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それぞれの反応

 「はあはあ、如何やら逃げられた様だな」

 「ふうふう、そうね危なかったわ。まさか私達の魔法を同時に当てても無傷だなんて思わなかったわ」

 「そうだな。だが契約石の爆発に巻き込まれればレクトンの町ごと消し飛ぶだろ」

 レクトンの町から走って離れた森の中で一息ついた時にそれが感じられた。初めは何が起きたのか理解出来なかった。何故体が震えて地に座り立てないのか分かったのはミネアの悲鳴を認識してからだった。

 「ななな何、なんなの・・・・こんな力があって良いはずが・・・・・・いや・・・許していやーーーーー」

 絶叫を上げて気絶したミネアを視界に収めながら俺は恐怖に震えている事に気づいた。この力はあの契約者達の物なのだろう。力と共に怒りや悲しみなどの感情と大切な者を傷つける理不尽な暴力を絶対に許さないと言う強い意志が感じられた。既に町の住人を殺した俺とあの契約者達は決して相容れないだろう。其処まで考えて俺は今絶望しかかっている事に気づかされた。あの莫大な力の持ち主には勝てないから此れから生きる為には逃げ続ける必要があるのだ。あの力こそが俺が求めた何者にも負けない力なのだろうが感じた力は自分の想像を超えていて手に入れた自分が思い浮かばなかった。今までにつき動かされていた力への渇望が心の中で壊れて無くなるのが分かった。何もする気が起きずにミネアが起きるまでただ座っていた。


 「ぬお、何だこの力は・・・・」

 「あらこの力は直哉殿達の力の様ね。微かにシグルトの力も混ざっているわね」

 「何だと・・・・」

 我が力を調べると確かに言われたとおりシグルトの力が感じられた。その事に気づくと途端に落ち着かなくなった。

 「此れだけの力を使う以上何か大事が起きたのだ。すぐに向かわなければならない」

 そう言って飛び出そうとした我をシルフレーナの声が止めた。

 「お待ちなさい。如何やら此れは警告の様な物の様です。力と共に感情が伝わってきています」

 声を聞いて動きを止めると強大な力を無差別に振るう者達に対する怒りと共にそれに対する時に断固とした行動を取る意思が伝わってきた。

 「・・・・・・此れは脅しと言う事か?」

 「ええそうでしょうね。多分契約石を持つ者達に対しての物でしょうが、問題は此処まで莫大な龍に対しても抵抗する意思を奪う程の圧倒的な力を出している以上また寿命が減っているでしょうね・・・・」

 「なな・・・・おのれまたシグルトの・・・・・・」

 歯ぎしりして言葉を詰まらせる我にシルフレーナが告げた。

 「メルボルクス外が大分騒がしいわ。状況が分からず混乱しているみたいよ。五龍星として説明して混乱を治めてきなさい」

 「ああそうだな。説明したあとは会合になるだろうから先に休んでいてくれ」

 そう言い残して説明をどの様にするか考えながら家をあとにした。


 「レオンこの力はフレイの能力を使っているわね」

 「感情が伝わってくる以上そうなのだろうが力を通して感情を伝える様な使い方が出来るとは知らなかったな」

 「今感じている力が以前言っていた力なのね。確かに炎鳥を滅ぼせる力だわ。でも伝わってくる感情では滅ぼされる心配はしなくて良いみたいね」

 「いや此処までとは思っていなかった・・・・が確かに妹に対する感情を考えればフレイが契約している以上安心出来そうだな」

 何処かほっとした雰囲気をだしながら話を続けた。

 「しかし本当に凄まじい力だわ。フレイの力と一緒にフレイの契約者の力も感じられるけど如何やら此方の方も普通ではないわね」

 「妹だそうだが明らかに普通の契約者じゃないな。兄の方程逸脱していないだけで良しとするしかあるまい」

 ため息を吐いた時にリオンが慌てて部屋に入ってきた。

 「父様大変です。強大な力を感じた者達が騒いでいます。王として止めてください」

 リオンの言葉に頷いて部屋を出て行って説明をする事にした。


 「長もガレオスも契約者とはいえ人間に配慮をするなど臆したとしか思えんわ。そんな事だから、なめられて此の俺様を連れて来いなどと言われるのだ。話があるなら俺様の前に自ら来て跪くべきだろうが。其れに聞いたぞ油断した挙句に無様に負けたのだそうだな。此れだから力はあっても経験の無い若造は信用出来ないのだ」

 「ルードルよ。私は油断などではなく実力で負けたのだ。あの契約者は普通ではない。戦いになったら勝ち目がないぞ」

 「そのとおりだ。会えば分かるから一度で良いから会って貰え無いだろうか。子供もまた一匹助けられたのだ」

 「自分より弱い者と会う心算などないと言っただろうが。それ以上言うのなら力ずくで従えるが良い」

 俺様が睨みつけるとガレオスの奴は黙りこんだ。此れだから弱い奴は駄目なのだと思った時だった。突然莫大な力が感じられた。

 「此の莫大な力は人間共のいる方から感じるぞ。また契約石の様なおかしな物を作ったのだろうが、長よお前が何もしないからこんな事になったのだ。此処まで巨大な力に対処するには多くの犠牲が出るぞ」

 ため息を吐きながら長が言葉を告げた。

 「対処が出来ると思っているのか?混乱する気持ちは分かるが、体が震えているのなら自分でも分かっているのだろう」

 自分の体を見ると気づかないうちに確かに震えていた。長もガレオスも緊張してはいるが震えてはいないのを見て気を張って震えを止めると詰問した。

 「何を平然としているのだ。此の力の発生源を調べるのが先だろうが」

 「確かめる必要は無い。力と共に伝わってくる感情が教えてくれるし、此処までの力の持ち主は一人しか知らない」

 「知っているのなら早く言え」

 「ルードル、私もガレオスも何度も会えと言っているぞ。お前は会いもしないで弱いと決めつけていたがまだ弱いと言えるか?」

 一瞬何を言われたのか分からなかったが理解すると不覚にも驚愕の叫びを上げてしまった。

 「何だと、此れが契約者一人の力だと言うのか?昔いた魔狼の契約者の力を知っているがこんな馬鹿げた力など持っていなかったぞ。抑々これ程の力が個人の物だと言うのか?」

 「だから普通ではないと言ったんだがな。今一度言うぞ。龍の里にガレオスと向かい契約者に会え。あと如何しても私の判断が気に食わないなら、私でも戦いにならない此の力の持ち主を如何にかする方法を考えてからにしてくれ」

 俺様が反論しないのを良い事に長はガレオスを伴って混乱を治めに去って行った。残された俺様は必死に対処を考えたが何一つ浮かばない事に愕然としながらもまだ会うまでは認めないと心に言い聞かせた。


 ロベルトが騎士団と共に村に付いてから逃げてきた人々を助けていると東から直哉の力と思いが感じられた。意図も感じられたので今は問題無いと思って周りを鎮めながら此れから仲間としてと異世界の事を知る者として妻と共に助けようと心に決めた。


 直哉殿達に言われた事を指示してから部屋に戻って話していると大きな力が感じられた。皆で唖然としているとミーミルが声を出した。

 「うわーー凄いです。兄様達の力はこんなに大きいのですね」

 「ミーミル此の力は直哉殿達の物だと何故分かるのですか?」

 「お母様、兄様が目を見える様にする時の力に似ているのです」

 「しかし此処までの強大な力だとやはり危険ではないでしょうか」

 「ふん、その心配はいらない様だぞミリステア。儂には感情が伝わってきているぞ」

 「うわーー本当です。姉様の兄様への思いが筒抜けです。兄様はとても大切に想われているのが良くわかります」

 「あらそうなのミーミル。私は分からないから教えてくださいな。ほらミリステアも一緒に聞きましょう」

 メイベル様が二人と小声で話している横でリグレス公爵が口を開いた。

 「しかしミルベルト卿、この分だと愉快な報告は聞けそうにないな。新しい指示をしてから覚悟を決めて待つ方が良い様だ」

 頷き合ったリグレス公爵とミルベルト卿は指示をする為に部屋を出て行った。残された三人は女だけの秘密の話で楽しんでいた。


 商連合国の某所で密談中の人々は初めは驚きと恐怖に震えていたが落ち着くとニヤニヤして話を始めた。

 「これ程の力の持ち主を契約石にすればいくらで売れるか考えるだけで笑いが止まらんわ」

 「本当ですな。しかし此の力の持ち主も馬鹿ですな。感情を伝えてしまっているので弱みである妹の事まで伝わっているから妹さえ人質にすれば何も出来ない事が分かって対処も簡単だ」

 「妹の方もあとで売り飛ばせば良いし、まさに金が降って来た様ですな」

 「では早速この力の持ち主を探しましょう」

 「其方は其れで良いとしておいて今は戦いが始まるのを待つばかりです。皇妹と第二皇子いや新皇帝?が戦い始めれば南は手薄になって好きに出来るでしょう。あそこには良い売り物が数多くあるのです」

 「売り物と言っているがお前はガルトラントの娘が欲しいのだろうが、しかしガルトラントの当主は殺せなかったと聞いたぞ」

 「ですがガルトラントの中の貴族の当主は半数は殺せたとも聞いています。其れにサザトラントの当主は殺せたのですから援軍はこないでしょう。聞くところに依ると何でも皇妹と第二皇子のどちらに味方するかで長男と次男の意見が分かれて対立が起きていると聞きました。少し人をやって工作すれば戦いに出来るかも知れませんよ」

 「くくく、それは儂がやっておこう。其れより神官共から報告では帝都の方は順調だそうだ」

 「其れは其れは、事が成れば大混乱が起きて馬鹿な民衆達を相手に良い商売が出来そうですね」

 「そのとおりだ。今の内に混乱時に必要になる物を買い占めて置いて高値で売ってやるとしようか」

 悪い笑みを浮かべる商人達の密談は何時もより長く続いていたが無言でいた一人以外は気づいても気にしていなかった。皆が必要以上に上手く行った時の話ばかりをしているのは不安の表れで、長く話が続いているのも恐怖から一人になりたくなかっただけだと気づいた一人は、彼らとの関係を絶ち息子と娘に商売を任せて隠居する事にしてそっと気づかれない様にその場を去った。


 「べサイル殿下この強大な力は西から感じられます。まさかとは思いますがリラクラントの力だとしたら計画を根底から立て直す必要があります」

 「ははははは、ガルマスト・メルクラントともあろう男が何を言うのかと思えば・・良いかい此の契約石を見れば一目で分かるだろうが、日増しに光が強くなっていて光が限界を超えた時に契約石を超える物が出来るのだぞ。確かに今感じている力は強いが此れさえ完成すればそれ以上の力を得られるのだ。帝都を一撃で消し飛ばす力が手に入れば何も心配する事はないさ。あと俺の事はもう殿下ではなく陛下と呼べ。父上も兄上もその子供達も皆死んだのだぞ」

 「全くですな。新しい皇帝陛下に対して無礼でしょう。陛下は何も心配する必要はありません。バルクラント卿がリラクトンに進軍していますし、最悪負けたとしても陛下の持つ契約石が光り輝く時間が稼げるのです。愚か者達が帝都に進軍してきた所を偉大な陛下の御力で一網打尽にすれば良いのです」

 「良い事を言うな。この皇帝が自ら戦えばどの様な力の持ち主でも必ず勝てるさ。はははははは」

 私の判断を笑う陛下と五大神官達は簡単に考えているが、私には楽観など出来ない事態に思えてならなかった。抑々私がべサイル陛下に付いたのは軍事力を高めたかったからだ。我が領地はかつて魔狼と戦った事があるのだが今も語り継がれる話では一方的な虐殺にしか思えない戦いで、魔狼に傷こそつけたが引き換えに参戦した八割が死んだと伝えられている。其れから我がメルクラントの悲願は魔狼と対等に戦える様になる事だった。五大貴族で最大の軍事力を持っているのは其のおまけに過ぎないのだ。契約石の力を見て過程は如何あれ魔狼に勝った事を評価して此方に付いたが、玉座に座って陛下と呼ばれて有頂天になっているべサイル様と何を企てているのか分からない神官共の話と態度を見てから、先の力と伝わってきた思いの事を考えると判断を誤ったのではないかと不安が溢れてくるのを止められ無かった。だが今更逃げる訳にもいかない私は心の中で子供達を領地に置いてきた事に安堵してから出来る限りの準備を整える為に行動を始めた。


 「何故先行偵察をさせているランカーは一人も帰ってこないのだ?」

 「父上、先行してリラクラント卿を追っていた部隊が負けた事もありますから何かあったのでしょう。別の部隊を差し向けましょう」

 「実質一人に負けたとか言う戯言か?」

 「父上、あの隊長の事は話に聞いて知っています。部下思いで慕われていてとても嘘を吐くとは思えません」

 「ふむ、お前がそう言うのなら正しいのだろうが信じがた・・・・・・・・・・」

 莫大な力が進軍先の方角から感じられた。力と共に怒りと悲しみが特に強く感じられたので町で何かあったのだと思い父上に進言した。

 「即座に町に向かって何があったのか確かめるべきでしょう。私が部隊を連れて向かいますから此処で待機していてください」

 「やめろ此処は全軍で動くぞ。あのような力の持ち主に戦力を分散するなど愚かな事だ」

 「しかし父上それでは最悪の場合全滅するかもしれません」

 「その可能性はあるが何の成果もなく帝都に戻ってもべサイル殿下が我らを処分するだけだ。儂は正直な所バルクラントが東に敵国を抱えている所為でメルクラントの援護が必要だから歩調を合わせているだけだ。陛下は戦いを嫌って必要以上の軍縮を進めていて愉快ではなかったが殺されて何も思わない訳では無いし、何より貴族の当主達を殺した事については納得などしていないぞ。儂としては生まれ育ち、祖先から受け継いだ領地と赤帝国を他国から守りたいだけだ。この様な力の持ち主が自国にいて知らないでは守る事は出来ぬわ。お前こそ帰っても良いのだぞ」

 覚悟を決めた顔で語る父上に鋭い視線を返しながら言葉を返した。

 「冗談はやめてください。私にもバルクラントを継ぐものとしての誇りがあります。親に言われてのこのこ帰ったら笑いものですよ」

 「では行くとするか、全軍にレクトンの町に向かうと伝えてくれ。あと先程の話の部隊長に詫びておいてくれ。確かに一人に敗北しても当然の様だ」

 父上の言葉に返事をしてやるべき事をやりに向かった。


 「さてと生きている人はこの人で最後だな・・・・・」

 最後に助けた老人の治療を終えて周りに聞こえない様に呟くと深いため息を吐いた。力を世界中に向けて放った力が思いがけない効果を生んだ。近くにいる人の助けを呼ぶ思いが感じられたのだ。俺達は急いで生きている人々の救出を始めたがその作業は地獄だった。生きてはいるのだが大抵は重症を負って虫の息なのだ。火に焼かれた人やがれきに潰された人を見て吐きそうになるのはまだましな方で中には助けた事で何故助けたと罵声を受けた事もあった。しかも結局助けられたのは千人以下だった。

 「お兄ちゃん死んだ人達を集めたから空間に入れてくれるかな?」

 「ああ、分かった今やる」

 香織の言葉に従って空間を開いて死者を入れていると助けた人の中から数人が立ち上がって話しかけてきた。

 「おい何をしているんだよ。彼らを如何する心算だ」

 「空間に入れて運んでリラクトンで墓を作る心算です。此処には軍が来る様なので避難しますが置いて行くのは忍びないですから」

 リラクトンと言う言葉に反応した人が叫んだ。

 「おいお前は公爵の配下か?だったら責任をとれよ。此の町はお前らの所為で破壊されたんだぞ」

 「俺は公爵の配下では無いですし、此処にいる龍と炎鳥が見えませんか?それに公爵に出て行けと言っていたと聞きましたが?」

 シグルトとフレイを見て黙り込む男に代わって他の人が声をだした。

 「じゃああいつ等は何で生きているんだ。町を襲った奴らなんかさっさと殺せばいいだろ」

 拘束されたランカーを指さして厳しく問う人に告げた。

 「彼らは殺しません。リラクトンに連れていきます」

 俺の言葉に不満そうな人と敵を見る様な目で睨む人が続出した。俺はそんな人を黙って見ていたが殺されないと知ったランカーが安心しているのを見て反射的に行動していた。

 「町を破壊して子供まで殺していながら何を安心している。貴様らはリラクトンで裁かれるまで大人しくしていろ。あまりふざけた態度を取るとこうなるぞ」

 俺は冷たい声を出すと救出活動で溜まっていた怒りを表に出しながら地面を殴った。殴った地面は爆音を伴って吹き飛んで陥没して、子供達が音に驚いて泣いたり騒いだりしたのを香織が即座に飴を与えてなだめていた。香織に心の中で礼を言ってから反省した俺は話を続けようとしたがもう必要がなくなっていた。如何やら皆納得してくれた様だ。問うていた人が視線を合わせない様にしていたのは見なかった事にした。

 「おい、お前が公爵の配下じゃないのは分かったが、その力があれば軍でも倒せるだろ避難するのではなく倒せば良いだろ」

 「何故俺がその様な危険な事をしないといけないのですか?」

 「はあ、何言ってやがる其れだけの力を持っているのなら大した事じゃないだろ。被害に遭った者達の為に力を振るえと言うのが可笑しいか?」

 「危険などに対する対価は払えるのですか?」

 男は一瞬何を言われたのか分からない様だったが理解すると顔を真っ赤にして怒鳴った。

 「お前は俺達を助けるんじゃないのか?こんな状態の俺達から金を取ろうと言うのか?」

 男の言葉に同意する様に叫ぶ者達を見て言葉を出した。

 「金が欲しい訳ではありません。大きな力を持っていても命は一つです。対価すら払わずに顔も名前も知らない人の為に命を掛けて戦えと言う人の為に戦う積りはありません。俺が無条件で力を使うのは妹達の為と後は子供や妊婦や赤子などの自分が守りたいと思う者達です」

 「あのさ、私のお兄ちゃんに簡単に戦えと言っているけど、お兄ちゃんに何かあったら如何するの?まさかとは思うけどそのあと自分達は何もなかった様に発言の責任も取らずに、のうのうと生きて居られると思ってないよね」

 私が怒気を宿した凍てついた視線を向けると騒ぎは静まり、男はいそいそと人々の中に逃げ込んで行った。

 「此れからあなた方には三つの選択を提示しますわ。その中から今後の道を選ぶのですわ」

 「一つは此処から西にある村に行って騎士団の保護を受ける事、次は此処に留まるか他の場所に行くなりして自分達の好きに行動する事、最後は僕達の保護下に入った上でリラクトンの地下に向かう事なんだ。ただし最後の選択はロベールに借りを作る事になるから作った分だけあとで働いて返さないと行けないんだ」

 人々はガヤガヤと話していたが此処に残る人は皆無で、八割は騎士団の保護を受ける様だ。残りの二割の人達が俺達の保護を求めてきたので代表の人と話して確認する事にした。

 「良いのか?俺達から踏み倒すのは無理だぞ」

 「私はクーヤと言いますが直接助けられましたし、子供を守りたい対象にしている事を聞いて決めました。公爵や騎士団も助けてくれるでしょうが其れは最低限の物になると思います。此処に居る女や子供と老人では働くのも簡単にはいかないでしょう。その点働いて返すと言う以上働く場所は見つけて貰えるのでしょう」

 「おかしな仕事だったら如何するんだ?」

 「くすくす、その事は考えましたが後ろを見れば誰でも大丈夫だと思えます」

 後ろを向くと顔を膨らませた妹様がじーーーーと見つめていた。ギョッとして飛び退くと其れを見た保護を求めた人達が苦笑して緊張が解けた様だ。頭を掻きながらやれやれと思っているとフレイが鋭い声を出した。

 「動きましたわ」

 フレイの言葉に思考を切り替えてから素早く指示を出した。

 「カリーナはフレイと共に皆を村まで連れて行ってくれ。途中に逃げた人が残っていないか探して、居たら共に逃がしてくれ。シグルトは俺と共に此処で待機するぞ。クーヤ、悪いが話はリラクトンに着いてからにしてくれ」

 皆が返事をして其々の行動を取って去るのを見届けてからシグルトと共に敵が来るのを待っていた。


 町の外に出て敵の軍を見ていると敵軍の中から護衛を付けた二人の人間が此方に向かって来た。

 「儂の名はニービス・バルトラントだ。この町はお前達がやったのか?」

 厳しく詰問する初老の男に俺は目を細めると確認の意味を込めて言った。

 「この町を破壊したのはお前達が向かわせたランカーが契約石の力でやった物だぞ。知らないなどと言って誤魔化す心算か?」

 「馬鹿な事を言うな。此処は皇帝の直轄領で何故我らが襲わねばならないのだ」

 俺の言葉に隣にいた三十代の男が反論してきたので空間にしまっていたランカーを出してランカーに喋らせて聞かせる事で黙らせた。

 「今度は此方から質問させてもらうが契約石はまだ持っているのか?」

 「・・・・・・・いや儂らは持っていない。儂はあの様な力よりも従来の魔法兵器の方が国を守る力として信頼できると思っている」

 「父上その様な事を敵に教えるのは・・・・」

 「良いのだニルスト。たとえ此の事を知られても儂は負ける心算は無いぞ」

 親子の会話に嘘は無さそうだと思って安堵していると見定める視線で質問された。

 「先程の莫大な力はお前の物で間違いないか?」

 「俺以外の力も混じっているが其の認識で間違いない」

 「あの力を今後どの様に使う心算だ。力を背景に無理を押し通す心算か。其れとも支配者になる心算か」

 「どちらでもない。俺は此の町で起きた事の様に巨大な力を手に入れて、調子に乗って好き勝手して暴れる馬鹿共にお前達は決して最強ではないと教えて忠告しただけだ。忠告を無視して暴れる奴と出会ったら殴り飛ばして捕まえて正しい裁きを与える心算だ。此奴もリラクトンに連れて行ってから裁いて貰う心算だ」

 そう言って俺がランカーを空間にしまうのを見届けてから今度はニルストが質問してきた。

 「自分で裁くのではないのですか」

 「一人の独断で裁くのは良い事では無いのは分かるだろ。正式な手順を踏んで裁くのが当然の事で俺は昔いた契約者の様に必要以上の正義感など持っていないから暴走する心算は無いよ」

 「貴方の力があれば此処で我らを皆殺しに出来るのではないですか」

 「ロベールはそんな事はしないんだ」

 横に視線を向けるとシグルトが怒って睨んでいたので宥めてから落ち着いた声を意識して出した。

 「逃げる人達を襲わないのなら此処で戦う積りはありません。リラクトンはすでに戦いの準備をしています。契約石の様な逸脱した力を振るう者がいないのなら必要以上の力を直接的に振るう心算はありません。注意してほしいのは子供達を巻き込まない事です。守る為なら力を使う事に躊躇する心算はありません」

 ジッと俺達の話を聞いていたニービス卿が口を開いて答えた。

 「逃げる人を追う事はないと約束しよう。我らは二日かけてリラクトンに向かう事にする。儂は領地と国を守りたいだけだから民を傷つける心算はないが自分の言った事は守る事だ。もしおかしな力の使い方をすれば儂は差し違える覚悟で挑ませて貰うぞ」

 「リラクトンでの戦いは極力死者を出さない方針ですからご安心ください。ただ本気で国を守りたいなら戦って負けた時は大人しく降伏して話を聞いて貰えませんか?」

 「負ける心算など無いが敗者は勝者に従うのが当然だと考えている」

 俺達はその言葉に一礼すると転移してその場を去った。


 「父上逃がして良かったのですか?今が討ち取る最大の好機だったのではないのですか?」

 「お前はまだまだだな。ロベールと呼ばれた男は兎も角、龍は警戒していてもし儂らがおかしな事をすれば確実に殺されていたぞ」

 「・・・・・・・」

 「それにロベールの方はまだ人を殺した事が無い様子だった。故に殺すのを忌避しているみたいだから今は危険はない。迂闊に突いて失敗した時の方が危険だぞ。其れよりもレクトンの町の報告を帝都にして置くべきだな」

 「申し訳ありません考えが足りませんでした。すぐに使者を出しておきます」

 そう言って去って行く息子を見ながら儂は最後の言葉について考えていた。あの言葉は此のままでは国を守れないと言われた様だった。もしこの場で講和を求められても拒否する心算だったのが伝わったのか、そんな話は出なかったが戦うのが正しいのか迷いが生まれていた。

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