契約者達と葬儀と新たな一歩
ゆっくりと休んだ俺達は今リラクトンに居る炎で確かめて問題無いと判断された、全ての人達を集めて葬儀場に立っていた。戦いが終わって俺達はレクトンの町で出た死者の葬儀を初めに行う事にしていた。俺が空間から全ての死者を出すとレクトンの町の生き残りの人々からすすり泣きが聞こえてきた。身内や知り合いを見つけて泣く人を見るたびに俺は力を使わない様に自制していた。シグルトが俺の気持ちを察して隣で俺が我慢出来なくなった時の事を考えて何時でも動ける様に待機しているのが感じられた。バルクラント卿達や戦った兵士もいたが居心地が悪そうだ。しばらくするとリグレス公爵が台の上に立ち、話を始めた。
「今日此処に集まった者達は炎を使って問題無い事が確かめられているので今から話す事で争わないで最後まで静かに聞いて欲しい。リラクトンで前代未聞の数の逮捕者が出た事は皆知っていると思う。此れから奴らがやっていた事を話そう」
リグレス公爵の声が静かな葬儀場に響いていた。途中で怒りの声や罵声や騒動が起こりそうになっていたが騎士団などの手で収められていた。ちなみに子供の耳には聞こえない様にフレイが魔法で調節しているから安心だ。
「・・・以上が奴らがやっていた犯罪の内容だ。奴らは後日皆と共に適切に裁く予定だからその時まで冷静に行動して欲しい。またこの通り私が今までこの様な犯罪を見過ごしていた事を詫びさせて貰う。すまなかった。さて葬儀の前にこの様な話をしたのには理由がある。私は今この時をもって赤き太陽教を国教と認めない事を宣言する。今後このリラクトンでは神官が必要以上の権力を持つ事を認めないし、各種の特権も廃止する心算だ。今後は宗教は基本的に法に反しない限り自由に選んで信じて欲しい。無論何も信じないのも問題無い」
リグレス公爵の言葉に人々はまるで太陽が地に落ちた様な驚愕の表情で凍り付いていた。嘘だろとか馬鹿なと言う言葉が人々の口から溢れていた。しばらく経って場が落ち着くとリグレス公爵が口を開いた。
「レクトンの町の人々に尋ねるがあそこにいる真面な神官に頼んで従来の方法の葬儀を行うか行わないかを選んで欲しい」
リグレス公爵の言葉の意味が分からずに人々が騒ぐ中でクーヤさんが質問した。
「公爵様、選ぶと言っても神官が祈りを捧げて跡形もなく燃やすのではないのですか?」
「普通ならそうだが今回の場合嫌がる者もいるかも知れないと思って述べたのだ。詳しい事は葬儀の後で広場に此れからの事を話す場所を設けているので其処で話すが、此度の騒動は他国と神官が深く関わっているのだ。神官を拒否するのなら選択としては自分でやるかカリーナ殿にやって貰うか、またはそれ以外に何か思いつくのなら其れでも良い」
リグレス公爵の言葉を聞いて話し合った人々は四割の人が神官に一割の人が自分でそして三割の人と遺族がいない人を合わせて五割を香織が行う事になった。神官達が祈りを捧げたあと一人一人に火をつけていった。完全に燃え尽きるまで何度も火をつけているので大変そうなのが、気になってロベルトに聞いて見ると呆れた顔をされてから納得顔で話してきた。
「お前の常識が如何なっているのか知らないが、死体を其のままにしていたり骨が残っていたりしたら動く事があるだろう。だから完全に燃やして太陽にいる神の元に送るのが普通だ」
一瞬何を言われたのか分からなかったが香織の顔が蒼くなって目つきが凶悪になって寒気がする気配を出しているのを目にして、理解すると慌てて香織を落ち着かせる為に手を握って話しかけた。
「大丈夫だ俺は此処にいるぞ。怖い事は何もない。何が起きても俺が守るから問題無いぞ」
香織が落ち着いたので手を放すと周りの人々がホッとしてため息をついた。
「一応皆に言って置くが今の様な話題は禁句だ。子供の時に俺は一度限界を超えた妹が暴走したのを体験した。ロベルトが見た服の時のを五倍にすれば理解出来ると思う」
五倍と聞いたロベルトが蒼い顔をして絶句するのを見た人々はさり気無く皆で話題を変えていった。巧みに話題を変えて話していると香織が燃やす人だけになった様だ。香織と共に前に行くとクーヤさんが代表して話し掛けてきた。
「お願いします」
此の一言に沢山の思いが込められているのが感じられた。俺達は気を引き締めてから返答した。
「任せてください」
皆で祈りを捧げてから魔法で燃やす時がきた。
「私は死者の肉体だけを燃やすと決めた」
香織の金の炎が薄く広がっていったのを確認してから俺は炎を強化して強めた。死者達が燃えると言うより消滅と言うのがあっている様な速度で燃え尽きていった。そしてその後に起きた現象は皆の声を奪っていった。燃え尽きた死者がいた場所から金色の光の粒が空に向かって舞い上がったのだ。沢山の光が舞う光景はまるで魂が天に昇っている様な気分にさせられた。香織の炎が消えて空の光が消えても暫くは誰も動かずに空を見て佇んでいた。
「予想外の事が起きたが此れで葬儀は終わりにする。皆は一クーラ後に広場に集まってくれ。全員が座れる様に場所が用意されている。今赤帝国で起こっている事の説明と、此れからの未来の事を皆で話して考えて決める大切な話し合いになるので全員参加してくれ。途中である食べ物を皆で試食するからその積りで食事をとってくれ」
リグレス公爵の言葉に皆が行動を始めた。俺達は準備の為にすぐに広場に向かった。
時間が経ち広場に全員が座るとリグレス公爵が重い口調で話を始めた。
「今の赤帝国は契約石の存在でおかしな事になっているのだ。契約石とは魔力のある生物を閉じ込めて無理やり力を搾り取る物だ。此れは人間も例外ではない。しかも龍を初めとした五幻種達を契約石を作る為に襲ったので怒りを買っていて何時襲われてもおかしくない状況だ。今襲われていないのは此処にいるロベール殿とカリーナ殿の二人の契約者が間に立っているからだ」
リグレス公爵の言葉にどよめきが広がった。
「更に不味いのは此の契約石はルベイル殿下が作った事になっているが本当は商連合国の者が作った可能性が高いのだ。そして神官達は此の事を知っていてルベイル殿下を唆した可能性が高い。騎士団長の事件で知っている者もいるだろうが我らの中に裏切り者が多数いたのを捕らえて話を聞いた所、如何やら疲弊した所で侵攻する計画がある様なのだ」
人々も今の状況が最悪に近い事を理解したのか静かに話を聞いていた。
「私は今後帝都に進軍してルベイル殿下を打ち倒し、その後はガルトラントで黒幕の商連合国の侵攻を撃退する心算だ。だがこの様な事は私だけの力では成功しないだろう。だから皆の力を貸して欲しい」
流石に簡単には頷けない人々は何故殿下と手を取り合わずに戦うのかと言う質問を初めに次々とリグレス公爵に質問を投げ掛けた。リグレス公爵は一つ一つ丁寧に理由を答えていった。全ての質問に答えた時は二クーラ程経っていた。
「さて時間も経った事だし、試食をしながらロベール殿に今後の国の未来がどうなるか語って貰おうと思う」
リグレス公爵の突然の言葉に視線を向けるとニヤリとした笑顔を浮かべて手招きする公爵がいた。リグレス公爵の隣に向かって歩きながら、こんな大勢の前で話した事のない俺は心の中で混乱しかかっていた。しかし香織の心配する視線を感じて気を取り直すと覚悟を決めて話を始めた。
「今皆さんの前に出されている食べ物はケーキとクッキーと言って飲み物は紅茶と言います。袋に入ったクッキーの方は二袋有るので一つはお持ち帰りください。袋を開けない限り一月は持つ様に作ってあります。まずは食べて見てください」
人々が出されたものを食べて大人が甘さに驚いている横で子供達が美味しいと騒ぎ始めた。皆が落ち着くのを待ってから話を再開した。
「戦いが終わった後になりますがこの様な食べ物を普通に食べられる場所にしようと考えています。次に今回の事で分かった様に真面な治療を受けられない現状を変えて、確りとした治療を受けられる様にして子供や赤子の死亡率を減らそうと思います」
「ちょっと待って貰おうか。儂はリラクトンで商人をしているが今食べた物は如何見ても金貨を使って食べる物だろう。調子の良い事を言って騙そうとしていないかね」
商人の言葉を聞いた人達から厳しい視線が飛んできたが俺は笑いながら答えた。
「其れは今の値段でしょう。確かに今、砂糖は貴重品で高価な物ですが、地下の俺が権利を持っている場所で大量生産をして安価にする予定です。結果このケーキも銀貨数枚程度で販売する予定です」
「銀貨数枚だと・・・・そんな馬鹿な・・・・」
「更に言うとこの様な商品は此れだけではありません。例えば此の強化魔石なども今後の主力商品です。地下の家ではすでに使っていますが保冷庫を此れ一つで一年は使えるはずです」
商人達とバルクラント卿は椅子を蹴倒して立ち上がると目の色をかえていた。
「本当なのか?それが出回ったら魔石の価値はなくなるぞ」
「今地下で使っていますから商連合国との戦争が終わる頃には今までの物より長く使える事は実証されているでしょう」
「ロベール殿の発言は公爵として私が保障しよう。ミルベルト卿も同じ意見だ」
「公爵様、ロベール殿が持っている権利はどの程度の物なのですか?」
「徴税権も含めて地下の半分の全ての権利を所有する事が保障されている。地下の半分については私はいかなる権利も行使しない。此れはロベール殿が死ぬまで変更はしない予定だ」
商人は何故か俺を見て絶句しているし、バルクラント卿は公爵に詰め寄っていた。
「正気かいくら何でも・・・」
「バルクラント卿、此れは未来の為に必要な事だ。納得がいかないなら別に話す場を設けるから落ち着ついてくれ」
リグレス公爵がバルクラント卿を宥めている横で香織がメイベル様と話していた。
「お兄ちゃんや私に何か隠していませんか?」
「カリーナさん安心してください。夫が二人に恩が有るのにおかしな事をする様なら私が対処しますから」
香織が一応納得して黙ったのを見届けてから人々が騒ぐのを止めるまで待って話を続けた。
「話が逸れたが基本は今より住みやすくする心算だ。俺の言葉を信じてくれる者達は協力してほしい」
「全員で協力しないでもよいのかね。物を売るのであれば儂ら商人の協力は必要だろう」
「協力して貰えるのならありがたいですが俺が考えている商売の仕方は今ある商売方法とは違います。だから商人でなくても俺が言う事を聞いて覚えて真面目に働いてくれる人なら歓迎しますし、逆に言う事を聞いてくれなかったり不真面目な人はお断りです」
「なあ俺は若くないが其れでも良いのか?」
「私は女だけど働けるのかい?」
商人以外の人が話し掛けてきたので全ての人に答えると皆が真面目な顔をして考え込んでいた。
「さてロベールの話は戦いが終わるまでに考えてくれれば良い。私達は明日から帝都攻略の為の軍の編成と補給物資を集める心算だ。私達が言った事を信じて協力してくれる者は騎士団の指示で動いて貰いたい。バルクラントの者も手伝って貰えるのなら歓迎するぞ。最後に私は此処で宣言して置く。今日から歩む道は今の赤帝国の維持でも安定でもない。今までの赤帝国の良い部分だけを継承して、赤き太陽教会の国教廃止を初めとしていかなる権力者も犯罪を犯せば逃す事なく裁く新しい住みやすい国家を目指す事を誓う」
リグレス公爵の断固とした言葉にその場は一瞬の静寂とその後の歓声に包まれて解散となり人々は此れからの事を考えながら去って行った。歓声が上がったのを聞いて俺達はホッとしていた。教会の事などは時が時なら断罪されてもおかしくない提案だったのだ。まあ其れだけ神官の犯罪が酷かったとも言えるが。俺達は何とか初めの一歩を歩き始めた。
「リグレス如何言う心算だ。徴税権を持たせる意味が分からないとは言わせないぞ」
「無論分かっている。徴税権を持つのは赤帝国では皇帝ただ一人だ。我ら五大貴族と言えど借り受けているだけだからな。集めた税金の四割は治めないといけない決まりだ」
「分かっているなら先程の発言は何だ。まさかとは思うがロベールを皇帝にする心算ではあるまいな」
「ミーミル次第と言いたい所だが其処までは考えていない。カリーナ殿がいなければ考えたかも知れないが、いる以上怒りを買う心算はない」
「では公爵はどの様なお積りなのか教えていただきたい。私もロベールには色々と思う事がありますので・・」
ニルストの顔を見て苦笑してから二人とミルベルト卿に考えを話した。
「初めは龍達との関係と地下をロベールに任せた時の利益を考えてそれが未来の為になると思ったからだ。だが今は其れだけでは無い。神官共の醜態の所為で教会の権威は失墜した。取り戻すのは不可能だし、むしろ此れからまだまだ酷い実態が表に出てくるだろう。赤帝国を支えていた柱が一つ無くなるのだ。私は出来れば代わりになって欲しいと思っている。皆も葬儀の時の事は見ただろう。一部の者達は既に二人を見る目が変わっていたぞ」
「リグレス様それを二人が受け入れるとは思えませんぞ」
「別に何かをして貰う心算は無い。この赤帝国でただ暮らしてくれれば良いのだ。今の神官は神の名を使って好き勝手しているが、二人の場合に同じ事が出来ると思うか?」
「しかし最悪の場合は二人の影響力が大きいのを嫌って未来の皇帝や貴族が排除しようとするのでは?」
「ニルスト殿、私は其処まで馬鹿なら滅びるしかないと考えている。其れに出来れば炎を使って定期的に馬鹿や不正をしている権力者を見つけて貰いたいとも考えている。今回の犯罪者の逮捕で私は二度と繰り返さない方法を作りたいと考えているのだ。権力者でも容赦なく裁ける者がいた方が良いと確信している」
「二人に説明はするのでしょうな。儂はロベルトと守ると約束して二人の意思を無視して利用しようする者とは仲良く出来ないのですが」
「戦いが終わったら話す心算だ。私とて妻に睨まれるのはごめんだ。二人は反対か?」
「・・・少し考えさせてくれ。だが帝都への進軍は共に戦わせて貰おう」
「父上よろしいのですか。あちらにはメルクラント卿がいるのですよ」
「話せるのなら説得出来ないかと考えている。此処で儂らが知った真実を話せばメルクラント卿の判断も変わるかも知れない」
「しかしメルクラント卿は魔狼の危険性を常に考えています。聞いた魔狼の行動を其のまま話せば拒絶する可能性が高いのでは?」
「ニルスト殿いくらメルクラント卿でも魔狼だけでなく龍や炎鳥まで敵になると聞けば一考はするだろう。試してみて損はない。さて確かめたいのだが帝都への進攻の指揮は此方が取って良いのかな」
「無論だ。敗者が指揮を執るなどありえん」
「そうか助かった。作戦を考えたのはロベールなので断られるかと思っていた」
ニルストがロベールの作戦と聞いて一瞬凄まじい顔をしていたが反対はしない様だ。明日からの行動について話し合って解散した。
俺達はベルスの元に向かった。
「少しは頭が冷えたか」
俺が声を掛けるとベルスは無言で見つめてきた。そんなベルスに試食した物を出してから今日の話を伝えた。
「・・俺は此れから如何なる。今までの事を考えれば処刑が妥当か?」
「お前は如何したいんだ。あと聞きたい事がある。バルマーが如何しているか知らないか?」
「俺はただ仇を討ちたいだけだ。あとバルマーは帝都に向かったはずだ」
「帝都か・・・。今の帝都について何か知らないか?」
「俺は牢でギルド長を殺した後は彼奴らと一緒にいただけだ。公爵が生きていると聞いて殺す機会を待っていた」
ベルスが自虐的な笑顔を浮かべながら話すのを見ながら俺は一つの提案をした。
「俺から提案がある。俺に訳ありの人間が集まっているんだが其の部隊の隊長として行動する心算はないか」
「・・・・何をさせる心算だ」
「先程伝えた未来を実現する為の行動の全てだ」
ベルスは俺の真意を確かめる様な視線を向けてジッと見つめてきた。
「嘘だったら俺は容赦なく裏切って殺そうとするぞ」
後ろで香織が言葉に反応して動こうとしたがフレイが止めてくれた様だ。香織の事はフレイに任せて俺はベルスに告げた。
「あの時は姿の事に気づいたので負けを認めたが二度目はない。其れにお前も本当に俺を殺せるとは思ってないだろ。何より俺は嘘を吐く積りはない。俺に今、必要とする労働力が手に入れば生活を良くする事は可能だ。戦いが終わった時にどれ位の人が信じてついて来てくれるかで全てが決まるから行動で信頼を得ようと思う。その手伝いが初めの仕事だが返事を聞かせてくれないか」
「・・良いだろう。お前の言葉が嘘でない限り協力しよう」
「ロベルト悪いがあいつらの所に連れて行ってくれないか。今頃また球を作っているだろうからな」
「待て帝都でもあんな攻撃をするのか?あんな物を中に入れて帝都に放ったら民も巻き添えになるぞ」
「安心してくれ中身はあれではない。民に被害は出ない様にする心算だ」
「・・・・そうか頼んだぞ。それじゃあベルスついて来てくれ」
ロベルトがベルスを連れて行ったあと俺は地下の拡張工事に、香織はミーミルちゃんの訓練に向かった。
時が経ち今日は一度帰る日だ。帝都攻略の準備は人々の協力もあり順調に進んでいた。俺は今日まで地下の拡張と強化魔石の事を探ろうとして使っている家に忍び込もうとした馬鹿の相手をして過ごしていた。馬鹿共は俺の作った家の防犯設備を身を持って確かめて今頃泣いて後悔しているはずだ。一方香織の方はミーミルちゃんの訓練と料理を教えていた。訓練の成果でミーミルちゃんは近くだけとはいえ半日程見る事を維持出来る様になった。リグレス公爵とメイベル様の喜び様に本当に良かったと皆で話した。今は少し早いかと思ったがお祝いに完成した地下城を贈る為に移動して中に入って説明している所だ。
「うわーーーー、兄様本当に此の城を貰っても良いのですか?かなりすごい事が聞いていると理解出来るのですが」
「勿論だよミーミルちゃんが住みやすい様に作ったんだぞ。例えば此処の部屋は遠見の瞳の力を増幅してより遠くを見る事や制御が簡単になる様な仕組みが有るんだ。もっとも強化魔石を十個使っても半月しか持たないから多用は出来ないんだが・・。まあ此の城の中の倉庫に強化魔石の予備が五十個あるから考えて使えば問題無いよ」
「私からもお風呂に温泉のお湯を入れておいたから後で入ってみてね。美容に良いんだよ」
「美容ですかお母様の様になれるでしょうか?」
ミーミルちゃんがメイベル様を見て不安そうな口調で香織に話しかけると香織はにっこり笑って答えた。
「大丈夫よ、沢山食べて運動すればなれるわよ」
「そうですわ、貴女はまだ子供なのだから心配する必要はありませんわ」
フレイも一緒に励ましているのを見て微笑ましく思っているとリグレス公爵が話し掛けてきた。
「直哉殿此の城の機能が凄いのは分かったが私の部屋が無い以上別に城を建てて貰えるんだろうね」
ニヤリと笑いながらのリグレス公爵の発言に冷や汗を掻きながらシグルトと顔を見合わせて相談してから告げた。
「リグレス様流石に俺も城をポンポンと贈るのは無理です。空間を確保出来ても費用は此れ位になりますがお支払いただけますか」
俺の提示した金額に今度はリグレス公爵が笑いながら凍り付いて冷や汗を掻いていた。
「いくら何でも高すぎるぞ。ミーミルに贈れるのだからこんなに高いとは思えない」
「ミーミルちゃんはずっと目が見えなかったから色鮮やかな見て楽しめる城を贈ったのです。ハッキリ言うと此の城の金額は示せない物件です。例えば此の一見すると普通の床や壁に見える石ですが此の石は虹石ですよ」
「虹石だと・・・・此れが全てそうだと言うのか・・・・・」
「虹石は時が経つと色が変わりますから目が見える様になったミーミルちゃんに贈る物として良いかなと思いまして。なあシグルト」
「僕達で考えたんだ。気に入って貰えた様だし僕としては満足なんだ」
「・・・・そうかミーミルの事を思ってくれて感謝する」
「私達の部屋はミーミルに言って適当な部屋を貰いましょう。地上より地下の方が住みやすそうですし」
メイベル様の言葉に地味に傷ついているリグレス公爵が黙り込んだ時ロベルトがやってきて声を掛けてきた。
「まだいたのか?もうそろそろ龍の里に転移する時間だぞ」
「香織時間みたいだ」
「もうそんな時間なのね。ミーミルちゃん一日留守にするけど訓練は帰って来るまでしないでね」
「はい分かりました姉様」
「ロベルト後は任せた」
「任された」
俺達は集まって近くの部屋に入ると龍の里に転移した。
「シグルト無事だったか。心配したぞ」
転移するとメルボルクスが慌てて近寄ってきた。
「如何したの父さん?」
「如何したの?ではないわ。大きな力を感じてから何があったのかと毎日心配していたんだぞ」
「私は無事だから落ち着きなさいと言ったのですが聞く耳を持ってくれないので大変でした」
「ごめんなさい、心配してくれて嬉しいんだ。でも気持ちは伝わらなかったのかな?伝わっていたら僕が無事なのは分かると思うんだ」
「気持ちは伝わって来たけどあれだけの力なら寿命が減っているでしょう」
「うっそれは・・・・・でも此処に居る皆で決めて使ったんだ。今回は否定してほしくないんだ。今までの事と此れからの事をまずは聞いて欲しいんだ」
シグルトは今までの事を話して聞かせた。途中でメルボルクスが何度か怒気を発していたがシグルトにその度に見つめられて何とか最後までジッとして動かなかった。
「想像以上に腐っているな。我としては人間を生かしておく必要を感じない。商連合国の者が後ろにいるのならいっその事我らの力で滅ぼしても良いのだぞ」
「いえ其処まではしないでください。ですがガルトラントと商連合国の国境に飛んで行って人に姿を見せて帰ってきて貰えませんか」
「姿を見せるだけで良いのか?攻撃しても良いのだぞ」
「お兄ちゃんの考えは多分警戒させて戦いを遅らせる心算なの。敵を殲滅するのなら兎も角ただ攻撃するだけだと貴族が沢山死んで唯でさえ混乱しているガルトラントの方が大混乱になって逃亡する兵士が出て敵に利する可能性があるからやらないのよ」
「そうですわね。兵士を纏める者がいないのでその可能性が高いですわ。でも直哉が其れだけの為に龍を動かすとは思えませんわ」
香織とフレイが口を挟んできて俺の真意を窺う視線を向けて来た。俺は肩を竦めると天狐の入った契約石を出してから声をだした。
「此の契約石を如何するか話して出来れば話の出来る天狐を連れてきて欲しいのです」
「中から出して連れて行くのではないのか?」
「天狐が魔狼の様に報復を考えるかも知れません。一度会って話したいのですが遠すぎます。だからお願い出来ませんか」
「良いだろう。我も待機しているだけでは暇だったからな」
少し考えてからメルボルクスが了承してくれたのでホッとしているとシルフレーナさんが話しだした。
「今度は此方の話ですがサザトラントが二つに分かれて戦うかも知れないそうです。まだ確実な情報ではありませんが頭に入れて置いてください」
当主が死んで動けないと思っていたので驚くと素早く思考した。内部で争うのなら今すぐ如何にかしなければならない事態ではないと考えて、今はその間に帝都を優先するべきだと考えて皆に話すと同意が得られたので暫くは様子をみる事にした。その後はシグルトが家族の会話をしてから家に転移した。




