表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/194

契約者達と龍の里と親との会話

 後の事をロベルトに任せた俺達は天狐を連れて龍の里に来ていた。龍の里ではメルボルクスが沢山の龍達に話をして食料を集めてくれていた。

 「迷惑をかけているがよろしく頼む」

 「心配せずともすでに一部の食糧はリラクトンに送っているから安心しろ」

 「リラクトンの様子は如何だ?」

 「大半の人間は地下の生活に文句は言っていないが、一部の貴族が不満を口にしていて皇妹が説得して大人しくさせていた。元からいた住人は困惑していたが帝都の住人が直哉の管理下に入ると言ったら大人しくなったぞ。それと一部の子供達は我らにも慣れたみたいで食糧を持って言ったメリクルクスに纏わりついていたぞ」

 「そうか、一部思う所もあるが良い報告を聞けて安心した。此方の状況はシグルトが説明するから聞いてくれ。俺と香織達は先にガレオスの所に行って帝都の魔狼の事を話してくる事にする」

 俺達はシグルトを残してこの場を去った。メリクルクスの話を聞いた俺はなるべく親子だけの時間を作ってやりたいと考えていた。


 直哉殿達が去って行ったあとシグルトがメルボルクスに話し掛けていた。

 「父さん色々と協力してくれてありがとう。なのにまた頼みごとになるんだけど天狐を里まで送って欲しいんだ」

 「其れくらいなら問題無い。我が命じて龍に送らせよう」

 「タマミズキと僕が話して送る事も出来ると言ってしまったからきちんと約束を果たせて安心したんだ。それと父さんと母様に言って置かないといけないんだ。直哉の力について蘇生の可能性も含めてタマミズキが知ってしまったんだ。だからその心算で此れから対処して欲しいんだ」

 「・・・・それは困りましたね。タマミズキは如何言っていますか?」

 「天狐に必要以上の干渉をするなと言っていたから干渉しなければ問題無いと僕とフレイは考えているんだ。一応二人に敵対はしないと言質を取ったし、フレイが力を出して脅しておいたから当分は一緒に行動して様子見になるはずなんだ」

 「・・・そうか、何かあったらすぐに我に言うのだぞ」

 「僕達だけで対処出来ない時はすぐに言うから安心して欲しいんだ。それから話は変わるけど母様や龍の里は魔金を持っていたよね。僕に貰え無いかな」

 「・・・・・・・・・・・何に使うのです・・」

 「魔金と魔銀を合成して魔金銀の武器を作るんだ。帝都が消滅する様な状況だし此れから何があるか分からないから確りとした武器を持った方が良いと僕は思うんだ」

 難しい顔をしてしまった私に何か問題でもあるのかとシグルトが身構えているのを見て私は深いため息と共に話し始めた。

 「はあーーーーーー。シグルトの頼みなら仕方がありません。持って行くのは三割だけです。それだけあれば十分でしょう、それで良いですね」

 「うん十分なんだ。ありがとう母様。今回は他にも色々あったから全部説明するんだ」

 私はメルボルクスと共に緊張した声で今まであった事を話すシグルトを心配しながら話を聞いていた。しかし正体不明の敵の話になってその話の内容を聞いた瞬間から私はメルボルクスと共に難しい顔をして考え込んでしまっていた。何が気になるのか分からない私は暫くの間そのまま考え込んでいたがジッと動かないで待つシグルトに気づいて話し掛けた。

 「シグルトは此れから異世界に転移するのでしょう。帰って来るまでに色々考えて魔金の準備もして置くから直哉殿達と合流しなさい」

 「うん、母様行ってくるんだ」

 嬉しそうにシグルトが飛んで行くのを見届けるとメルボルクスが話し掛けて来た。

 「あれほど苦労して集めた魔金を手放すとは思わなかったぞ」

 「シグルトの頼みなら仕方ないでしょう。母親として子供の頼みは断れません。ですが妻として夫には期待してしまいます。愛にかけて減った分の補充はしてくれるのでしょう」

 私の目の前でメルボルクスは引きつった顔で彫像の様に動きを止めていた。動かないメルボルクスを見ながら私は昔を思い出していた。龍の中には何かを集めるのが好きな者達がいるのだ。温泉のお湯、果実、宝石など龍に依って色々違いはあるが昔の私は魔金を集めていた。別に何かに使う訳では無いのだが昔の私はメルボルクスにも手伝わせて兎に角集められるだけ集めていたのだ。

 「あのだな・・今は流石に色々とやる事があるからすぐには無理だぞ」

 「其れくらい私も分かっています。今はシグルトの事が最優先です。でもメルクスなら時間を作ってくれると思ってますよ」

 今では私しか呼ばない呼び方で呼ぶとメルボルクスは大きな体を震わせていた。蒼い顔をしたメルボルクスの考えている事など私には筒抜けだった。不確定領域で領域の主がいる場所に魔金が沢山あるのを確認した私についてきて主と戦った事でも思い出しているのだろう。確かにあの主との戦いは死ぬかも知れないと思う程厳しい戦いだった。十メーラを超える巨体とブレスに燃やされながらも平然と突撃してくる獰猛さ、更に隕石の様な物を空から落としてくる魔法を無尽蔵に使って攻撃してくる主の強さは年を取った龍でもないと互角には戦えない程だった。若かった私とメルボルクスは力を合わせて四日目の朝まで戦い続けてボロボロになりながら、かろうじて勝つ事が出来た。しかし私は致命傷ではないがかなりの傷を負ったので手に入れた魔金はメルボルクスが一匹で空間に入れ、更に空間に入りきらなかった物は背負って里に帰る事になったのだ。

 「大丈夫よ、私も今は母親なのだから無理はしないわ。まだ子供のシグルトを残して死ぬ訳にはいかないもの」

 私の言葉にあからさまにホッとするメルボルクスに笑いを堪える事が出来なかった。しかし雑談をしながらも私は姿が変わったと言う敵の事を心の中で考え続けていた。


 「この魔狼は傷が酷いので時間をかけて治療を行うから暫く此方で預からせて貰うぞ」

 俺は帝都で確保した魔狼を見せながら告げたが、ガレオスは無言で傷付いた魔狼を見つめていた。

 「ガレオス、僕は此れから主の為に魔狼の里に行って魔銀を持って来ようと思っている。もし報告に戻るのなら魔銀を持って来るのに協力して貰いたい」

 「・・・・・ルードルが協力を求めるとは思わなかった。随分変わったものだな」

 「今も本質は変わってはいない。ただ主の為だから行動しているだけだ。其れに今回はこの男に借りを作らない為でもある。此の男はその状態の魔狼を治療すると言っているから分かるだろう」

 「我らの対価が足りないと言うのだな。ルードルの口からそんな言葉が出るとは長が聞いたら自分の正気を疑いそうだな。前の報告でルードルが香織に飼われる事になったと言ったら正気を失ったと思われて拘束されそうになったのだぞ」

 「・・・分かった。里に着いたら長達に説明をするからそんな目で睨まないでくれ」

 「頼んだぞ。さて直哉この魔狼の事は任せるが帰って来た龍達から帝都が消滅したと聞いている。我らに言う事はあるか?」

 「帝都の事はルードルから聞いてくれ。俺が頼みたいのは長に商連合国との戦いが終わったらメルクラント卿と過去の事で話をして欲しいと思っている」

 「過去とは人間が戦いを挑んできた時の事か?だが話をする意味があるのか?」

 「ルードルが過去の話を俺達にした事でお互いの認識がずれている事に気づく事が出来たんだ。まあ細かい事は一緒にいたルードルが知っているから長達と話し合ってくれ」

 「待て何故僕がそんな・・・・・」

 言葉の途中で香織のジトッとした視線に気づいたルードルが言葉に詰まっていた。

 「・・・・・・主の為だ喜んでやらせて貰おう」

 「ルードル、お前・・・・・いや何でもない。行くのなら早い方が良いだろう里に着いたら色々しなくてはならないみたいだから時間は沢山あった方が良い」

 二匹は視線を交わして頷くと疾風の様に駆けて行ってしまった。残された俺達は唖然と見送るしかなかった。


 魔狼との話が終わってシグルトの元に移動している時にタマミズキが話し掛けて来た。

 「ねえ直哉私が此処に残ってまで此の二匹を見送る必要はないと思うわ。此処は龍の里だから危険もないでしょう」

 「正体不明の敵を見ている二人だし、今は何が起きるか分からないから最後まで女王の姉としての役目を果たしてくれ」

 「其れは分かっているけどこの後直哉は家に帰るのでしょう。私は直哉の親に会いたいのよ。ほら私を紹介してくれないとね」

 甘い声を出しているがタマミズキは俺の親に会って何か弱みは無いか探ろうとしているのだろう。

 「駄目よ。タマミズキをお父さんとお母さんに会わせる訳無いでしょう。私の飼い狼のルードルですらまだ会った事はないのに、少し前に会ったばかりの女を紹介するとかありえないわ」

 「なあに嫉妬しているの?私はただ会って見たいだけなのよ」

 「冗談はやめなさい。タマミズキの考えている事くらい分かっているわ。今回はルードルもいないのだから引きなさいタマミズキ。如何しても親に会いたいならルードルもいる時にしなさい」

 視線をバチバチと交わしていた香織とタマミズキは同時に視線を逸らした。

 「分かったわ。今回は引きます。直哉達とルードル達が帰って来るまで此処で待っているわ。でも早く帰ってきてくれないと寂しいわ・あ・な・た」

 最後の言葉をわざわざ俺の耳元でささやいてから妖艶に笑うとタマミズキは素早く離れて行った。何時の間にか他の二匹の天狐も居なくなっていて引きつった顔の俺と怒りを押し殺した香織と微笑を浮かべるフレイだけがこの場に残された。

 「お兄ちゃん分かっていると思うけどあの女には気を付けてよね。お兄ちゃんあの狐耳の所為か耳元まで簡単に近寄られ過ぎだよ」

 「ああそうだな気を付ける」

 狐耳は関係ないだろうと思いながら返事をした俺は、ふと今此処にはフレイがいるだけなので香織に贈り物を渡す良い機会だと気づいた。フレイに小声でしばらく離れていて欲しいと伝えて移動して貰うと香織に話しかけた。

 「香織が訓練している時にバルグーンの町を歩いて見たんだが、その時に香織にと思って買ったんだ。受け取ってくれないか」

 俺がそう言って大事にしまっていた強化済みのペンダントを出すと、香織は驚きながら赤い顔で受け取ってくれた。

 「お兄ちゃんありがとう。つけてくれるかな」

 赤い顔で自分の髪を持ってから後ろを向いて首を見せる香織にドキドキしながらペンダントをつけると香織が満面の笑みを浮かべて振り向いた。不覚にも俺は香織に見とれてしまった。

 「お兄ちゃん如何かな」

 恥じらいを含んだ声で赤い顔の香織が尋ねてきた。

 「ああ綺麗だよ。良く似合っている。後そのペンダントは身を守る魔法が発動する魔道具でもあるから常に身に着けていて欲しい」

 「お兄ちゃんから貰った物だから言われなくてもずっとつけているわ」

 そう言って笑う香織に今までにない魅力を感じてヤバいと思っていると俺を呼ぶシグルトの声が聞こえた。

 「直哉此処に居たんだ。探したんだ」

 「ああ、シグルトは何をやっていますの。今とても良い処だったのに・・・・」

 離れていたはずのフレイの声が近くで聞こえてジッと見つめるとフレイはしまったと顔に書いてある様な表情をしてシグルトを盾にする様に移動した。そしてシグルトに今あった事を小声で話しているみたいだ。

 「そうだお兄ちゃん、私も渡す物があるんだよ。はいこのお守りを持っていてね。それは結界を張る事が出来て登録していない人が結界の中に入るとこのイヤリングが鳴って教えてくれるの。寝る時に使ってくれるよね」

 香織の言葉にため息が出そうになった。それはお守りではなく監視道具の間違いだろうと心底思った。状況を理解したシグルトは俺を見て首を振っていた。あれは諦めろと言う意味だとすぐに分かった。

 「何とも言えない贈り物だが使わせて貰うよ」

 「うん、あの女の魔手からは私が守るからお兄ちゃんは安心して良いわ」

 決意を述べる香織には悪いが早く家に帰って安全な自分の部屋で休みたいと心底思った俺は、里で今する事は終わったのでシグルトに頼んで家に転移して貰った。


 家に帰ると何時もの様に両親が俺達の帰りを待っていてくれた。親の顔を見て帰って来たと安心して緊張が解けた事に気づいて、気づかない中に余裕がなくなっていたんだなと思った。

 「ただいま父さん、母さん。今回は色々話す事が沢山ある。聞いてくれるか?」

 「向こうでは親なのに何も手伝えないから話ぐらいはいくらでも聞く。話してみろ」

 俺はファーレノールであった事を全て話した。話を聞き終えると両親は俺達の無事な姿を確かめる様に見つめてきた。

 「言いたい事が多すぎて何から言おうか迷うがまだ如何にかなる事から話そうと思う。香織は暗器術を習得して如何するんだ。親として娘が習いたいと言っても到底許可出来るものじゃないぞ」

 父さんの何時にない厳しい視線に晒されて香織はビクついていたが深呼吸して決意の籠った声で話し始めた。

 「お兄ちゃんを狙う天狐の撃退と危険もある世界だから戦うすべを習得しておきたいのが一つ目の理由よ。二つ目は契約者である私やお兄ちゃんが殺されたり傷付けられたりするのなら暗殺などの普通では無い手段になると思うの。だからその方法を知って対処方法を確立しておきたいの。実際今回暗器を見せて貰ったけど発想の違いがあって驚いた物がいくつかあったわ。それに今は脅威になりそうも無いけど未来は分からないと思う物が何個かあったわ」

 香織の発言に親だけでなく俺までギョッとしてしまった。天狐の事とかだけだと考えていた俺は二つ目の香織の言葉に認識を改める必要を感じていた。言われて見れば確かにそうなのだ。俺達に正面から挑んで勝てる者はいないから本気で俺達に勝とうとするなら方法は限られているのだ。何故考えなかったのか考えてすぐに分かった。俺は強化した魔法で毒でも簡単に治療出来るから即死さえしなければ如何にかなると考えていたのだ。心の中で反省する事にしてから親を見ると親も何とか驚愕から立ち直ったみたいだった。

 「香織の言いたい事は分からなくも無いんだが自分で習得する必要は無いんじゃないか。確か向こうの世界にも何人か信頼出来る人がいるはずだ。香織はまだ子供だからそう言う事の対処は大人にして貰うのが良いと思うぞ」

 「うーんそれじゃあ駄目なのよ。今お兄ちゃんの傍にいる天狐の対処は自分でしたいし、何より長い目で見れば寿命の事もあるし自分で習得した方が良いの。何時も助けてくれる人がいるとは限らないし、それに大人になって子供でも出来たらヤッパリ自分の力で守りたいわ」

 俺が贈ったペンダントに触れながら微笑む香織の姿に母さんが口を挟んできた。

 「そのペンダントは直哉からの贈り物かしら?そんな高そうな宝石を贈る所まで関係が進んだの?子供の事を口にしていたし、あっちの世界では親の目も周りの目もないから何かあったのかしら?」

 「・・・・・なんだと、直哉如何言う事だ?」

 押し殺した声を出す父さんに焦った俺は叫ぶ様に声を出した。

 「俺は何もしていない。ただこの所色々あった上に天狐の事もあったから香織に贈り物を贈っただけだ」

 「あらあらその慌て様では如何やら何もない様ね。こんな高価な宝石を贈るくらいだから何かあったのかと期待したのに・・・・・」

 「ねえ、お母さんこのペンダントはそんなに高価なの?」

 「そうねえこの宝石は異世界の物で此方の宝石では無いから絶対とは言えないけど、仕事で宝石を見る機会の多い私の目は誤魔化せないわ。異世界で物価が違う事を考えても直哉はかなりのお金を使ったはずよ。此れはペンダントだけど、たぶん結婚しようと言っても恥ずかしくないお値段を超えていると思うわ」

 香織は驚愕と共にペンダントをマジマジと見つめていた。そして贈って良かったと思えるとても嬉しそうな顔でニコニコと笑っていた。母さんはそんな香織を温かい視線で見守っていたが突然父さんの顔を見ると話しかけた。

 「昔を思い出したわ。直幸さんも昔は多少の無理をして普段は買えない高い指輪を贈ってくれていたわね」

 母さんの言葉に父さんはビクつくと俺を睨んできた。その視線はお前の所為だぞ、如何してくれると訴えていた。俺が知るかと思って無視をしていると、そんな俺達を見て母さんは苦笑してから表情を厳しくして話し始めた。

 「先程の話だけど此方とあちらは違う世界で私は行った事が無いから香織が如何しても必要だと言うのなら反対出来ないわ。でも教わった暗器術を暗殺とかに使う事はしない事と使用は対処する為だけに限定すると約束しなさい。此れが約束出来ないのなら許す訳にはいかないわ」

 「約束するわ」

 母さんが香織と視線を合わせてジッと見つめると静かな重みのある声で告げた。

 「そうなら好きになさい。この件は私が責任をとるわ」

 何か言おうとした父さんは母さんの言葉と視線に口を噤んでいた。

 「ありがとうお母さん、私を信じてくれて・・・」

 言葉を詰まらせた香織に母さんが近寄ってから小声で話し掛けていた。そんな二人を見ていた俺に父さんが俺にしか聞こえない様な小さな声で告げた。

 「二人が寝たら此処で話をしよう」

 驚きながらも二人に気づかれない様に静かに頷いた。

 「さあ二人は色々あって疲れているだろう。残りの話は週末まで時間があるから毎日少しずつ話すとして、後は楽しい会話でもしながら食事をしよう。二人とも色々あって気づいていないだけで精神が疲弊しているはずだから、向こうの世界の事を考えるのを今はやめてゆっくり休むと良いだろう」

 父さんの言葉に母さんが食事を運んできて皆で食べる事になった。


 久しぶりに母さんの料理を食べて安らいだひと時を過ごす事が出来た俺は、自室でユッタリとした時間を過ごした後で二人が寝たと思える時間に言われた通りに部屋を出て移動した。シグルトは気づいているかも知れないが動かなかったので了承していると考える事にした。

 「やっと来たか、まあ座れ」

 父さんが話し掛けてきたので言われた通りに座ると今まで見た事がないと言うぐらいに真剣な表情で話を始めた。

 「先程の話は帝都消滅など色々あったが父親として気になるのは直哉が人を傷つけたと言う事だな。帰って来た直哉の顔を見た時にかなりの無理をしているなと感じた。香織や沙耶には言えない事でも今なら二人だけだ話してみろ」

 父さんの言葉を聞いて気づいた時には言葉が口から飛び出していた。

 「シグルトが治療をしたから相手は死んではいない。けど斬った時に昔刺された時の痛みを思い出してしまった。その時は理由も分からず体が震えて混乱した。その所為で香織達に守られたんだ。本当は俺が香織を守らないといけないのに・・・」

 「・・・そうか、良くも悪くもあの時の事件が今の直哉の原点になるから震えても仕方がないだろ。抑々事件の前の直哉は楽観的な部分もあったが、今の直哉はその部分を押し殺して慎重に先の事を考えて行動する様にしていて親としては心配だし不安でもあったんだ。まあこの前話をして直哉の事情は理解したから今は一人で抱え込む直哉を心配しているだけだ。後言える事はもう香織も小さな子供じゃないし偶には守られても良いと私は思うぞ。父さんだって沙耶に頼ったり迷惑を掛けたりしているから気にするな。それに全く頼らないのは必要ないと思われている様で辛いと昔沙耶に言われた事がある。そして香織は沙耶に似ているからたぶん同じ様に考えるはずだ」

 「そうかな?そうだと良いんだけど。少し話して楽になったよ。ついでに他にも話を聞いて貰えるかな」

 「兎に角話してみろ」

 「帝都で全ての人が救えた訳ではないんだ。それに俺の作戦で戦って傷付いた人が大勢いる。勿論魔法で治療はしたけどこれも全ての人を完璧に治療出来た訳ではないんだ。なのに皆は俺を責めたりしないで感謝するんだ。そして俺はその感謝の気持ちが段々重く感じられる様になったんだ」

 「その場を見ていないので想像で話すが責められていない以上直哉の判断は間違っていないと考えて良い。直哉はもっと良い判断があったんじゃ無いかと考えているのだろうがそんな物はない。あったら抑々悩む必要のない今が有るはずだ。それと直哉が重く感じているのは人々の期待だろう。周りの皆から直哉なら何とかしてくれると思われているんだ。それが力を見てなのか行動を見てなのかは分からないが、抑々その期待は一人で背負わなければならないのか?辛いのなら誰かに代わって貰うのも良いし、助けを求めて一緒に背負って貰ってもいいだろう。直哉には一緒に背負ってくれそうな人が周りにいるだろう。勿論親である私達も直哉が望むのなら背負う覚悟はあるぞ」

 父さんの言葉を聞いて頭をガシガシと掻いて俺が一人ではない事を考えて少し気が軽くなった気がした。

 「まだ話したい事があるんだ。俺は今自分が怖いのと周りの視線が怖く感じる事があるんだ。帝都が消滅した時の光に巻き込まれそうになった時に実感した事がある。俺の力は強すぎるんだ。帝都の消滅した後を見た人達は言葉を無くした様になったけど、俺はその気になればその被害が気にもならない程の破壊を行う事が出来るんだ。その事を知られたらどう思われるかと考えると不安になる。そして此れは気のせいなら良いんだがそう遠くない時に力を振るう事になる様な気がするんだ。帝都を消滅させた商連合国が他に同じ様な威力の兵器を持っていたら皆を守るにはそれ以上の攻撃を放って押し返すしか方法がないんだ。だから俺が商連合国の人間を殺す事になる可能性が高いと考えている。それも一人二人ではすまない数の沢山の人間を・・・・・」

 俺の言葉に父さんは流石にすぐには答えずに厳しい顔をすると目を瞑って考え込んでいた。暫く待つと父さんが静かな重みのある覚悟の籠った声を出した。

 「正直に言おう。前にも言った様に親として息子が人を殺すなど考えたくもない。だが攻撃を受けて反撃しないと直哉や香織が死ぬのなら其れを禁じる心算はない。いやハッキリ言おう。父親として顔も見た事のないそれも異世界の人の為に息子や娘が死ぬなど冗談ではない。直哉と香織が生き延びる事を最優先にしろ。親としては戦争などに行って欲しくはないのだが其れは無理なんだろう?」

 「ごめん、向こうにも死んでほしくない人達がいるんだ。正直言って俺達がいなくなったら戦いにならないと思う」

 「ふん、直哉達がいないと戦えないとはな・・・。もし直哉が皆を守る為に力を振るってそれを恐れる様なら此方の世界で過ごせば良いと考えておけ。少しは気が楽になるだろう。後最後に言っておくから忘れるな。直哉も香織も何があってもどんな決断をしてもずっと私達の息子と娘だ。そう言う結論で沙耶も香織も良いな」

 「なにーーーーーーーーー」

 父さんの最後の言葉に心底驚愕して父さんの視線の先を見るとバレチャッタと言いそうな顔の香織と温かく包みこまれそうな笑顔の母さんがいて更にシグルトとフレイもいた。

 「・・・何時からいたんだ・・・」

 「・・・えっと殆ど初めからだよ・・」

 「そうね。香織に守られたんだとか言っていたわね」

 母さんの言葉が心に突き刺さった。今の俺は真面目に語っていたのを聞かれて羞恥心だけで死ねそうだった。

 「おい父さん二人だけだと俺は確かに聞いたんだが?」

 羞恥心と怒りを押し殺した俺の言葉に父さんは堂々と言い放った。

 「俺が言った後に香織や沙耶が来たんだ。言った時はまだ二人だったぞ」

 その言葉を聞いた俺は羞恥心と怒りが限界を超えたのが分かった。そして心の中が静かになって冷静?冷徹?になるのが理解出来た。

 「父さんを信じて話した男と男の二人だけの話を結果的に暴露したんだ覚悟は良いよな。良くないと言ってももう遅いけど・・・母さん書庫の本の間に父さんは・・・・」

 「待てーー、今何を言おうとした。直哉あの時内緒だと言っただろ」

 「何が内緒なのかしら直幸さん?」

 母さんに尋ねられて答える事の出来ない父さんに非情にも告げた。

 「父さん、俺も恥を晒す事になったから父さんも晒さないと不公平だろ。だから諦めるんだな。母さん其処にある物を見て父さんは綺麗だと言っていたよ。今については何も言って無かったけどね」

 俺の追撃に父さんは顔色をコロコロ変えて最終的には終わったと言う顔をしていた。だが今の俺には当然だと思えた。母さんだけならまだしも香織がいる事に気づいていて黙っていたのは許す事の出来ない大罪なのだ。兄としても男としても弱音を見せたくない相手に見せてしまって俺の受けた心の被害は甚大だった。今は恥ずかしくて香織の顔を真面に見れなかった。

 「シグルト部屋に戻るぞ」

 声を出して素早くシグルトを抱えると逃げる様に部屋に戻った。戻った部屋でシグルトから聞かれたくなかったのなら空間を隔離すれば良かったのに何故しなかったんだと言われて、本気で忘れていた俺は答える事も出来ずに茫然として眠りに逃げる破目になった。

 次話の投稿は4日になります。申し訳ありませんがご了承ください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ