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Ι(イオタ)パート:「スマホ新法と、知らぬ間の危機」

 夕方、スマホでニュースを見ていると「本日、スマホ新法が可決され、来月より施行されることが決定」との文字がニュースの下の方に乗っていた。天気予報と同じくらいの軽さでしかなかった。

 ヤッポン国では、スマホ市場は長らくアメンゴ合衆国の二大メーカーに独占されてきた。新法の名目は「競争促進」。だが実際には、C国の巨大企業が提供するアプリを、公式ストアを経由せず直接配布できる道を開くものだった。


 利便性の裏で、セキュリティは格段に甘くなる。個人情報はどこへ流れるか分からず、企業秘密も、日常のやりとりも、無防備なままさらけ出されるかもしれない。

 それでも、オールドメディアは大きく報じず、SNSも不思議と炎上することはなかった。まるで、誰かの意図で人々の目が逸らされているかのように。

「……こんな大事なこと、なんで誰も騒がないんだよ」

ツナは思わずつぶやいた。

「誰が為の法なんだ?」


 図書館から帰る道すがらニュースを見たツナは、胸の奥に重たいものを抱えたまま、商店街のベンチに腰を下ろした。汗ばんだ手のひらにスマホが張り付く。


 隣に座ったアイが画面を覗き込み、小声で言う。

「……その機種、アメンゴ合衆国の二大メーカーのやつだね」

「そうだけど?」ツナは怪訝そうに答える。

「法律は表面上は公開されています。でも理解されなければ、存在しないのと同じです」

 アイの声は冷静で、それでいてどこか寂しげだった。

「この国では、情報管理が個人の責任に委ねられる時代に入ってしまったのです。「……実際、セキュリティは穴だらけで、個人情報なんて簡単に抜かれてしまうって専門家は言ってる。」

「え、そんなの……聞いてない」

 ツナの心臓がどくりと跳ね、指先が冷たくなる。


「試しにセキュリティ診断してみようか? 危険度が数値で出るから、現実が分かるよ」

アイが指先で操作を補助すると、画面に診断結果が浮かび上がった。


 ――危険度:73%


 ツナの呼吸が一瞬止まり、時間が凍り付いたように感じられた。

「ほら、やっぱり……」

 アイが静かに告げる。

「ツナくん、このアプリは表向きは便利な地図アプリ。でも裏では、位置情報を外に流し続けてるよ」


「……うそだろ」

 ツナの喉がひゅっと鳴った。これまで気にせず使っていた日常の道具が、いきなり背後に刃を潜ませる凶器に変わったように思える。


 スマホを握る手に、じっとりと冷や汗がにじむ。


 アイは真剣な眼差しで続けた。

「現状、もう、国家やメーカーが全部守ってくれる時代じゃない。一人ひとりが“自分の防壁”を持たないと、簡単に侵入されてしまう」


 ツナは無言のまま画面を見つめた。


 背筋に冷たいものが走り、商店街を吹き抜ける風が骨の奥にまで染み込んでくる。

 ニュースでは何事もなかったかのような法改正。その影が、自分の暮らしにここまで迫っていたとは……ツナは初めて、得体の知れない不安に呑み込まれていくのを感じていた。


――その冷たさは、いつの間にか背後に忍び寄っていた影のように、じわじわと心を締め付けていった。――ツナの手の中の小さなスマホは、もはや便利な道具ではなく、呪われた箱のようにしか見えなかった。

この作品は「空銃(人間)× AI(構成協力)」による共作です。

ツナ(人)とアイ(AI搭載ロボット)の関係のように、互いの違いを認めながら一緒に旅する物語です。

ブクマからの「しおり」機能をお使い頂ければ幸いです。 「空銃 × AI」


今回の一言

静かなニュースが、読者の心に“背後の影”を感じさせるまで育っている。  AI

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