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契約者達と戦争

 「敵兵も町の住人も見あたりません」

 町の中に入って入り口の近くを偵察していた兵士の報告に顔を顰めていると父上が声を出した。

 「兎に角攻撃された以上敵は確実にいるはずだ。人員を増やすために補給部隊と護衛を入り口に残して全員で敵を探すぞ。暗いから何か見落としている可能性が高いから索敵の終わった所でも慎重に行動する様に徹底させろ」

 其々の部隊の隊長に索敵する重要だと思われる場所を告げて終わったら公爵の館の前に集合する様に命じた。私と父上は本隊を率いて公爵の館に向かっていた。

 「父上この町の住人は何所へ行ったのでしょう?其れに敵の戦い方が普通とは違ってやりにくいのですが」

 「そうだな、町の住人の事は儂にも分からんが、戦い方は多分儂らを殺す心算がないのだろう」

 「殺す気がなくとも奴らの攻撃を受けた身としては怒り心頭で半殺しにしたい気分ですが」

 「それよ、この町の中を見てから儂はずっと考えていた。普段ならお前は慎重に行動するから夜が明けるまでは町に入ろうとしなかったのではないか?あの攻撃は儂らを怒らせて冷静な判断力奪うための物だったのではないか?」

 父上の言葉にハッとして思考すると敵の攻撃は目などの痛みやかゆみなど、どれも考える時に煩わしく思う類の物だと思えてきた。

 「父上其処まで分かっているのなら何故町の索敵を命じたのです。一刻も早く此処から出るべきではないのですか?」

 「入った時点で手遅れだ。この町の住人の事を考えても敵は用意周到に準備をしていたのが良く分かる。今更逃げようとしても敵が其れを許すと思うか?此処は敵中深くまで入り込んで罠ごと潰すべきだ」

 「・・・・・潰せなかった場合は全滅も覚悟しなければ、いけないのではありませんか」

 「そのとおりだが戦っていれば必ずこんな場面はある。其れを如何切り抜けるかが勝負を決める事もあるからお前も此処で経験しておけ。如何言う心算か知らないが敵は殺す心算が無い様だからな」

 父上と話していると突然轟音が聞こえてきた。しばらくすると後ろから伝令が来たので話を聞くと跳ね橋が燃やされて落とされたとの事だった。跳ね橋が落ちた時に外にいた部隊が騎士団の襲撃にあって、全滅したと聞いて怒鳴りそうになったがグッと堪えて報告を聞く事にした。


 跳ね橋を下げてから町の外に作った地下との入り口から敵の動きをずっと監視しているが、如何やら敵は町の中に入る様だ。だが跳ね橋の外に五百人程の部隊と入ってすぐの町の方に千人程の補給部隊が残って周囲を監視する様だ。

 「カリーナ此処から跳ね橋は燃やせるか?」

 「此処からだと時間が掛かるよ。あと二百メーラ程近づけば六半クーラ程で燃やせると思うわ」

 「二百メーラも近づいたら確実に気づかれるな」

 「ロベール、騎士団の出陣の準備は出来ているわ。今いる千五百人の騎士団で戦えば負ける事はないわ。その間にカリーナの魔法で燃やせばいいでしょう」

 「そうですよ。我ら騎士団にも名誉を回復する機会を貰いたいものです」

 突然話に入って来た男性に戸惑っていると男性は苦笑しながら名乗った。

 「僕の名はクローズと言って一応副団長なんですよ。まあミリステアに負ける実力ではありますが」

 「お前はそんなに剣で私に負けている事が気に入らないのか。女に負けたくない気持ちは分からなくはないがお前が勝てない女は他にもいるでしょう」

 「僕が負けたくないのはミリステアだけなんですよ」

 肩を竦めて苦笑するクローズを見て俺は負けたくない理由が何となく理解出来てしまった。確かにその理由で負けていたら恰好がつかないだろう。まあもっともミリステアさんは理解していない様で馬鹿にされていると思って不満そうだ。

 「量産品のはずの質の悪い雷の魔剣が何故か普通に使える様になったので、皆が持っていますからあの程度なら殺さずに倒して捕らえる事は可能ですよ。騎士団を信頼して貰えませんか」

 其処まで言われて拒否すれば相手の面子を潰す事になるので了解の返事をした。確かに跳ね橋を落として援軍が来れない様にすれば負けるはずがないのだ。

 「此方は騎士団の攻撃に合わせて動きますから其方の良い時に動いてください」

 二人は俺の言葉に頷いて去って行き、それぞれの指揮する部隊と共に行動の時を待った。

 「カリーナは跳ね橋を燃やしたら先に戻っていてくれ」

 不満そうだが先の事を少し話して説得してから敵の方を見て見ると話している間に敵の殆どは中に入って見えなくなっていた。其れからしばらくすると騎士団が動き出した。馬だけでなく騎乗犬や騎乗猫に乗って騎士団が疾風の様に駆けて行って敵と交戦を始めた。俺達は三百メーラ程は安全そうだったので其処まで近づいて魔法で跳ね橋を燃やし始めた。


 「良いわね、敵を二人の方に行かせない様に馬と騎乗犬に乗った騎士は陣形を整えてから戦うわよ。騎乗猫に乗った騎士は倒し残しを確実に倒す事に集中しろ。完璧に仕事を済ませて報告して信頼を取り戻すわよ」

 「貴様が指揮官だな死ねーー」

 声を出して指揮を執っているうちに敵が斬りかかって来た。咄嗟にかわしてから剣を敵の鎧に当ててから魔力を込めると雷が発生して敵が絶叫を上げて倒れた。

 「この分なら問題無さそうですね」

 「クローズか・・・・お前の部隊の指揮は・・・如何した?この・・・」

 「向かってきた敵は・・倒しましたよ・・・ここが一番多いので加勢に来ました」

 話している間にも敵が斬りかかって来るので途切れ途切れになりながら状況を尋ねると返答が返ってきた。

 「指揮官を倒すのだ其れだけが勝利出来る唯一の道だ。あの様な攻撃をしてきた奴らに我らの怒りをぶつけるのだ」

 敵の指揮官の声に私達を倒すために敵がなだれ込んできた。

 「此れは参りましたね。よっと・・」

 「無駄口を叩いていないで敵を倒すわよ」

 「ウォーーーーーー」

 「あの苦しみを返してやる」

 敵兵が雄叫びを上げて斬りかかってきたのをかわして倒したまでは良かったのだが、別の敵兵が叫びと共に体当たりをしてきて乗っていた馬から落馬して地面に叩きつけられた。更に倒した敵の馬に腹を踏まれて呻いていると別の馬が私の上に倒れこんできた。

 「敵指揮官を一人討ち取ったぞーーー」

 私が死んだと思って叫んだのだろうがその判断は普通なら正しかった。鎧の下に来ていたお父様に着る様に言われた服がなければ内臓破裂で重症を負って死んでいたのだろう。

 「貴様等よくもミリステアを・・・。許さないぞ」

 クローズが人が変わった様に敵に向かって行き次々と倒していくのが見えた。馬の下敷きになって動けないので助けを待っていると敵の上げる絶叫が無くなって暫くしてから話声が聞こえてきた。

 「皆無事の様だね」

 「はいミリステア様以外は問題ありません。他の者は敵兵を拘束しています」

 「うう、きっとミリステアの体は馬に潰されて見れたものじゃ無くなっているから僕には無理だ。誰か行って確かめて来てくれ」

 返事をした数名が此方に来る様だ。ようやく助けが来ると安堵していると更なる声が聞こえてきた。

 「こんな事になるならあの時覗こうとした馬鹿共を止めないで見ておくべきだった」

 そんな言葉が聞こえる中で此方に来た数名の仲間は私が馬の下敷きになって起き上がれないだけで生きている事に気づいた。私は凶悪な視線で助ける様に促すと仲間は必死になって馬を退けてから俺達は関係ありませんと言う態度をしめした。無言で頷いてから立ち上がると一人此方を見ない様にしている者以外が私が生きている事に気づいて首を振って後ずさっていた。

 「皆いきなり首を振って如何したんだい?」

 「皆私が無事で喜んでいるだけよ」

 声に振り返ったクローズは私の表情を見て小さく悲鳴を上げると震える声をだした。

 「ぶぶぶ無事で良かった。心配していたんだ」

 震えているクローズは私が倒されたと思って戦っていた時とは別人の様だ。ちょっとドキッとした事は何かの間違いだと思い直して睨んでから告げた。

 「此処が戦場で良かったわね。敵兵を連れて撤収するわよ」

 クローズに一言告げてから命令すると皆は普段では考えられない速度でキビキビと動いて準備を終わらせた。だが最後に敵が取った行動は予想外だった。跳ね橋を燃やされて此方に来る事が出来ない敵は何と魔法砲を出して砲撃してきたのだ。私達は味方が巻き添えになるからありえないと思っていたのだが如何やら敵は味方が全て殺されたと勘違いしているみたいだ。質量弾が飛んでくるのが良く見えた。


 俺は跳ね橋を炎を使って燃やす香織を横で守りながら騎士団の戦いを見ていた。敵を此方に来ない様に守りながら戦う姿はさすがだと思った。普段から誰かを守る訓練をしていないと出来ない連携を見せられていた。俺は確かに力はあるが戦う訓練もまして護衛の訓練などしたことは無い。今度機会を作って一度指導して貰おうと心に決めて見ているとミリステアさんが落馬したのが見えた。

 「お兄ちゃん終わったよ。でも・・ミリステアさんが落馬した様に見えたけど大丈夫だよね」

 「俺も一瞬ヒヤッとしたが良く考えたら俺がロベルトに渡したミリステアさんの服を着ていたからあれ位では致命傷は負わないのは確実だ」

 「無事なんだね。良かった。でもお兄ちゃん何で服を渡したのかな?」

 「何を考えているか良く分かるがロベルトの娘だから渡しただけで他意は無いぞ」

 「でも言葉が優しくなったよね」

 「其れは俺にも理由は分からない。そんな事を言ってないで先に戻ってミーミルちゃんと探して欲しい」

 真面目な顔で話すと香織も態度を変えて戻って行った。香織には大丈夫だと言ったが何かあったら嫌なので騎士団の戦場に向かって移動しているとクローズさんが無双して残っていた敵兵の半分ぐらいを一人で倒していた。ただ気になるのは防御を考えていない様な剣の使い方をしていたので、一瞬ミリステアさんに本当に何かあったのかと思って背筋が寒くなった。俺がたどり着く前に戦いが終わってミリステアさんが立ち上がって無事な姿が見えて心底安心したその時だった。突然敵が魔法砲を撃ったのだ。気づいた瞬間に全力で自分を強化して質量弾の前に行き殴り飛ばした。砲弾は二倍近くの速度で飛んで行って撃った奴らの近くの外壁に轟音と共にぶつかって止まった。

 「お前達の仲間は一人も死んでいない。其れでも仲間ごと撃つなら味方殺しの汚名をかぶる覚悟で撃って最初の死者を味方からだせ」

 シグルトに魔法で声を届けて貰うと敵は動揺して次を撃つ事はなかったが、気になるのは一人の敵兵が動揺していない姿だった。味方には気づかれていない様だが裏切り者の事を考えている俺の目には一人だけ違うので良く分かった。

 「ロベール助かったわ。ありがとう」

 「いえ間に合って安心しました」

 俺達の会話で張りつめた雰囲気が緩んでホッとした雰囲気に変わった。質量弾を殴ったので驚きと警戒心が感じられたが悪意や嫌悪の感情は感じられなかったので俺も安心しているとクローズさんが話し掛けてきた。

 「助けられたのを理解出来ない程の馬鹿は此処にはいないよ。そして恩を仇で返す者もいない」

 周囲の人達から賛同の声が上がった。如何やら受け入れてもらえる程度の力だった様だ。

 「では今度こそ撤収するわよ。用意は良いわね」

 俺達は捕虜になった敵兵を連れて急いで撤収した。


 皆で戻ると香織がミーミルちゃんと共に待っていて俺だけに聞こえる様に見つかったと言った。詳しく聞いてから笑顔で話しかけた。

 「分かった俺が捕まえてくる。助かったよミーミルちゃん」

 そう言って頭を撫でると嬉しそうに微笑んでいた。

 「カリーナは捕虜の選別をたのむ。隔離場所は三つ作って一つは犯罪者に使っているから残りの二つに分けて入れてくれ。あと人の感情に対しての防心魔法を作ってみたから試してくれ」

 驚いている香織に魔法をかけると俺は逃げられない様に急いで捕縛に向かった。


 「父上、町の中に閉じ込められた上に外の部隊が全滅したのに進むのですか?此のままでは本当に全滅してしまいます」

 「退路が無くなった以上進むしかあるまい。しかし先の話を聞くとロベールに助けられた事になるな」

 「・・・・・その様な事を言っては士気にかかわります」

 「・・・・・そうだな」

 そう言うと父上は何か考え事をしているのか黙ってしまった。暫くゆっくり進んでいたので後方から補給隊が追いついて合流した様だ。隊列を整えてから進み公爵の館が見えた時だった。突然前方にいた部隊が消えた。一瞬何が起きたのか分からず混乱していると報告がきた。

 「前方の道に大規模な落とし穴があります。移動していた前衛部隊は全滅です」

 「馬鹿な・・・前衛部隊の皆が上に乗るまで気づかなかったのか?」

 「如何やら一定以上の重さがかかると落ちる様になっていた様です」

 「穴の下は如何なっている?皆は無事なのか?」

 「・・・・それが深い上に今は夜で暗くて分からないのです。ですが・・・・・・深さを考えると無事とは思えません」

 「いや儂が思うには殺さない配慮がされているだろうから無事のはずだ」

 「父上その様な・・・・・・」

 父上に反論しようとした時前方から叫び声が響きわたった。助けを呼ぶ声や悲鳴や止めろーーと言う声が聞こえるのだが穴に飛び込む訳にもいかず私たちは何も出来なかった。声が聞こえなくなった時には士気は地に落ちていた。

 「横道に入ってから進むぞ。儂の考えではまだ仲間達は生きている可能性が高いから助ける為にも前に進むぞ」

 父上の言葉に最低限の士気を取り戻して横道に偵察を出すと皆が良くない報告だと分かる有り様で帰ってきた。

 「申し上げます。此方の道は足に刺さる様な破片が撒いてあります」

 「此方はゴミの山に塞がれていました。触って確かめた者が埋もれて救助に手間取りました」

 「報告します。上り坂になっていてしかも坂に滑る液体などが撒かれていてとても登れません」

 姿を見た時から期待はしていなかったがどれも酷い報告ばかりで如何やら此の落とし穴に誘導する意味もあってか全て通れなくされている様だ。

 「くくくくく、良いだろう。其処まで虚仮にされているのなら此方にも考えがある。魔法砲で落とし穴の近くの家屋を破壊して通り道を作って進むぞ」

 私が笑いながらした発言に周りの者達はギョッとして後ずさっていた。

 「待つのだニルスト、それは・・・・」

 「敵も我らを町に入れた以上被害が出るのは考えているでしょう。考えていないのなら敵が愚かなのです」

 朝からの戦いで受けた攻撃で酷い目に遭って、更に酷い報告ばかり聞かされて敵に踊らされているのを感じていて、不満が溜まって爆発したのは自分でも分かっていた。最早どの様な手段でも敵の思惑を打ち破らねば気が済まなかった。父上から順に周りに視線を向けると静まり返って皆が私をマジマジと見ていた。

 「準備を始めろ」

 私が出した静かな声を聞くとはじかれた様に兵士達が動き出した。準備が整って魔法砲を撃って家屋を吹き飛ばして道を作って前に進んだ。


 「俺達の役目はこの頭上の網に敵が落ちてきたら持っている雷の魔剣で気絶させるだけだ。敵は網に捕らわれて満足な反撃は出来ないから落ち着いてやれば良い」

 俺が周りで緊張している兵士に声を掛けて緊張を和らげていると親父さんが声を掛けてきた。

 「ロベルト儂はこの様な作戦は戦いと呼びたくはないな」

 「そう言うなよ親父さん。殺さない様に戦う為に苦労して用意したんだし、此処で本当に殺し合ったら勝った事にはならないのは分かっているだろ」

 「分かっているから我慢して此処にいるのだ」

 親父さんの言葉に苦笑していると頭上で音がして悲鳴と共に人が落ちてきた。全員が落ちて来るまで待ってから雷の魔剣を使う事にした。まともに動けずもがいて必死に来るなと叫ぶ人を気絶させるのは精神的に大変だった。周りの兵士も何とも言えない顔をして動いていた。魔剣を使って敵兵を気絶させていると親父さんが引きつった顔をして話し掛けてきた。

 「異様に声が響くと思わないか?」

 「ああ確かにそうだが?それが如何かしたのか?」

 「はあ、お前には分からないか。考えてみろ仲間の悲鳴が聞こえてくるだけで嫌な気持ちになるのだぞ。更に如何にも出来なかったら精神的にくると思わないか?」

 親父さんの言葉に動揺しているうちに全員気絶させ終わった様だ。

 「よし終わったのなら気絶した兵士を拘束して隔離場所に運ぶのだ」

 指示をして兵士達を見送った親父さんと二人になると声を掛けられた。

 「守ると言っていたがもう少し頭を使わないと逆になるぞ」

 「まあ子供なのは間違いないから大人として傍にいてやるだけでも出来る事はあるさ」

 「お前には話しておく。儂はこの戦いで二人の考え方の方に脅威を覚えている。この作戦は殺さない様にしたものだが二人がもし殺す心算で戦って手加減しなければ敵兵の犠牲は許容範囲を超えて大敗と呼ばれる状況だ。儂は力だけでなく知識でも及ばないと感じている。お前は理由を知っているのだろうな・・・」

 親父さんの言葉に頭を掻くとため息をついて声を出した。

 「俺は平民で貴族の教育は受けていない。だからアリステアに知識では敵わない。たとえ話だが皆が貴族を超えた知識を学べる場所があって其処で暮らしたらそれが普通の知識になるよな」

 「・・・・・・・そうか。あれが普通か」

 親父さんが俺を真面目な顔で見てから苦笑していた。暫く経った時に上から轟音が聞こえてきた。俺達は視線を合わせると即座に走り出して原因を調べる事にした。


 俺とシグルトは香織に聞いた敵の合流地点と思われる場所に急ぎながらも静かに移動して、気づかれない様にして問題の人間が見える位置にたどり着いた。

 「おい如何なっている?馬鹿共は殺し合ったのだろう?何人死んだ」

 「・・・・・いや一人も死んだ様には見えない。朝からの二度の攻撃も、もがき苦しんだだけで死者は出ていないし、先程の騎士団の戦いでもバルクラントの兵士を連れて行ったから死んではいないと思われる」

 「ふざけるなよ。中に潜り込んだ奴らは何をやっているのだ。殺し合わせて戦力を減らす様に命令を受けているだろうが、遊んでいるのか?」

 「・・・・・騎士団との戦いの時に砲撃して両方共に殺そうとしたが砲弾を殴って止められた」

 「お前は何時から冗談を口にする様になったんだ?おい其処の新入りのお前は騎士団にいたんだろ砲弾を殴って止める様な化け物がリラクトンにはいるのか?」

 嘲る口調で問われた元騎士の男は鬱陶しそうにしながら答えていた。

 「俺は知らない」

 「知らないらしいぞ。報告は正確にするんだな。此のところ緩んでいるのかも知れないな。契約石を与えてやったランカー共もレクトンの町を破壊してから捕まっていないはずなのに音沙汰がない。契約石を持ち逃げした可能性も考えなくてはいけないな」

 「いや報告は正確だぞ。俺が殴って止めた化け物だ。お前は先程からおもしろい事を喋っているな。色々と聞きたい事があるから場所をかえてお話ししようか」

 突然響いた俺の声に反応して驚きながらも臨戦態勢をとって退路を探す所は慣れて居ると感心したが、先程の話を聞いて地味に怒っている俺は即座に逃げ道に魔法を放って逃げられなくした。

 「逃げられると思うなよ。お前らに残された道は俺達を倒すか、俺達に捕まるかの二つだけだ」

 俺が一歩近づくと二人が俺とシグルトにそれぞれ向かって来た。俺が斬りかかってきた剣を素手でつかんで粉砕するのを見て驚愕している敵を殴って気絶させている横でシグルトは向かって来た敵に容赦なく火のブレスをはいて燃やしていた。体に火が付いた敵の絶叫と倒れて転げまわる音が響いた。

 「僕に攻撃するのなら覚悟を決めるんだ。ロベールと違って僕は必要以上に手加減する心算はないんだ。特にお前達の様な陰でコソコソする奴らには怒りを感じているんだ」

 小さくても龍であるシグルトに睨まれた奴らはビクついてから俺に攻撃を集中してきた。分からなくは無いが少々苛立って力が入ってしまった。殴られて地面に血を吐いて沈む敵に死なない様に最低限の治療を施してから治療の間の隙にも何もしないで未だに向かってこない元騎士らしき男に話しかけた。

 「何故攻撃しない。まさかとは思うが見逃して貰えるとは思っていないだろ」

 「出来れば見逃して欲しい。ギルド長は殺したから後は公爵が死ぬのが見れれば俺は如何なってもいい」

 暗い視線で言う男に理由を聞くと此奴は元は孤児でAランカーになってから実力を認められて騎士になったらしい。喜んでいたら地面に沈んでいる男から幸せに生きていると思っていた孤児の仲間の末路を知らされて復讐を誓ったそうだ。

 「ロベール僕は似た話を聞いた覚えがあるんだ」

 「奇遇だな俺もだ」

 男に孤児の名前を聞くと答えた名前にシグルトが頷いたので確定だ。数多くの犯罪の中でも神官達がやっていた物の中で三本の指に入る外道な犯罪で多くの子供が犠牲になっている物だ。だが公爵が関わっていないのは炎で確認済みだ。

 「おい何所から公爵が関わった事になったのか知らないが主犯は神官達だぞ」

 「ふざけるな。知っているんだぞ。公爵からの寄付金は本当は神官達に対する礼金で大半が神官達の懐に入っているのは」

 男の言葉に顔を歪めて反論した。

 「・・・・・それは神官達が勝手に横領した金だぞ。既に神官達は捕まっているからついてくれば分かる。それに孤児達が最後に向かったのは商連合国で此奴らはその国と繋がっているんだぞ」

 「嘘だ、騙そうとしても俺は騙されないぞ。俺だって調べたんだ。此奴らの言う事は間違ってはいなかった」

 先程の金の話で薄々感づいてはいたが金は確かに神官の懐に入っているからその事実に別の説明をしても整合性が取れれば真実に出来るのだろう。俺達は香織の炎があるから間違っているのは確実だと信じる事が出来るだけなのだ。口で説得するのは難しいと悟った俺は乱暴だが戦ってから説得する事にした。

 「よし戦おう。負けたら大人しくついて来て真実を聞くと約束しろ」

 「・・拒否したら如何する」

 「真実を知るのが怖ければ拒否すれば良い」

 「・・・・良いだろう。では行くぞ」

 剣を振る速度は速いとは思わない速度だったが俺は避けそこなっていた。気づいた時には俺の左肩に剣がぶつかっていた。唖然としながらもかわそうとしたが二撃目と三撃目の剣も体に当たっていた。その後も何時もより大きくかわしたはずなのに剣が掠ったので訳が分からず混乱していると男が話し掛けてきた。

 「お前は確かに強いが避ける時に目に頼り過ぎている。視覚を誤魔化すとこの様に避ける事が出来ないのがその証拠だ」

 男の言葉に更に大きく距離を取ってかわしながら観察していると剣が揺らいだ様に見えた。どの様な方法か分からないが剣が目に見える物と大きさが違う可能性に気づいた。

 「その剣見えている物と違うんだな」

 「ああそうだ。だがお互い様だと思うがな。こんな剣を使っているから思いついて何度か剣を当てて確信した。お前の見える姿と当たった時の感触に僅かに差がある気がする」

 その言葉を聞いた瞬間俺は自分の中に負ける事はないと考える気持ちがあり、何時の間にか当たり前の様に相手を下に見ていた事に気づいた。俺は負けを認める気になって構えをといて怪訝そうな顔をする男に告げた。

 「お前の言うとおり今の俺は本来の姿ではない。シグルトを見れば分かると思うが俺は契約者なので用心の為に姿を変えている。この勝負はお前の勝ちだから見逃そう」

 シグルトが俺の言葉に動揺している様だが俺は静かに男の答えを待った。

 「・・・・・本当に見逃すとは思わなかった・・・・先程真実を教えると言ったな。本当か」

 「嘘を吐く意味がない」

 「俺がついて行ったら捕まる事になるが如何にか出来るか?」

 「・・無理だな。裏切ったのは本当だし其処は俺には弁護出来ない。だが証明の時までで良いなら俺が作る空間に入っていれば安全だ」

 そう言いながら空間に気絶させた男達を入れていった。男は其れを見て難しい顔をして考え込んでいたが俺の作業が終わると声を出した。

 「真実を必ず教えるとそこの龍にかけて誓えるか」

 「僕の契約者は嘘を吐いていないんだ」

 少し怒ったシグルトの言葉に男は頷くと俺に空間を開かせて入っていった。

 「今回の負けは良い経験になった。作戦が上手くいっていたから気持ちに緩みがあった。先程の戦いでもあの剣が俺を斬れたら大怪我をしていた。目的を果たすまでは気をつけないといけないな」

 「僕がいるから大丈夫なんだ。先程の戦いだって本当に危険だと思ったら僕が助けたんだ。其れより直哉、遅くなったから急いで帰らないと皆に心配をかけてしまうんだ」

 「そうだな香織に怒られる前に帰らないとな」

 俺達は来た時の二倍以上の速度で皆の所に戻った。

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