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Will I change the Fate?  作者: 織坂一
2. Fate to disappear
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memory-2




僅かとは言え、永遠と間違えてしまうような時。如何に時間が経ったが知らないが、高杉の淀んだ瞳はすぐに色が戻る。


 しかしそれは先程の様に好意的なものでも、夢見る様な心地でも無く、ただただ事実を突き詰めてしまう様でいて、酷く諦めが感じられた。



「それで俺様はその約束の為に、あの当時何の実績もない新選組で快挙を次々と成し遂げる訳だが、ある時こう思ってしまう……この国が破滅へと向かうカウントダウンはもう始まってるってな」


「それは……っ、どうして!?」



 既に、高杉の話にのめり込む母禮は、そこで初めて困惑を露わにした。すると高杉は苦笑して、掠れた声で天井を見つめては呟く。



「上層部が全てを諦めてんだ、この国自体を。俺様がいくら功績を上げようと、仲間と必死に命張って戦おうと、アイツらの守りたい物は自らの地位と庭付きのお屋敷だけだ」



 それこそがこの世の正義。(かれら)が頑なに是が非でも守りたいモノ。


 もうこの時、高杉は諦めばかりを見せていた。つまらない、何だそれは、聞いて呆れると。



「それを脅かす奴らがいるなら例え誰であろうと切り捨てる……だから俺様はそこから何もできなくなっちまったし、あの人との約束も守れない」



 この国と、自分(わたし)の娘を守って欲しい。


 既に警察庁から去り、大鳥家へと戻っただけでなく、その6年後にはもう杏子は敬禮の手によって殺された。


 これが高杉灯影と言う男の全てが狂った原因。だからこそ彼はただ杏子との約束を果たす為だけに、全てを踏みにじっては捨てたのだ。


 その悔しさ、一生涯忘れる事のない、否、忘れてはならない己の真実を高杉はまた噛みしめる。



「だから、新撰組を捨てて、今のその金の亡者と偉そうにしてるだけの無能共を殺してでも、この国を変えると誓った……それだけだ」



 警察機構より、外国から得たより精度の高い国際状況。そして、最先端の技術と科学。何より極めつけは魔術という非現実(イデアル)に武力。


 彼はこれら全てが揃わなければ、それこそ救世など出来ない。そう感じたからこそ、新撰組が警察機構のトップに昇り詰める以上に、自分の全てを尽くした。


 故にそれに集ったのが、樹戸の様な天才や影踏の様な若くして、同じくこの世を潰すと誓った同志。


 彼らもまた経緯は異なるが、高杉灯影という男の輝きを希望とした。だからこそ今『生命の樹』はこの世の希望と言う革命集団として謳われているのだ。


 故に『この世の希望』と渾名された高杉は、また夢から覚めた。


 長い幸福な夢から覚めて、天井から視線を逸らすと、視線を再び母禮に向けては笑う。



「……これで、高杉灯影様が率いる『生命の樹』が完成したって訳だ。どうだ?俺様という人間は」



 当然、母禮には何も言えなかった。


 上に立つ事で背負わされたこの高杉灯影の重荷も実の母の苦しみも。なんとなくどころか同情さえも出来ない。何せその時そこに自分はいなかったから。


 だがそれでも杏子が高杉と出会わなければ、高杉が杏子に惹かれなければ、杏子が高杉に夢を託さなければ、全ては無かったのだ。


 まだ杏子が存命なら、きっと高杉は杏子に会いに来ていただろう。


 偶に他愛ない話をしながら、母禮の成長を見届けて、自分はまだ頑張れる、だから見守っていてくれと。もしかしたら母禮も高杉に懐いていたかもしれない。


 だがそれは無惨にも潰され、母禮には何もこの真実を語られなかった。何も知らずに母禮(じぶん)はこの16年を生きてきたのだ。


 故に、今の事態をようやく母禮は悟った。



「じゃあ私がここへ来たのは、まさか……」



 この日本(くに)だけでなく、高杉が案じるのは母禮の身のみ。ならばこれは誘拐でも、取引でもなんでもない。ただ、彼女を守る一心故だ。だから高杉は頷き返す。



「ああ、この戦争から遠ざける為だ。そしてお前が持つもう1つの傾国の女の贋作の入手」


「え?」



 ふと母禮は間抜けな声を漏らす。何故傾国の女が必要なのか? そしてその前に母禮はこの傾国の女が2本存在する事さえ知らない。だからこそ高杉はやけに真剣にこう切り出す。



「これは影踏からの報告だが、傾国の女はその名の通り国を示すシンボルで魔剣だ。だが、本物だけでは折角開いた霊脈を解放する事はできない」



 つい先日、東京タワー爆破と共に『生命の樹』根城の手により起きた京都での大量虐殺。


 確かにその時、各シンボルかつ霊脈と成りえる箇所は血に満ちた訳だが、これらを制御するには魔を封殺する魔剣が必要不可欠。その為にこの傾国の女はその楔となる。だがそれにも欠点があった。


 

「しかし、それを知能として回すには本物にしか出来ない。だから本物は心臓部として機能させ、贋作には防波堤になってもらわなきゃ困る訳だ」



 要は高杉の持つ本物こそ、この国を裁断する正義の刃。そして母禮の持つ贋作は本物(やいば)を守る盾とならなければならないという事。


 だから影踏はあの時に、傾国の女の所持の理由を母禮に投げかけたのだ。



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