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Will I change the Fate?  作者: 織坂一
2. Fate to disappear
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Lingering sound-2



 選ぶべきたったその2択。その2択に対し、母禮はこう口にする。



「おれはこれ以上誰も傷つけたくはないのだ。だから、高杉灯影に挑む時も、国がどうとではなく、今まで苦しい思いをしてきた彼自身を救う為に戦う」



 母禮が選んだ道――それは高杉灯影という男の救出であった。


 ここで新撰組の隊員として『生命の樹』と真っ向に対峙し、彼らを止める事は変わりない。だが母禮が見ているのはもっと先の話だ。


 確かに高杉はこの国を、亡き杏子の意思を、母禮を守ると立ち上がった。だがそれで彼は本当に良いのだろうかと考えた時、母禮はそうではないと思った。


 高杉と話したのはほんの十数分だったし、あれで彼の全てを知る事など出来ない。


 しかしそれでも彼の口から聞いても思ったのだ。決してそれで自分が救われる事はないと。


 そう、それだけでいいのだ。この国の民が守れれば、誰も泣かないで済むのなら、亡き初恋の人の想いを果たせれば、その形見を幸せにする事が出来るのなら。


 それが叶えば自分などどうなっても構わない。その彼が決めた人生のシナリオを母禮は受け止めたくなかったのだ。


 だからこそ、もう1度高杉灯影という存在と向き合うと、母禮は決意を口にした。そして伝えておきたいのはこれだけではない。



「無論、土方さんや遊佐さん、比企さん、花村さんにアマンテスも守り通す。これは『大鳥』の呪いではなく、大鳥母禮としての意志だ」



 すると、真剣な顔で話す母禮の様子を、土方は面白可笑しそうにくつくつと喉を鳴らして笑っていた。流石にその様子に苛立っては口出しをする。



「なにがおかしいのだ?」


「いや、何。テメェらしいと思ってよ。相似にビンタかますわ、俺にタメ口聞くわ怖いモンなしで羨ましいぜ」


「むっ」



 母禮の調子など無視して、暫く「くっくっく」と笑い続ける土方。嗚呼、そうだよ俺はそんな母禮(おまえ)だからこそ、何も心配などいらなかったのだと。


 挙句に自分でも理解出来(すくえ)なかった親友や、自分達も守るなど、よく言えたもんだと笑いが止まらない。


 しかしいつまでも笑ってはいられないし、あんな嘘を言わずとも母禮ならば戦えると確信を持ったから、こうこの場に置いておく必要もないし、気を取り直してはこう言い放つ。



「まぁ、無事に報告も終えた事だしよ、冗談はここまでにしてそれ飲んだらさっさと部屋に戻って寝やがれ。俺はまだ仕事が残ってるからよ」


「あ、ああ……悪い」


 実を言えば彼が追い出さずとも、土方が週に3回は徹夜で仕事をしている事は幹部を始め、多くの隊員が知っていた。


 故に朝食の用意をする事もなく、寧ろこのマンションのオーナーの三木さんが土方に朝食を届けているという目撃情報もある。


 普段碌に寝る事なく働いているのだから、この最初で最後であろうこの戦争をどう生きるか考えている故に寝る暇などないだろう。


 だから母禮は急いでコーヒーを胃に流し込み、せめてもの礼儀としてマグカップを洗うと、玄関へと向かう。



「それでは、お疲れ様だ。土方さん」


「ああ、お疲れさん」



 「お疲れ様」だなんてある意味嫌味だが、何せこれはこれから始まる衝突へ向けての意思疎通でもある。バタン、と玄関のドアを閉めては、母禮は何もない暗い天井をを見上げる。



「絶対に、誰も、殺させはしない」



 一句一句丁寧に、重く呟く。既に母禮の中で覚悟が決まっているからこそ、最後にそれを強く噛みしめる。


 例えそれが一体誰であろうと――軽くこの場で誓うと、そのまま部屋に戻ってはシャワーを浴び、ベッドへと身を投げた。


 やがてくるであろう戦争に向けて。せめて一睡して鋭気を養う事は無駄ではないだろうから。



 



「――大鳥母禮……否、大鳥沈姫。その護衛につくのはかの新選組最強の斎藤所以か」


 

 一方、あの後帰ったはずの根城は新選組の本拠地から一キロ離れたビルの上で呟く。

 

 あれから数時間は経っているのだが、未だ彼女は本拠地である東京スカイツリーには戻っていない。


 それは何故か? 答えは酷く単純である。


 その答えに1つ付け加えるなら、このビルに構えられた会社のフロアは既に血と肉塊の詰められた箱と化している。つまり根城が起こした事に変わりない。


 隠す事の出来ない、獣としての闘争本能。それを燻らせたまま帰るなど、そこまで根城は高杉(かれ)に忠誠を誓ったつもりはない。


 恐らく大鳥母禮に手出ししない限り、高杉灯影が怒る事はないだろう。例え怒ったとしても、何処に問題があるのだろうか?


 あんな男に自分を殺せるはずもない。殺せるなら殺してみろ。差し向けられた刺客(ザコ)など一片も残らず、引き裂いて噛み殺すからよ、と言わんばかりに。



「さて」


 と短く呟いては、予めに持ち歩いていた手榴弾をビルの下へと放り込む。


 そして今から始まる歓喜の戦争(うたげ)に対し、意気揚々と宣言する。



「感謝しろよ肥えた豚共。『生命の樹』との全面戦争で最初に相手すんのはこの私さぁッ!」



 これが全ての始まりであり終わり。

 

 全ての尊厳と矜持と国の平和を懸けて。今、火蓋は切って落とされた。



.

お久しぶりです、織坂一です。


ようやくこの「Lingering sound」で第2章が終了しました。

結構この第2章では、高杉灯影と新撰組幹部の関係の伏線は張っています。けれど結構しつこかったので、くどかったのは謝罪します。


正直この第2章は高杉と母禮の邂逅、そして母禮と斎藤の関係の変化がメインです。


高杉は母禮の母の意思を継いでこうしていますし、本文中にもありますが、彼が英雄気質の狂人になったのは、杏子が殺されてからです。


なのでここからは新撰組のメンバー+アマンテスと『生命の樹』の衝突になります。

ですが一方で母禮と斎藤の関係の行方や、母禮は果たして高杉を救えるのかについても、最後の真実に至る為の鍵になります。


よくこのWIFシリーズでは「真実を見つけだせ」といっていますが、真実イコールこの作品の命題です。


とにかくこっからは熱いバトルが繰り広げられるので、どうぞお楽しみに!



織坂一

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