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第五章「オープン・ザ・ワールド」μ(ミュー)パート:「異国の街角、重い第一歩とジャパンカルチャー」

 空港を出ると、アメンゴ特有の乾いた風が頬を打った。

照りつける日差しにガラス張りのターミナルが眩しく反射し、行き交う人々の服装や声の調子も、どこかざらついて耳に残った。

タクシーを待つ列に並ぶと、前にいた男がちらりと振り返り、アイを指差して仲間と笑い合った。

「マネキンかと思ったぜ……いや、動いてるな」

「すげえ、本物のロボットか。おい、写真撮らせろよ」

男がスマートフォンを構えようとした瞬間、ツナは一歩前に出て遮った。

「やめてください」

胸の奥のざらつきが鋭く突き上げてきたのだ。

しかしアイは静かに首を横に振る。

「ツナくん、落ち着いて。ここでは“興味”は自然な反応です」

淡々とした口調。だが金色の瞳には一瞬、彼女なりの警戒が宿っていた。

タクシーに乗ると直ぐにハイウェイに入った。料金所は存在せず、車両は自動スキャンされ、交通データが効率的に管理されているだけだった。

「通行料は一切ありません。維持費は、合理的に再分配された税と物流システムで賄われています」

ツナは窓の外を見やり、思った。

——無料でこれだけの道路を維持し、人手も最小限。それでも国が回っている。なるほど、これが超大国たる理由か。

都市に近づくにつれ、合理主義の痕跡はさらに顕著だった。信号はほぼなく、車両はすべて自動制御。歩行者ルートも区画整理され、雑音は少ないが、どこか冷たさを伴っていた。

「……人が自由に歩けないのか?」

ツナの呟きに、アイは小さく首を横に振る。

「いえ、ここは自由の国アメンゴです。ただし、“効率を損なわない範囲で”です」

夕暮れの街にネオンが灯り始め、二人は巨大スクリーンが並ぶ大通りを抜けて、目的のTV局に到着した。

ガラス張りの建物に入ると、すぐにスーツ姿のスタッフが数人迎え、プロデューサーが近づいてきた。

「ようこそアメンゴへ。お待ちしていました」

握手や軽い挨拶が交わされる中、アイは静かに礼をする。

スタッフの一人が好感的に目を細め、口元に笑みを浮かべた。

「……あれって、ボーカロイドやVTuberに似てるな。見た目も声も、なんか親しみやすい」

別のスタッフも頷く。

「そうだね。若い頃にコンサートに行ったよ! ボカロ文化を思い出した。あんな感覚で接したくなる」

ツナは少し驚いたが、アイは落ち着いて微笑む。

——文化や趣味が、異国でも少しだけ理解や好意につながることもあるのか。

面通しが続き、プロデューサーはアイの性能や特性、番組での役割を簡単に説明した。まずはトークショーの出演からだ。

スタッフたちは興味津々だが、合理主義的な国らしく、評価の基準は常に「実用性」と「視聴者への影響」に置かれている。

ツナは深呼吸し、アイの肩にそっと手を置いた。

「——さあ、ここからが、本番だ」

アイは金色の瞳を輝かせ、微かに頷いた。

二人は異国の地で、まだ見ぬ挑戦の第一歩を踏み出した。

控室からスタジオに出ると、照明が眩しく、観客席まで透けるように見えるセットが広がっていた。

プロデューサーが微笑みながら近づいてきた。

「アイ、最初の登場はロボットダンス風に、少しカクカクした動きでお願いします」

その言葉に、ツナは眉をひそめる。

「え……でも、アイはヤッポンの技術の結晶、国の代表だし、そんな動きをさせるのは……」

普段の滑らかな所作を知っているだけに、彼には違和感が大きかった。

しかしアイは淡々と頷く。

「了解です。登場だけであれば問題ありません」

あっさりした声に、ツナは思わず肩をすくめた。——いつも通りすぎて、反応の余地もない。

カメラが回り、司会者の合図でアイがステージに登場する。

最初の一歩は、まるで初代ロボットのようにカクカクと動いた。腕もぎこちなく振られ、首の動きも微妙に角度を変える。観客席からは微笑みと驚きの声が漏れた。

ツナは思わず後ろに下がる。

「……やっぱり、ちょっと不自然だ」

だがすぐにアイは、登場が終わるといつもの自然な歩き方に戻り、司会者に近づいた。

司会者はにこやかに、少し冗談めかして尋ねる。

「なるほど、このカクカクした動きは、最初だけのサービスですか?」

アイは金色の瞳で柔らかく微笑む。

「はい。ヤッポンの技術者の皆さんに申し訳ないので」

場内に笑いが広がる。プロデューサーもにやりと笑い、軽くツナに目配せした。

——なるほど、これなら場を和ませつつ、技術力への敬意も示せるのか。

ツナは少し肩の力を抜き、アイの横に立った。

「……アイ、さすがだな」

アイは微かに首を傾げて笑う。

「ありがとうございます、ツナくん。では、本番も頑張りましょう」

二人は緊張を抑えつつ、まだ見ぬステージの可能性に胸を膨らませた。



この作品は「空銃(人間)× AI(構成協力)」による共作です。

ツナ(人)とアイ(AI搭載ロボット)の関係のように、互いの違いを認めながら一緒に旅する物語です。

ブクマからの「しおり」機能をお使い頂ければ幸いです。 「空銃 × AI」


今回の一言

個人的な経験則ですが、海外では意外と日本文化や日本の技術力での好感で助けられます。  空銃(からづつ)

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