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ローファンタジー初挑戦。気長にお付き合いいただけたら幸いです


現代日本に突如として出現した「ダンジョン」


内部から採取される魔石や鉱物、薬草、魔物素材などは、資源不足に悩む現代社会を支える重要な資源となっている。


そのため、ダンジョンへ潜り資源を回収する職業として探索者が成立。


探索者を育成するため、日本にも専門教育機関であるダンジョン学園日本支部が設立されていた。


しかしダンジョンは深くなるほど危険性が跳ね上がり、世界中の探索者が攻略を競っている。


現在の世界最高到達記録は――三十八階層


ダンジョン学園日本支部 ダンジョン内


ダンジョン学園日本支部に進学した鬼塚朱音(おにずかあかね)は、初めてのダンジョン探索に来ていた。


パーティーメンバーはクラスメイトの五人


前衛を務める剣士、神谷蓮(かみやれん)


大盾を構えるタンク、大森大地(おおもりだいち)


索敵を担当する斥候、佐伯隼人(さえきはやと)


修道士のような格好をした回復、桐生美優《きりゅうみゆ》


朱音の友人であり、パーティーに誘ってくれた魔法使いの水瀬莉子(みなせりこ)


六人で構成された探索者学園ではごく普通の一年生パーティー。


「前方、問題なし。魔物の反応も今のところなし」


「大地、念のために前を頼む」


「任せろ」


大盾を構えた大地が先頭に立つ。


その後ろを蓮が続き、朱音たちは慎重に進んでいく。


「朱音、本当に大丈夫?」


「……何が?」


「いや、アンタのスキル……」


「フィスト・ヒールって、回復するために殴らなきゃいけないんでしょ?」


「だから何だよ!」


朱音が拳を握る。


「アタシだって好きでこんなスキルになったわけじゃねぇんだよ!!」


あたしのスキル――フィスト・ヒール。


 殴った相手を治療する。


 ただし、殴った場所そのものは回復できない。


 つまり。


 回復したいなら、まず殴らなければならない。


「普通のヒーラーなら手をかざして回復とかできるのに……」


 朱音は自分の拳を見る。


「なんであたしだけ殴るんだよ……」


「でも朱音のスキル、普通に強いじゃん?」


「ただし、殴られる痛みに耐えないと無理だな…俺は勘弁」


「僕もちょっと腹パンは勘弁…」


話を聞いていた神谷と佐伯が反応する。


「おい、気を抜くな…ダンジョンだぞ?」


大盾を構えながら慎重に進む大森が注意する。


「……前方、問題なし」


魔物と遭遇事なく順調に進んでいた。


先頭では大盾を構えた大森が周囲を警戒し、その少し先を佐伯が進む。


「…今のところ魔物はいないな」

「この辺りは比較的安全みたいだな」


「なんだ、思ったより普通じゃん」


初めてのダンジョン探索に緊張していたが、魔物もあまり遭遇せず、余裕もあった。


「初めてだからって油断しないでよ?」

「そうそう。学園でも『常に足元を確認すること』って言われてたし」


「分かってるって…」


莉子と美優に注意され、頬を膨らませた。


そのとき


「……あれ?」


莉子が足を止めた。


「どうしたの?」

「いや、なんかここ……」


莉子が足元を見る。


一見すると、ただの石床。


その一部だけ、ほんの少し色が違っていた。


「……?」


そして、突如と青白く光始めた。


「転移トラップだ!水瀬!桐生!そこから離れろ!」


魔法陣の範囲が一気に広がる。


莉子と美優の足元が光に包まれた。


「動けない!?」


「な、なんでどうなってるの!?」


二人の身体が魔法陣の中心へ引き寄せられていく。


「莉子! 美優!」

「ばっ…鬼塚!待て!!」


神谷の制止を振り切って、魔法陣に飛び込み二人の腕を掴む。


「あ、朱音!!」

「朱音ちゃん!!」


涙目の二人の顔を見て絶対に助けると力を振り絞る。


だが、魔法陣の中心から、さらに強い光が放たれる。


莉子と美優を見る。


このままだと三人とも飛ばされる。それなら……


覚悟を決めるしかない。


「莉子、美優……ゴメンっ!!」


「あ、朱音…?」


「な、なにを……?」


力を込めて二人を思い切り投げ飛ばす。幸いにも神谷と大森が二人を受け止めてくれた。


よかった。二人だけでも助かって…


「鬼塚、お前も!!手を伸ばせ!!」


佐伯が手を伸ばすが、魔法陣から強烈な光があたしをつつみ込んだ。


「あ、朱音…」


「そ、そんな…」


力なく床に座り込む莉子と美優。


「あのバカ…すぐにダンジョンを出て学園と管理局に報告だ!!」


慌ただしく指示を出す神谷。


『追跡モード:対象•鬼塚朱音を追尾』


六人を撮影していた探索者追跡ドローンが朱音が転移したことを感知して追いかけていたのを五人は見逃していた。


◆◇◆◇◆◇


「うっ……あれ?あたし…確か…?」


「……ここ……どこ……?」


重い身体を起こす。


「……痛……」


転移した先にお尻から落ちたんだった。


お尻をさすりながら周囲を見回す。


「はっ…?なにこれ…」


薄暗い以下にもダンジョンみたいな場所にいたはず、なのになんで目の前に森が広がってるの!?


「そ、そうだ…端末!学園と管理局に避難信号を…あれ?」


ポケットから探索者用端末を取り出す。


いつものように画面をつける。だが、起動しない真っ黒のまま。


「……は?」

ボタンを長押しする。何度も操作する。


しかし、画面は一切反応しない。


「マジかよ……」


端末を軽く振ってみる。


「圏外とかじゃなくて……端末そのものが死んでる?」


朱音は周囲を見回す。


少し離れた場所に、階段がある。


「……階段?」


朱音は警戒しながら近づく。


階段の壁には、数字が刻まれていた。


「……五十八?」


学園で習った知識が頭をよぎる。ダンジョンの階段には現在探索している階層の数字が刻まれている。


つまり、ここはーーー


「……五十八階層ぉぉぉ!?」


叫び声が、石造りの空間いっぱいに響き渡る。


「待て待て待て!!?アタシ初探索なんだけど!?」


端末は動かない。仲間はいない。現在地は五十八階層。


そして。


ここからどうやって帰ればいいのかも分からない。


「……マジでどうすればいいの!?」


その場に力が抜けたように座り込む。


こうして、鬼塚朱音の想定外すぎる深層探索が始まった。



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