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契約者達と炎鳥の里とサザトラントの村

 あれから心配していた様な事も無く異世界に行く日がやってきた。

 「直哉、自分が後悔しない選択をしろ」

 「うん、ありがとう父さん行ってきます」

 「香織、約束を忘れては駄目ですよ」

 「大丈夫だよ、お母さん確り心に刻んでおいたわ」

 会話を終えた俺達はシグルトに転移して貰った。


 龍の里に着くとルードルとタマミズキがすぐに近寄って来た。

 「この通り主の為に長達から魔銀を貰って来たぞ」

 ルードルが指し示す場所には山の様な魔銀があった。魔銀の横にいる四メーラはあるガレオスが小さく見えると言えば量が分かるだろうか?正直俺が考えていた量より何倍も多かった。

 「なあルードルあんなに貰って良いのか?」

 「ああ大丈夫だ。長達も今頃主の役に立てて泣いて喜んでいるはずだ」

 ガレオスが否定する様に首を振っていたが俺は見なかった事にして魔銀を空間にしまっていった。話を聞いてはならないと俺の本能が狂った様に警鐘を鳴らしていた。

 「直哉二匹の天狐は無事に龍に乗って里に向かいましたわ。これで私は直哉の傍に居られますわ」

 ススッと俺に近寄ろうとしたタマミズキだったが目の前を香織の放った火球の魔法が飛んで行き、危うく燃やされそうになっていた。

 「何をするのです。危ないではないですの」

 「危ないのはあんたの存在そのものよ。すぐに私のお兄ちゃんに近寄ろうとするんだから・・・。私が下心を持った女を近づける訳無いでしょう」

 「ふう、仕方ありませんわね。私は此方の姿で居る方が好きなのですが・・」

 そう声に出したタマミズキの姿が歪んだと思ったら一瞬で姿が二十ミーラぐらいの狐になっていた。俺達が驚いている間にスルスルと俺の左肩に登っていた。肩の上でコンと鳴く狐の姿は正直可愛かった。

 「お兄ちゃん今すぐタマミズキを叩き落として」

 俺が凄まじい目をして睨んでくる香織に言われて反射的に肩の狐に手を触れさせるとタマミズキがワザとらしく声を出した。

 「やん、何所を触っているのです。そんな所を触られたら責任をとって貰わないといけなくなりますわ」

 その言葉にビクついて手を引っ込めるとタマミズキは明らかに勝者の笑みを浮かべていた。

 「・・・・すまない香織、俺には無理な様だ」

 「分かったわお兄ちゃんはジッとしていて。私がやるわ」

 香織が近づいてきて右手を出したがタマミズキは軽快に跳んでかわした。予想していた香織はすぐに左手を着地点に出したのだがタマミズキは尻尾を叩きつけて左手を迎撃した。更にその反動を利用してヒラリと左肩に着地して笑っていた。

 「そんな動きでは私を捕らえる事は不可能ですわ」

 「クッ、まだよ」

 香織は速度をあげてタマミズキを捕らえようとしたがヒラリヒラリとかわされていた。

 「速度をあげても無駄ですわ。あなたの行動は簡単によめますもの」

 香織も動きをよまれているのは理解しているのだろう、とても悔しそうな顔をしていた。実際の所は最高速度なら香織の方が上なのだが、それは音速を超えた速度を出すと言う事だ。当然そんな速度で手を出されたら傍にいる俺も無傷ではいられない。その所為で速度に上限が掛けられているので後は駆け引きや技の問題になるのだ。

 「お兄ちゃんちょっと我慢してね」

 香織が覚悟を決めた目をして拳を出した。明らかに捕まえるではなく殴る心算の攻撃だった。俺の顔の横をうなりを上げて拳が通過した。意表を突かれたのか全く動かないタマミズキに拳が突き刺さった様に見えた。しかしそれは俺達の誤解だった。拳を受けたタマミズキの姿が幻の様に消えて左肩からタマミズキの声が聞こえた。

 「其れは魔法で作った幻影ですわ。私は尻尾で迎撃した時に幻影と入れ替わったのです。貴女はずっと幻影を捕らえ様と無駄な努力をしていたのですわ」

 その言葉に香織が顔を真っ赤にして屈辱に震えていた。完敗に終わってしまって落ち込み始めた香織の頭を撫でて慰めながらタマミズキに質問をした。

 「タマミズキはずっと左肩にいたのか?肩に重さは感じなかったんだが?」

 「女性に重さの質問をするとは直哉は駄目駄目ですわね。でもまあ疑問にはお答えしますわ。短時間なら浮く魔法もあるのですわ」

 「成る程、しかし浮きながら幻影を作っていたのか?」

 「私は天狐ですわよ。天狐なら複数の魔法の同時使用は出来て当たり前ですわ。私は一度に七つまで同時に別の魔法を使えますわ」

 天狐の魔法が五幻種の中で一番だと言われるのは此れの所為なのだろうと思った。同じ魔法を複数なら俺でも簡単に出来るが、別の魔法を使うのなら今の所二つが限度だった。一人納得していると姿の見えなかったメルボルクスとシルフレーナさんがやってきた。

 「シグルトまずは此れが約束の魔金だ。受け取ってくれ」

 メルボルクスが空間から魔金を無雑作にドサドサと取り出して見せてきた。その量は先程見た魔銀を超えている様に見えた。

 「うわ、凄い量だ。ありがとう母様」

 「シグルトが気にする必要はありません。さあ早くしまってしまいなさい」

 シグルトが頷いて空間にしまうとメルボルクスが顔を歪めながら話し掛けてきた。

 「リラクトンからの伝言なのだが二人に炎鳥と交渉してほしいそうだ。理由は・・・・」

 話を聞き終えて俺はサザトラントを放って置いた事を後悔していた。俺は二人とも勝利した後は自分が統治する故郷だから放って置いても酷い事にはならないと考えていたが、まさか後に統治する故郷を焦土にするなど想像もしていなかった。

 「直哉、今は後悔している時ではありませんわ。お父様の説得は私がしますわ。早く移動しましょう」

 「いや、待つんだフレイ。先にバルグーンに転移して事情を話してからにするんだ。じゃないと僕達が帰ってこない事を待っている皆に心配させる事になるし、それにもし向こうで何か問題が起きていたら大変なんだ」

 フレイとシグルトの言葉に気を取り直すと素早く考えを纏めた。

 「まずはバルグーンに向かって説明する。その後炎鳥の里に向かって交渉してから救出する。皆も其れで良いか?」

 誰からも反論の声は上がらなかったのですぐにバルグーンに転移した。


 「・・・・・・と言う訳だから俺達は炎鳥の里に向かいます。後ロベルトには悪いが此れを持って俺の代わりに店に行ってほしい」

 俺はロベルトに魔金と魔銀を俺達の武器を作る為に必要なだけ出して最後に武器の詳細を書いた紙と依頼する代金の金貨を渡した。

 「店には後日になるが必ず行くとリジェネに伝えて欲しい」

 「分かった、全てやっておく。お前達の方こそ気をつけろよ」

 話をする俺とロベルトの声だけが部屋に響いていた。他のリグレス公爵達は説明された事に衝撃を受けている様だった。それぞれ治める場所があるだけに今回の報告を重く受け止めているのが感じられた。

 「ロベール私は二人とも治める資格があるとは思えない。依ってもし本人に出会ったら問答無用で拘束してほしい」

 「儂も同意する。儂が必死に守ろうとしている領地を自分で破壊する者の気持ちなど分かりたくもない」

 「私も同意はするが疑念がある。私は何度かサザトラント卿の子供に会った事がある。次男の方はやりそうだと思うが長男の方はその様な人物には見えなかった。むしろ争いを嫌いそうな人物に見えた」

 メルクラント卿の言葉に俺も違和感を感じて心に留めて置く事にした。

 「では時間も無いので俺達は炎鳥の里に向かわせてもらいます」

 「今日と明日は動かないから此方は気にしなくて良いぞ。三日以上掛かりそうなら一度連絡してほしい」

 「わかりました。でも一応今日中に炎鳥の森に避難を終わらせる心算です」

 そう言った俺は移動してから炎鳥の森まで転移した。


 「うわ、此処がフレイ達炎鳥の住んで居る場所なのね。赤い葉が空に舞ってとても綺麗な所だわ」

 「香織にそう言って貰えるのは嬉しいですわ。時間があればゆっくり案内するのですが、今は時間が無いので早く里まで向かいましょう」

 フレイの言葉に頷いて全力で走って里まで移動した。契約者と五幻種だけなので移動速度が速く僅かな時間で里に着いた。

 「止まれ何者だ」

 「私がお父様に会いに来ただけですわ。通して貰いますわよ」

 「な、姫様お帰りになられたのですか?」

 「いえお父様に話があって来たのですわ。今は時間がないのですわ。すぐに通しなさい」

 少し強い口調でフレイが話すと慌てた様に道を開けた。すぐに里の中に入って王がいると思われる場所に向かった。向かった先は王が仕事をする部屋で如何やら会議をしていたみたいだった。扉を開けた瞬間に沢山の視線が俺達に集まったがフレイは気にもしないでズカズカと入っていった。

 「フレイ帰って来たのは嬉しいが、今は会議中だ出て行きなさい」

 「今から私が話す事をお父様が許可してくれればすぐに出て行きますわ」

 フレイはサザトラントの状況を説明して許可を求めた。

 「フレイの言葉でも人間を森に入れるのは許可出来ない。抑々その後は如何するのだ。まさかずっと森に居させろとは言うまいな」

 「その事なんですが炎鳥の力でリラクトンまで運んで貰えませんか?」

 「ななな、我ら炎鳥に人間を運べと言うのか。冗談ではない」

 俺の言葉に怒る炎鳥に同意する声が響いた。

 「炎鳥が運んでくれないのなら龍に頼むしかないな」

 「ははは、龍が人間を乗せる訳がないだろう」

 愉快な冗談を聞いたと笑う炎鳥を見て不敵な顔をして告げた。

 「俺が頼んだら龍達は普通に乗せてくれましたよ。今ではリラクトンに食糧を持って行くと子供が群がると聞いています」

 「馬鹿な・・・契約者を契約相手が乗せるのなら分かるが、ただの人間が乗れる程龍の背は軽い物ではないはずだ」

 まるで理解出来ない事を聞かされたといった感じの炎鳥達は驚愕と困惑に顔を歪めていた。俺は一度全て話した方が早いと考えて今まであった事を話した。俺の話を聞いて重い沈黙が訪れた部屋にフレイの声が響いた。

 「お父様そして皆も良く聞いてください。今はもう今までと同じやり方で対処出来る状態ではありません。実際此処にいる私達を見てください。直哉と香織は特殊な契約者でシグルトは五龍星の子供、私は王女、ルードルは魔狼で長に次ぐ力の持ち主でタマミズキは天狐の女王の姉です。今までこの様な者達が一か所に集まっていた事がありましたか?今の時代は変革の時だと私は考えています。此処で協力すれば直哉達に貸しを作る事になりますし、炎鳥が流れに取り残されない為にも考えては貰えませんか」

 フレイの言葉に場がざわついたが難しい顔をして考え込んでいたリフレオンが威厳のある声を出すとすぐに静まった。

 「変革と言ったがその変革が良いものである保証はなかろう。我ら炎鳥が人間を助ける為に動いた所為で余計な火種を抱える事になるのは王として認められない。あれから森は平穏で其れを捨てて動かないといけないとは思えない」

 「お父様変革は避けて通れないもので良い悪いではないのです。そして此の状況を乗り切るためには協力が必要だと言っているのです。其れに今の平穏も一時的なものになるはずです。もし今炎鳥が協力しなかった場合、炎鳥が危機にさらされた時に助けが得られない事になります。帝都は契約石の所為で消滅しましたし、天狐二匹を一人で倒した正体不明の敵も居るのです。良く考えてください」

 「・・・・話しは分かったが其れと人間を助けるのは違うだろう。他の事なら協力しても良いが人間を森に入れて保護するなど認められん」

 頑なに拒否するリフレオンに如何するかと考えていると香織が声を出した。

 「初めまして、私は香織と言います。フレイの契約者です。今話を聞いていて思ったのですが王は人間に関わりたくないだけではないのですか?」

 そんな馬鹿なと思って香織以外は唖然としていたが、フレイがハッと何かに気づいた顔をしてから、突如リフレオンの顔を見て視線を厳しくして睨んだ事で俺達にもリフレオンの動揺が伝わってきた。

 「お父様、まさか私やリオンの事で人間を助けたくないと言っているのですか?王としての判断ではなく個人的な感情で・・・・・」

 フレイの怒気が部屋中に充満していくのが感じられた。正直此処からすぐに逃げ出したくなった。周りの皆も冷や汗を掻きながら王から気づかれない様に距離を取り始めていた。

 「そう言うがな、人間の所為でお前が里から出て行く破目になったのだぞ。今これ以上人間と関わって他の者まで契約をする事になったり、まして契約石にされたら如何するのだ。王としてそうならない様にするのは当然だ。抑々契約など我らにとっては失うだけで何も得る物がないではないか。其処の香織と名乗った女も自分だけ利益を得ているはずだ」

 色々と言っていたけどリフレオンが反対しているのは、フレイが契約した事に納得していない所為だと言うのが声から伝わってきた。フレイも複雑そうな顔をして聞いていたが最後の言葉を聞いた瞬間に怒りの質が冷たく凍り付く様な物に変わった。

 「・・・まさかお父様に私の契約者を愚弄される事になるとは思いませんでしたわ。良いでしょうならば香織と契約して私が得た物をお見せしましょう」

 フレイが抑えていた力を解放したのが分かった。その力は王よりも明らかに上だった。周りの炎鳥達は言葉も無くフレイを見つめていた。

 「ななな・・・何故お前がそんな力を持っている?」

 「勿論香織と契約したからに決まっていますわ。私もシグルトも確かに契約して失った物はありますがこの様に得たものもあるのです。そして私は香織の事が気に入っていますわ。いくらお父様と言えども私の契約者に対する不当な発言は許しませんわ」

 「ままま、待てフレイ冷静に話し合おうではないか。失うだけでは無いのは分かった。発言は撤回する」

 「ではお父様は私の意見を受け入れてくださるのですね」

 「いやそれは・・・・・・」

 言いよどむリフレオンにフレイはとうとう我慢の限界を超えたらしく火の魔法を放っていた。

 「ぎゃああああああああ」

 まさか娘から攻撃を受けるとは思っていなかったリフレオンは直撃を受けて火だるまになって転げ回っていた。暫く経って火は消えたもののプスプスと音がするリフレオンにフレイが告げた。

 「お父様、王として確りとした理由がある反論なら聞きましょう。あるなら今言ってください」

 「・・・・・好きにしろ・・・・」

 其れだけ言ったリフレオンは目を瞑って動かなくなった。気絶した訳では無い様だが動きたくないらしい。俺にはふて寝をしている様に見えてしまった。

 「貴方達、お父様の許可は得ました。すぐに必要な行動をとりなさい」

 もはや反論出来る様な雰囲気ではない事をリフレオンの姿から悟った炎鳥達ははじかれた様に動き出した。

 「香織お父様の発言は気にしないでください。私は何も後悔していませんわ」

 フレイの言葉に香織が返事をしていると一羽の小さな炎鳥が飛んできた。

 「此処に姉様がいると・・・・・・・うわ父様なんで焼けているの?」

 「リオン、父様は私の契約者の香織に不当な発言をしたのでお仕置きしたのですわ」

 「えっと姉様の隣にいるのが香織さんなのかな?姉様の弟のリオンと言います。よろしくお願いします」

 「ええそうよ私が香織です。リオン君は私に言いたい事は無いのかな?」

 「ああ成る程それで父様は焼けているんですね。もう契約してしまっている以上文句を言っても無駄ですし、姉様とずっと一緒にいる人だから仲良くした方がお互いの為に良いと考えています。姉様も気に入っているみたいだし僕とも仲良くしてください。後は偶には姉様に会いたいので里に来てもらえると助かります」

 「ありがとう、出来るだけ努力はするわ」

 香織とリオンが話し終わるとフレイがリオンと小声で話していた。

 「・・・・・・と言う訳ですから後はお願いしますわリオン、折角こうして会えたのですが私達は用が終わったので移動しなければなりません。また会いに来ますから其れまでいい子にしているのですよ」

 「分かりました姉様、母様には僕から伝えておきます」

 「ええお願いするわリオン」

 久しぶりの姉弟の会話が終わるのを待っていた俺達は時間が無いのですぐに移動を開始した。


 森から出て北東に移動すると村が見えてきた。遠目にはのどかな感じの村に見えたのだが中に入ると殺伐としているのが感じられた。ボロボロの服や着の身着のまま此処に逃げてきたと言った感じの人が溢れ返っていた。キョロキョロと周りの様子を窺っていると槍を持った兵士の集団が近づいてきた。

 「止まれ、お前らよそ者だな。何所の者だ」

 「何所と言われるとリラクトンだと答えるしかないな」

 「リラクトンだとふざけるな今此処にリラクラントの者がいるはずが無い。汚れのない服もだが態度も逃げて来た様には見えない。貴族ではないみたいだが怪しい奴だな此方に来い」

 槍を突き付けながら俺達を連行しようとする男に話しかけた。

 「なあ此処の代表は誰なんだ?話したい事があるんだ」

 「今の代表はラクリーヌ様だがお前の様な怪しい奴を会わせる訳にはいかない」

 「この状況を如何にか出来ると言ってもか?」

 「・・・・・まずは付いて来い。話は其れからだ」

 フレイに空から索敵を頼んで、それから兵士達に囲まれながら男について行くと詰め所に連れてこられた。

 「この状況を如何にかすると言っていたが今の状況を理解しているのか?」

 兵士の質問に俺は聞かされた話を話した。初めは大人しく俺の話を聞いていた兵士だが貴族が殺されたと話すと突然掴みかかってきた。

 「何をする落ち着け」

 「此れが落ち着けるか男爵が殺されたなど嘘に決まっている。男爵は友人と話してくるだけだから心配するなと言っていたんだぞ」

 「お前達はまだ何も知らなかったのか?なら此処に討伐隊がくるかも知れない事も知らないのか?」

 「討伐隊だと・・・・・・」

 愕然とする男の顔を見て何も知らない事を悟った俺は此れは不味いと思って声を出した。

 「おい、今すぐ代表のラクリーヌを連れて来い。じゃないと話にならない。俺は本当にリラクトンの者で皇妹のメイベル様に要請されて此処にいるんだ。時間が無い早くしてくれ」

 「嘘ではないな?何か証明する物は無いか」

 「そうだな此の剣にはミルベルト家の家紋が入っている此れでは証明にならないか」

 「分かったこれをラクリーヌ様に見せて来るから此処で大人しく待っていろ」

 男が剣を持って出て行ってから暫くすると男と共に蒼い顔をした女性が部屋に入ってきた。

 「私はラクリーヌと言います。此の剣には確かにミルベルト家の家紋が入っていました。貴男は私の夫が殺されたと言ったと聞いています。詳しく話しては貰えませんか」

 「分かりました落ち着いて最後まで聞いてください」

 そう言って俺は静かに話を始めた。

 「・・・・・・・夫は仲の良い友人だから問題無いと言って出かけました。私も結婚式の時に祝いにきてくださって夫と仲良く話している姿を見ていてその事を知っています。だから夫が問答無用で殺されたなどとはとても信じられません。・・・・ですが北の貴族がリラクラントに逃げようとしているのが本当なら真実の可能性が高いとも思います。何故なら私の生家も含まれている可能性が高いからです」

 蒼白な顔をして震える声を出すラクリーヌさんの心中を思えばそっとしておきたかったが、討伐隊が来るまで時間がないと考えている俺は話を続けて決断をして貰う事にした。

 「討伐隊がくるのなら時間がありません。今すぐ俺達と共に炎鳥の森へ逃げて貰えませんか」

 「貴男が私達を騙そうとしているとまでは言いませんが、炎鳥が私達を助けるとは如何しても信じる事が出来ません」

 「全くだ、何かの手違いで五幻種と戦いになる事を考えたら森に行きたいとは思わん。討伐隊と戦う方がましだぞ」

 「その心配はありません。何故なら・・・・」

 「ロベール、討伐隊らしき者達が此処に近づいて来ていますわ。右と左に二手に分かれて包囲しようとしているので、右は私が行って潰しますわ」

 「分かった、もう姿を見せてもいいぞ。ルードルはフレイと一緒に行ってくれ。頼んだぞ。香織はタマミズキと共に脱出する人の誘導と護衛を頼む。シグルトは俺と共に左の相手をするぞ」

 突然響いた声といきなり姿を現した皆に言葉も無い二人に俺は声をかけた。

 「ラクリーヌさんは今すぐ住人に逃げる様に言ってください。リラクトンに着いたら半月の生活は保証すると言って良いですから思い出のある物以外は捨てる様に言ってください。後兵士の皆さんは嫌われ役で悪いのですが言う事を聞かないのなら命の保証は出来ないと言って回ってください」

 言うべき事を言って返事を聞かないで駆けだした俺達の耳に残った香織の話す声がかすかに聞こえた。

 「私達は契約者で私の契約相手は炎鳥の王女ですから王と既に話しがついています。森に逃げさえすれば助かります。何よりお兄ちゃんがいるから問題ありません」

 おいおいまいったなと思いながら移動速度を速めた。


 七百人くらいの集団が殺伐とした雰囲気を出しながら駆け足で移動して来た。道に立つ俺を見ても止まりそうも無いので爆裂球の魔法を放って目の前の道を吹き飛ばして動きを止めた。

 「おいこれ以上は通行禁止だ。大人しく帰るなら見逃すぞ」

 「我らは此の先の村に用があるのだ。お前こそ邪魔立てすると容赦しないぞ」

 「討伐隊が村に何の用があるんだ」

 「ほう、我らの事を知っているのか?なら抵抗は無意味だと分かるだろう。大人しくすればお前だけは助けてやってもいいぞ」

 「冗談はやめてくれ。其れより一つ聞きたいんだが男爵がどうなったか知っているか?」

 「味方でもない者が近づけば殺されるに決まっているだろう」

 「そうかやはり死んでいるのか。友人だと村で聞いたのでもしかしたら誤情報かと思ったんだがな・・・」

 答えを聞いて落胆しているとシグルトが戻って来た。

 「周囲には他に人はいないんだ。其れと此処はもう隔離したから敵は逃げられないんだ」

 「そうかご苦労だったな。じゃあ始めるか」

 言葉と同時に空間から買ったばかりの魔金銀製の剣を取り出すと構えた。しかし男はシグルトを見て愕然として呟いていた。

 「・・・・・その龍は・・・まさか・・・・龍人ロベールだと言うのか?・・・何故この場にいるのだ・・・」

 男の呟きに俺とシグルトは視線を合わせて頷き合った。

 「おいお前何でその名を知っている。俺はサザトラントには初めて来たし、その名を名乗った事も数える程なんだがな」

 俺の言葉にハッと顔色を変えた男は大声で周囲に命じた。

 「敵は子供の龍と一人だ。龍とはいえ子供なら大した力は持っていない何時もの様に包囲してなぶり殺しにしろ」

 周囲にいた兵士達が戸惑いながらも命令に従って包囲して襲い掛かって来た。

 「大人しくくたばれや」

 初めに斬りかかってきた兵士の剣を自分の剣で受け止め様としたが、俺の剣はぶつかった瞬間に相手の剣をアッサリと斬ってしまった。

 「な・・なな・・・・」

 俺もこの結果に驚いていたが混乱する兵士を見てニヤリと笑うと丁度良いので試し斬りをする事にした。腕なら治療可能なのでまずは相手の籠手に向かって剣を斬りつけた。剣は見事に籠手だけを斬って腕には傷一つなかった。結果に満足した俺は自分の身に何が起きたか分からず腕を見て混乱している敵兵の頭上に剣を振り下ろした。

 「ぎゃああああああああ」

 自分の体の中心を剣が通って行くのを体験した敵兵は悲鳴を上げると気絶してしまった。周りで其れを見ていた兵士達は理解不能の事態に腰が引けていた。

 「来ないなら此方から行くぞ」

 俺は素早く踏み込んで距離を詰めると近くの兵士から斬りかかって行った。兵士達も必死に抵抗していたが俺の持つ剣は触れたら斬れるので武器で受ける事も出来ず、盾も鎧も意味をなさないのでかわすしか対処方法が無いのだ。

 「おのれ魔法ならどうだ」

 火と水の矢が飛んで来たが俺はアッサリと剣で斬っていた。魔法も命がないので斬れるとは思っていたが実際に目にするとそう快な気分になれた。もっとも敵兵にして見れば魔法すらも斬る俺は化け物なのだろう。敵兵達の恐怖に引きつる顔が目に入った。

 「く・・く・・・来るな」

 怯えて後ずさる兵士の武器を容赦なく斬り捨てて俺は自分の動きが軽い事に気づいた。この剣は絶対に人を傷付けないので心理的な負担が無くなったのが原因だろうと思った。

 「その剣の力は見切ったぞ」

 そう言って大きな男が目の前に立ちふさがった。男は俺が斬りつける剣を無視してわざと斬られてからニヤリと笑って斬りつけてきた。

 「うおおおおおお」

 驚きの叫びを上げながらも咄嗟に飛び退いた俺の目の前を男の剣が通過していった。

 「やはりそうだ。お前の剣は斬られても無害だ。気絶したのは斬られた恐怖に負けた所為だな。理解してしまえば防ぐ必要さえないわ」

 大きな男の声を聞いた周りの兵士達の目つきが変わって、俺の剣を無視して皆が斬りつけてくる様になった。途端に不利になって斬りつけて来る武器を斬って身を守る破目になった。

 「はあーーー、何をしているんだ。サッサと魔法を使えば良いんだ」

 ため息と共にシグルトの声が聞こえたと思ったら目の前で竜巻が発生して三割ぐらいの敵兵を巻き込んでいった。遠くで竜巻が消えて巻き込まれた敵兵が地面に叩きつけられる音が響いていた。巻き込まれなかった敵兵達の動揺した表情を見て此処までだなと思った。

 「もう少しこの剣の力を確かめたかったんだがな」

 「ロベールが新しい剣で遊んでいる間に敵の隊長は逃げたみたいなんだ」

 シグルトに白い目で見られた俺は周りを見たが確かに話をした男がいない事に気づいた。

 「・・・・・うわ、本当にいないし・・。まいったね。でも隔離しているから出られないだろ?」

 「出られないけどそれなりの広さだから探すのが面倒なんだ」

 再び白い目を向けられた俺は首を竦めると周りで隊長の逃亡に気づいて呆然としている兵士達に告げた。

 「お前達の隊長は逃走した。大人しく降伏しろ。降伏しない者は魔法で攻撃する」

 俺は雷の魔法を強化して誰もいない場所に放った。ゴロゴロズドンと言う轟音と共に大気が振動して雷が落ちた。地面が深く抉れてバチバチ言うのを聞いた兵士達は武器を取り落として腰を抜かしていた。その後討伐隊の全ての兵士を空間にしまった俺達は一人で逃げた隊長を探す為に移動を始めた。

 今週末の土曜から月曜まで執筆出来そうにありません。依って次話の投稿を11日0時ごろにして次々話を16日0時ごろにさせていただきます。申し訳ありませんがご了承ください。

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