寛治、火のないところに煙を立てられて。
今回でこの物語も(およそ)三分の一が終わります。
これから中盤です。
こんなことは書くべきではないのかもしれませんが、
ひとつのいいねも感想も評価ポイントも、
いまだに貰えていないので、「私の小説はそんなにつまんないのかなあ」と
自信喪失気味です。
小説を投稿してる人は、どんな努力をしてポイントを得ているのか、
教えていただけたら嬉しいです。答えは、面白い小説を書く、のみでしょうか?
愚痴みたいなことを言ってすみません。
では、どうぞ。
その日、だいちゃんが教室におらを迎えに来て、三津男君たちが教室を出る前に急いで帰った。
空にはどんよりとした雲の合間に、青い部分も見えた。
黒い雲はすぐに消える。
おらとだいちゃんが歩いていると、向こうから大人がふたり、歩いてきた。
近づいて、村の知った顔だとわかった。
こんにちはと挨拶をすると、こんにちは、と返ってきたのだけど、その表情には下心があるように見受けられた。
でもおらにだって、
「今の挨拶には下心があるように思えたんですけど」
なんて言っちゃいけないってことくらいわかる。
おらが頻繁に会う大人は、家族と学校の先生以外では、豊穣祭りの踊りを教えに来てくれる神主さんくらいなものだ。
そりゃあ村の人たちだったら大人でも顔を見知った仲ではあるけど、大人と子ども、そんなに深い仲になるわけもない。
十分に離れてから、おらは小声でだいちゃんに言った。
「なあ、今の人ら、なんか変だったな。おらの顔見て、顔は笑っているようで、笑ってなかったと思うんだけど、だいちゃんはどう思う?」
だいちゃんは眉根を寄せていた。
おらは返事を待った。
三十歩くらい歩いてから、だいちゃんは答えた。
「あのなあ、かんちゃん。おら、聞いちまっただ。かんちゃんがしろへび様に助けられてしろへび様の話をするようになってから、人がいっぱい近くの町とかから足運んで話聞きに来るようになったべ。そのときにお菓子とか、お金とか、もらうべ」
「……うん」
「最近は、肉とか野菜とか、持ってくるようにならなかったげ?」
「……、なった。なんで知ってんの?」
「あのなあ、それ、かんちゃんのおっ父が、町で『おらの子どものしろへび様の使いの話を聞きたかったら、お菓子でも子どもにやるお駄賃でもねえ、もっと高価なもの持ってこい』って言ったからだって、噂になってんだよ。やっぱ知らなかったのげ」
「そんな嘘、誰が言ったの?」
おらは頭にきた。
「怒んねえで聞いてくいよ。おらもそんな嘘信じてねえ。聞いた話なんだ」
「いつ聞いたの? 誰が言ってたの?」
おらは食って掛かった。
「おらが家族で、雪になる前にって町に出たときに団子屋に寄ったら、そんな話してる人がいただ。もちろん、おっ父が怒って、そんな話は嘘だって、そんなこと言うはずねえって、みんなに聞こえる大声で言っただ。豊兄ちゃんが止めに入んなかったら、殴りかかる勢いだっただよ」
「そうげ。そんな噂言う人がいたのげ」
おらは腸が煮えくり返る思いだった。
「でもそんなのまったくのでたらめだ。第一、おっ父が町に行ったときは、おらも一緒だった。ずっと一緒にいただ。そんな、もっと高価なもの持ってこいだなんて、言ってねえし、おっ父がそだなこと言うわけねえ。だいちゃんならわかるべ」
とおらは念を押した。
「わかる」
「……。おら、もうお菓子とかお金とか、もらうのやめようかなあ」
「やめなくてもいいべよ。町にだって、道で歌うたったり風呂敷広げて物売ったりしてお金もらう人とかいるんだもん。かんちゃんの話だって、立派な、仕事って言えっぺよ。仕事してお金もらうのは当たり前だ。全然悪いことじゃねえ」
「そうか?」
「うん。話聞くだけ聞いて、なんにも払わずに帰るなんて、そっちのほうがどうかしてっペよ。今度、いや、今日だってきっと話を聞きに人が集まってるべ。おらもまた聞きたいだ。聞きに行っていいか?」
「いいに決まってっペ。もちろんなんにもいらねえ。だいちゃんが聞きたいときは、言ってくれればいつでも話すだ」
おらは気がついたら笑っていただ。
そんな話をしているうちにだいちゃんの家が見えてきた。
おらの家も、すぐだ。
おらにやきもちを焼いていじめてくる連中は姿を見せず、おらを気遣ってくれる優しいだいちゃんは、先にこれ置いてくる、と家に向かって走りだした。
おらは背中を目で追った。
と、だいちゃんの家の玄関から千代が顔を出した。
左を見て右を見て、だいちゃんに気がついて、おらと目が合って、あ、って口をした。
すぐに顔を引っこめた。
なんだなんだとおらも走っていった。
なんてことはない。
千代は貰ったお菓子を鈴にお裾分けしていたのだ。
「あのなあ、兄ちゃん。おらたちだけじゃ、食べきれないときもあっぺ。食べきれないで悪くして食べられなくなったら、もったいねえべ。だから鈴ちゃんにも、食べてもらってたんだ。あの……ごめんな」
「なにを謝ることがあんだ。今度から、だいちゃんと豊兄ちゃんの分も、持ってこい」
「実はもうもらってんだ」
だいちゃんは笑った。
「え、そうなのげ」
上手いことしてやられたような気持ちになった。
おらも笑った。
鈴も笑った。
千代も笑った。
みんなで笑って、家の前で待っているであろう人たちにしろへび様の話をしに、四人で歩いていった。
寛治は憤慨しました。それもそうです。当然です。
嫌な思いをすべきなのは寛治ではないのだから。
でも寛治が嫌な思いをして、いやな思いをすべき人間は
笑っている。現実にもよくあることですね。悲しいけど。
小説だからと、ハッピーで終わらせることは
私にはできません。
次回はどうなるか? 続きを読んでいただけたら嬉しいです。
では、また。




