えた身体を持っているだろう。
如何するかは、御主が決めよ。
供に歩むも、殺すも御主が決めよ』
竜の里を出る時に授かった預言を思い出す。
「御主、名は?」
もう、戦う気が無いのだろう男は刀を仕舞いながら答える。
「富士・遼太」
(富士、不死か)
名前の苗字の意味する事を考えながら、その場に剣を突き刺し、富士に近付く。
「我が名は、『シク』。
この時より、我が主の刃に翼に盾になる事を誓う」
富士、否、主は驚いたようだが何もしない。
主に抱きつき、左肩に噛み付く。
噛み付いた箇所から、血が出てくる。
その血を舐めた瞬間、身体に電撃が走った。
(まずい、これは癖になる)
身体が言い表せない幸福に包まれる。
「今をもって我は主の刃で翼で盾じゃ。
何なりと命令を」
主の前で片膝をついて頭を下げる。
我は神々と戦う決意をした。




