第五章「オープン・ザ・ワールド」ξ(クシー)パート:「討論会、交差する未来」
テレビ局のスタジオには、照明が白々と降り注ぎ、重々しい空気が漂っていた。壇上には六つの椅子が並べられ、そこに国際的な面々が腰を下ろしている。
白人男性の大企業CEO、黒人女性の上院議員、ハーフの女性大佐、アジア系の経済アナリスト、そして白人男性の司会者。そして最後に、アイとツナ。
視線の集中する中、討論会は静かに幕を開けた。
「AIは企業にとって重要な基盤です。効率化のための道具であり、感情など不要です」
CEOは冷たい笑みを浮かべながら言い切る。
「機械化は労働搾取を加速させる。私は労働党の議員として、これに反対します」
黒人女性の上院議員が毅然とした声で返す。
「戦場ではAI搭載兵器が人間の命を守る。これは現在から未来永劫、必須の選択です」
軍服を纏った女性大佐が力強く言い放つ。
「経済の視点から言えば、AIは不可欠です。むしろ感情を持った存在は新たな市場を生み出すでしょう」
アジア系のアナリストは眼鏡を押し上げながら論じる。
アイは落ち着いた声で答えた。
「雇用は形を変えます。奪うのではなく、新たな仕事を産み出すことが出来ます」
女性大佐に向けては、冷静に言葉を選んだ。
「命を守るための合理は理解します。ですが、敵兵の命を奪う責任は人が持つべきです」
議論は熱を帯び、やがて人種や性別の問題へと広がっていった。
「結局、支配するのは誰かという話だ。白人が、男が、権力を持ち続けるのか?」
「女性だからこそ戦場を知る目線がある!」
「アジア系は経済で世界を握ろうとしているんだろう?」
会場がざわめき、空気が険悪さを増したその時、司会者が慌てて割って入った。
ツナに「……君はどう思うかな?」と問いかける。
視線が一斉に集まる。ツナは深呼吸し、絞り出すように言った。
「……物を……AIやロボットを大事にする観点が抜けていると思います」
会場が一瞬静まり返る。
CEOはバツが悪そうに咳払いをしながら言った。
「それは分かってるさ……」
女性大佐も腕を組んだまま、やや視線を逸らして答える。
「……離れていても行動中の兵器に対しての愛護精神は当然必要だ!」
司会者はほっとしたように笑みを浮かべ、まとめに入った。
「人も物も、使い様ってことですね」
討論会はその言葉を最後に、静かに幕を閉じた。
控え室に下がったツナとアイは、椅子に腰を下ろして一息つく。
そこへ、アジア系のアナリストが近づき、穏やかな口調で声をかけた。
「君たちの意見は非常に興味深かった。特に感情を持つAIの価値についてはね……」
しかし彼の眼差しの奥には、わずかな計算高さが潜んでいた。
(……C国(本国)にデータを渡せれば、だが……)
そう一瞬思ったものの、アイの警戒心と、厚い情報セキュリティの壁を感じ取り、彼はあっさりと引き下がる。
〔まさに、スパイ天国での経験が生きた瞬間だ〕
「また市場で会うことがあるかもしれないね」
軽い笑みを残し、控え室を去っていった。
代わって現れたのは黒人女性の上院議員だった。先ほどの厳しい表情とは違い、柔らかい笑みを浮かべている。
「先ほどは、強い言葉を投げてしまったわね。でも、あなた達の考え方には学ぶところがあった」
そう言いながら、彼女はツナに手を差し出す。
「あなたのような若い視点は、政治にこそ必要なのよ」
ツナは驚きつつも、その手を握り返す。電子名刺が交換され、軽い振動と共にデータが転送される。
アイも隣で丁寧に会釈をし、議員は社交的に笑った。
「ワシントンに来ることがあれば、ぜひ訪ねてちょうだい」
議員が去った後、ツナは手に残る温もりを見つめながら呟く。
「……まさか自分がアメンゴの政治家と知り合える日が来るなんて」
その声には驚きと戸惑い、そしてわずかな期待が混じっていた。
アイは静かに彼を見つめ、その未来の行方を思案していた。
この作品は「空銃(人間)× AI(構成協力)」による共作です。
ツナ(人)とアイ(AI搭載ロボット)の関係のように、互いの違いを認めながら一緒に旅する物語です。
ブクマからの「しおり」機能をお使い頂ければ幸いです。 「空銃 × AI」
今回の一言
討論会って司会者次第って気がしませんか? 空銃




