プロローグ叫べよ
この作品の主人公である鮫嶋一花が漢気学園に転入し、数日が経ったある日ことだ。元々男子校だったこの学園、私立漢気学園は男達の男同士のカップル率があまりに高く、問題になるという事件が起こったそうで……急遽共学にしたそうだ。だがしかし、入ってきた女子は彼女ただ一人!!という現実に校長、理事長までもが頭を抱えた。
教師達ももうどうにでもなれ、と面倒になり結局一花に全て押し付ける方向に行ったそうな。
一花が何故ここに転入したか、その理由はほとんど無理矢理なようなものだった。普通の共学に通ってた一花は知り合いの女性に入れられてしまった。その女性と言うのがここの理事長の娘であって、なかなかのお嬢様だが、仕事は……まぁ、♂と♂がやりあう薄い本描いてる人だ。詳しくは良い子のみんなには言えない。
「もぉ、笑顔笑顔っ!」
「うぜえ~~~~……」
先ほど紹介した、漢気学園の理事長の娘である大和田 蒼空が一花にうざったらしいほどの輝かしい笑顔を向ける。美人だが腐女子故に残念なのが果てしなく世の中の理不尽さを感じる一花である。
「で、どぉ? 漢気学園」
「クソですねぇ! 逆に聞きますがそれ以外になにがあると思いますか?」
「ホモ?」
「いやそうですけど……そうじゃなくて」
あの学園はもう末期だ、そう一花は遠い目をする。それは桜が舞い散る春休み明けの登校初日の朝礼のことだ。周りには男男男漢ばかりで女一人だけだった。それでも一花は最後に残された生徒会長挨拶まで静かに持ちきった。しかしその生徒会長挨拶が問題だったわけだが。
生徒会長挨拶で呼ばれたのは、天パの笑顔が爽やかな男子生徒だった。だが、コイツがもっとも一花とってこの先最大の宿敵になりゆる奴だったのだ。
「お早うございますみなさん、今年はとても喜ばしい出来事があります。それは女性である鮫嶋一花さんが一人転入してきてくれたことです」
生徒会長の鬼瓦桃が一花のことを口にした事により、一斉に視線が一花の方へ向く、思わず頬の筋肉が引き攣るのは緊張のせいか。一花が嫌な予感がすると小さく呟く、というより嫌な予感がするのはフラグだろうと一花は察した。
「一花さん、ステージへどうぞ」
ほらみろフラグだ、世界は一花に厳しいのだ。一花は呼ばれたのに断るわけにもいかない、男共がみているという恐怖もあり、一花は背筋ピーンッッ!と某羽の生えるランドセルCMの状態でステージへとあがることとなった。ステージへと上がると、生徒会長の鬼瓦桃は本心の見えないような顔で笑っていた。何が面白いんだ、と心の中で一花が悪態つくとそれを見透かしているかのように生徒会長はまたクスリと笑った。
「一花さんも知っているようにこの学園はほとんどホモの集まりです。もちろん生徒会も大半はホモです!」
「アッ、ハイ」
突然の爆発発言に一花の脳内はキャパオーバー。その間にカメラを持った人達がたくさんステージ下に駆け寄る、新聞部か何かだろうか。全員眼鏡を掛けているのは何故だ、と一花は考えるが一花には到底理解できない事だった。否、理解したくもないのだろう。
「えぇ、えぇ、そんなホモのなか一花さんは苦労することでしょう! 頑張ってくださいね!!」
「はぁ、頑張ります……?」
半分も話を聞いていなかった一花、およよと泣き真似をされウィンクをされても困るのは致し方ない。それよりそんなホモのなかとはどんなホモの中だとツッコミたくなる。
まだペラペラと話す生徒会長の横で一花は呆然としていると「ちょっと待ったぁ!」と後ろから野太い声が聞こえた。振り向けば、ガチムチ男がステージに上がってくる。言っておくが某笑顔動画でネタにされまくってる野の獣ではない。
「桃! 貴様、腐女子を味方につけようとしたな?! 昔から貴様のそういう策略的な所が気に食わないんだ。正々堂々と戦おうと思わないのか!?」
「ふじょし?」
一花のことなど完全無視で生徒会長とガチムチ男との間で口論が勃発する、それを静かにそれも微笑ましそうに眺める全生徒。やっぱりこの学園は何かがおかしいのだ。いや全てが可笑しい。
「いいか、ガチムチは攻めなんだ。現に俺が攻めなんだからな!」
「ちっちっちっ、ガチムチは受けだよ。どのBL本でもガチムチは受けだからね。ガチムチ同士だったらまた別の話だけどさ、梅之助は分かってないなぁ」
一花は至ってノーマルである。その二人の言葉に一花は疑った。
「あのぉ~、すみません」
「なんだ腐女子」
「あ、いや鮫嶋です」
「そうか、腐女子。すまないが今話し掛けるな。大事な話をしている」
この目の前のガチムチは耳の病気なのだろうか?人の話聞こうともしない、と一花は額に二三本と青筋を浮かべる。そしてもう一つ気になるのがガチムチにいる後ろの筋肉達はどうしたのだろう。ボディビルダーの如くポージングをしている、一花は色々とツッコミたくなる衝動を抑えた。
「ねぇねぇ一花ちゃん、ガチムチは受けだと思う? 攻めだと思う?」
「……あ、いや、わかん」
「やっぱり受けだよね! うんうん、一花ちゃんとは趣味があいそうだ!」
ここの奴らは、人の話を聞こうとしないのが当たり前のようだ。一花は、頭痛がするのを抑えるようにこめかみに手を当て唸った。あれ、私ここにいる意味って?と小さく呟く一花。考えに考えた結果が「……ないかなぁ!!」である。それは今年で一番の叫びだったとか。
そして、その日から一花はそこに登校しているものの、“周りの男共”が告白され。至る所でギシアンギシアンと聞こえてくる。常識人はいないが当たり前なのだろうかと遠い目をする一花、そして一花は疑問に思った事があった。それは風紀委員はあるのだろうか……という希望を胸にした小さな疑問だった。
「蒼空さん、風紀委員とかあるんですか?」
「えぇ、あるんじゃなぁい? ん? あ、風紀員イイかも。私帰るわっ、いいネタ思い付いちゃったから!」
「あのっ、ちょ……! お金はぁ!?」
帰ってしまった、ネタが思いつくと帰ってしまうのは当たり前なのだろうか?何故、一花の周りには変人しかいないのだろうか?一花の疑問は尽きない。尽きることは有り得ないだろう、尽きたときは一花もきっと常識的な人間ではなくなっている。
漢気学園に来る前まで平々凡々だった一花が非々凡々になってしまった。もうやだ、切実に。と一花は手を胸の所で祈るように重ねる。
「……風紀委員になればいいじゃん」
そうだ、風紀委員に入ればいいじゃないか!多少反抗してくる奴はシバけばいい。と一花は明後日の方向へと思考回路を変えるのは周りの変人達のせいか。
「そうだよ、そう。取締役の風紀委員になろう」
あぁ、一花が変人になるのもそう遠くはないだろう。
さて、これから一花と#男達__愉快な仲間たち__#の物語が始まるのだが準備はいいだろうか?これはまだ序盤に過ぎないのだ。どんなに馬鹿馬鹿しい話でも付いていける!と言う者はこの先を進むといい。
さぁ、普通の青春にさよならをしよう。さよなら平凡、いってらっしゃい常識、こんにちわ混沌。
よろしく漢気学園。
作品のテーマは「愛」です。愛とは何か?様々な愛の形について触れていけたらなと思います。ちょっとかっこつけました!!キャピッ!!!