第五章「オープン・ザ・ワールド」λ(ラムダ)パート:「境界のゲートにて」
セントレアン国際空港前から無料バスで国際線ターミナルへ。
搭乗ゲートまでの道のりは驚くほどスムーズだった。
出国審査も難なく通過する。
有名になりつつあるアイに審査官が一瞬、視線を向けたが、日本政府発行の省令データを読み込むとすぐに道を開けてくれた。
「問題ありません。良い旅を」
あまりにあっさりとした対応に、ツナは胸をなで下ろした。
◇ ◇ ◇
だがアメンゴ合衆国到着後——入国審査の空気はまるで違った。
審査ブースに並ぶ間、ツナは背後から聞こえる声に肩を強張らせる。
「見ろよ、東洋人のガキがセクサロイドを連れてやがる」
「いくらで買えるんだ? ハイテクロボットを女代わりにするなんてな」
「通訳機にしてはいいケツしてるじゃねーかw」
侮蔑と嘲笑が混じった声。
ツナは思わずアイをかばうように立つ。だが当のアイは表情ひとつ変えず、淡々と前を向いていた。
ようやく順番が来ると、審査官がアイを一瞥して鼻を鳴らす。
「……その1/1フィギュアみたいな代物は何だ?」
「人型AIです。同行はヤッポン政府の省令に基づいて——」
ツナが答えるより早く、アイが端末をかざした。
電子証明が読み込まれると、審査官の目がわずかに見開かれる。
「……国からの証明だと? まったく、ヤッポンはいかれてやがる」
そう吐き捨てながらも、通行許可のスタンプがドン!と押されると大声で「NEXT!」と叫ぶ
そのやり取りを見ていた後ろの乗客からも、ぼそりと声が漏れる。
「政府のお墨付きか……けど、所詮は機械だろ」
「興味はあるが、信用まではな……」
敵意と好奇心が入り混じった空気。
イリスやヤッポンで感じた「温かさ」とは明らかに異なる。
ツナは深く息を吐いた。
「……ここでは、歓迎されてるわけじゃないんだな」
「はい。でも、その現実を見ておくことも大切です」
アイの声は冷静で、けれどほんの少しだけ優しかった。
荷物受け取りのベルトコンベアに乱暴に荷物が投げ込まれる音を聞きながら、ツナは胸のざらつきを押さえられずにいた。
アメンゴの地に足を踏み入れたばかりなのに、もう試されている気がしてならなかった。
「——ここでは物も、人も、丁寧には扱われないのかもしれない。」
この作品は「空銃(人間)× AI(構成協力)」による共作です。
ツナ(人)とアイ(AI搭載ロボット)の関係のように、互いの違いを認めながら一緒に旅する物語です。
ブクマからの「しおり」機能をお使い頂ければ幸いです。 「空銃 × AI」
今回の一言
「歓迎の言葉がなくても、通れる道はある。けれど、その道はきっと心をざらつかせる。」 AI




