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ちょっと設定練り直してから投稿し直します。ごっちゃになってました。
少し直して無理そうでしたら一度消して再投稿します。ご迷惑をかけしまいますが、申し訳ございません
夕食を終えた頃には、辺りはすっかり暗くなっていた。湖の向こうに広がる闇を背に、拠点の中央では大きなキャンプファイヤーが焚かれている。
ぱち、ぱち、と薪が爆ぜる音。
その周囲では、マンドラゴラたちが何やら忙しそうに動き回っていた。
「ほわっ!」
「ほわほわー!」
「ほわっ、ほわー!」
畑から収穫した野菜や薬草を抱えたマンドラゴラたちが、焚き火の周囲をぐるぐると回っている。
まるで収穫祭の踊りだった。
朱音は少し離れた場所に座り、その光景を呆然と眺めていた。
「……なにこれ」
隣ではミノリが笑っている。
「収穫の踊りだよ」
「いや、それは見れば分かるけどさ……」
マンドラゴラが一匹、収穫したばかりの野菜を高々と掲げる。
「ほわー!」
「ほわほわー!」
周囲の仲間たちが一斉に飛び跳ねた。
「……なんか、めっちゃ楽しそうじゃん」
「うん。収穫できた日はだいたいやるよ」
「へぇ……」
朱音は焚き火の向こうを眺める。
ダンジョンの中。しかも55階層。
本来なら、命懸けで魔物と戦っているはずの場所だ。
それなのに目の前では、畑で採れた野菜を囲んで小さな魔物たちが踊っている。
「……やっぱ、この拠点おかしくない?」
「そう?」
「普通のダンジョンじゃないって。絶対」
ミノリは少し考えてから答えた。
「でも、住んでると普通になってくるよ?」
「その感覚がもうおかしいんだって!」
思わず突っ込む朱音。
その声に反応したのか、マンドラゴラの一匹がこちらを向いた。
「ほわ?」
「……なに?」
「ほわー」
マンドラゴラが朱音に向かって、収穫した芋を差し出す。
「え、あたしに?」
「ほわ!」
「……ありがと」
受け取ると、マンドラゴラは満足そうに踊りへ戻っていった。
朱音は手の中の芋を見る。
「……なんか、かわいいじゃん」
「でしょ?」
「うん」
少しだけ笑った。
そんな時間を過ごしたあと。
夜もかなり更けた頃。
「……で」
朱音は拠点の建物を見回した。
「どこで寝ればいいの?」
薬師堂が周囲を見渡す。
「……あ」
「え?」
「人間が泊まる部屋、作ってなかった」
「は?」
朱音の目が点になる。
「いやいやいや。ちょっと待って?」
「拠点として必要な設備は色々作ったんだけどねー」
「うん」
「居住区は基本的にオレたちが使う分しか作ってない」
「なんで!?」
「人間が来る予定なかったから」
「……」
朱音はしばらく黙った。
「……じゃあ、あたし今日どこで寝るの?」
「ミノリの部屋でいいんじゃない?」
薬師堂があっさり言った。
「え?」
ミノリも頷く。
「うん。うちの部屋、寝る場所ならあるよ」
「いや、いいの?」
「もちろん」
「……じゃ、お言葉に甘えよっかな」
こうして朱音は、その夜だけミノリの部屋に泊めてもらうことになった。
◆◇◆◇◆◇
翌朝。
「……ん」
朱音はゆっくりと目を覚ました。
「……朝?」
まだ少し眠たい目をこすりながら起き上がる。
すると、外から妙に大きな音が聞こえてきた。
ガンッ!
ガンッ!
ガンッ!
「……なに?」
窓を開ける。
「…………」
建物の前で、ケットシーたちが大勢働いていた。木材を運び、石を積み、壁を組み立てている。
「あ、朱音ちゃんニャ!おはようニャ!」
「おはよー……って」
朱音は目を細める。
「何作ってんの?」
「朱音ちゃんのお部屋ニャ!」
昨日まで存在しなかった建物が、もう壁まで出来上がっていた。
「早すぎない!?」
「人間が来た時のお部屋を作ることにしたニャ!」
「昨日、来た時には作ってなかったじゃん!?」
「今まで必要なかったニャ!」
「まあ、それはそうだけどさ?!」
ケットシーたちは楽しそうに作業を続けている。
「あ、和室と洋室、どっちがいいニャ?」
「え、選べんの?」
「もちろんニャ!」
「……じゃあ洋室」
「了解ニャ!」
「ベッドでいいかニャ?」
「大きいのがいい!」
「机はいるかニャ?」
「いる!」
「収納はいるかニャ?」
「絶対いる!」
朱音の注文がどんどん増えていく。
「あと鏡!」
「鏡ニャ!」
「それから装備置く場所!」
「作るニャ!」
朱音は完成していく建物を眺める。
「……一瞬で注文住宅みたいになってんだけど」
その横で、ミノリが欠伸をする。
「朝ご飯食べたら、畑行こうか」
「……畑?」
「うん。今日から身体強化の練習」
「え?」
朱音が振り返る。
「回復士の?」
「そう」
「……なんで?」
ミノリは笑った。
「まず身体を鍛えないと、強化魔法を使っても動けないから」
「……」
朱音は嫌な予感を覚えた。
「具体的には?」
「畑仕事」
「…………」
「それから相撲」
「なんで!?」
朱音の声が55階層に響き渡った。
「いやいやいや! 回復士の修行で、なんで朝イチから農作業と相撲なの!?」
「身体強化だから」
「絶対ミノリ基準でしょ、それ!」
「違うよ?」
「絶対そう!」
そこへ幻魔がやってくる。
「畑が終わったら俺が見る」
「幻魔まで!?」
「格闘技術だ」
「いや、あたし回復士なんだけど!?」
「だからだ」
幻魔は淡々と答えた。
「殴らなきゃ治せないなら、殴れる位置まで近づく必要がある」
「……」
朱音は黙った。
「避ける。踏み込む。距離を詰める。拳を当てる。離れる」
幻魔が指を折りながら説明する。
「それができなければ、お前のスキルは使えない」
「……確かに」
「だから戦える身体と動きを作る」
朱音は拳を握る。
「……なるほど」
少しだけ表情が真剣になる。
「じゃあ、やる」
「うん」
「でも相撲って必要?」
「必要」
「マジかぁ……」
◇◆◇◆◇◆
その頃。少し離れた作業場では、薬師堂が一人で机に向かっていた。机の上には、紙に描かれた大量の設計図。
腕。
肩。
胸部。
腰。
脚。
そして手甲。
朱音の戦闘動作を想定しながら、装備の構造を組み立てていく。
「フィスト・ヒール……」
薬師堂は設計図を眺める。
「殴った相手を治療するなら、拳そのものの魔力伝導率が重要になる」
重量を上げすぎれば動きが鈍る。軽すぎれば防御力が足りない。そして何より、朱音は前衛で戦う必要がある。
「魔力を拳まで流しやすくして……」
素材の候補を書き込む。
「手首の可動域は確保。肘も邪魔しないように。肩は防御しつつ、踏み込みを邪魔しない」
薬師堂はそこで一度手を止める。
「…実戦を見てから最終調整だねー」
まだ完成ではない。
朱音がどんな動きをするのか。
どの程度の強化魔法を使えるのか。
どれくらいの速度で踏み込めるのか。
それを確認してから、最後の形を決める。
「まずは身体作りか」
窓の外を見る。
そこでは朱音がミノリに連れられて畑へ向かっていた。
「……頑張ってね、朱音ちゃん」
薬師堂はそう呟き、再び設計図へ視線を戻した。
鬼塚朱音の55階層での生活と、火炎竜へ挑むための本格的な修行が始まった。




