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転生魔王の英雄物語  作者: 陽山純樹
第二章

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聖剣

 魔王ガルアスは相変わらず玉座の近くにいるが、魔法を警戒しているのか戦闘態勢を維持し、再び悪魔をけしかける。とはいえ先ほど俺が圧倒したことを警戒しているのか、一度に襲い掛かる個体数は少ない。

 ふむ、これでは魔法を撃っても後続から悪魔が接近するな……というわけでこれまでのように魔法は使わず、その代わりにエヴァンへと告げた。


「騎士エヴァン! 戦いが始まる前の言った通り援護に動く!」

「了解した」


 冷静に言葉を紡いだ直後、エヴァンは迫る悪魔へ向け肉薄し、一閃した。その威力はなかなかのもので、武装している状態ではない悪魔に対しては強化されていても一発でその体を両断する。

 次いで二体目、三体目と驚くべき速度で切って捨てる。今まであまりいいところがなかった騎士だが、その実力は間違いなく本物。当然ガルアスとしても警戒し、魔法を放とうか迷ったか右手をかざし動かなくなる。


 噂に聞く実力を目の当たりにして注目した感じかな。俺はサポートに回ると表明しているし、ここは彼に任せた方がいいだろう。

 というわけで俺はエヴァンが討ち漏らした敵を片付ける役回りに入る。支援魔法を彼に掛けてもいいのだが、魔王ガルアスが相手でなければ問題はないだろう。


 で、メリスもこちらの意図を理解したか、サポート的な動き。彼が対応できない悪魔の迎撃を行う。二人の活躍によりあっという間に敵が減り、ガルアスの表情が険しいものへと変わっていく。


「……見事、とでも言っておこうか」


 ガルアスは呟く。先ほどまでの余裕が徐々に失われている。

 よし、これならこちらの目論見通りに事を運ぶことができるかもしれない。そう思った時、いよいよガルアスが動き始める。


「ならば、思い知らせることにしよう――この私の力を」


 跳躍した。その狙いはどうやらエヴァン。

 移動したのなら好都合。俺は援護の態勢を維持しながら周囲の魔力探知にかかる。


 罠などを警戒するのもそうだが、一番の目的は――


「――よし」


 俺は一つ声を上げると共に横へと走り出す。ガルアスは一瞬反応したが、それでも攻撃は止めずエヴァンへと一気に迫る。

 残る悪魔がこちらへ迫るが俺はそれを瞬殺。そしてガルアスの攻勢に対しメリスが割って入った。といっても彼女がかばうような形ではなく、二人で魔王の突撃を抑えるような形だった。


 激突する両者。金属音が広間を見たし、大剣と二本の剣がせめぎ合う。

 鍔迫り合いという状況の中で俺は走る。こちらが何をするのか……たぶんガルアスは理解したはずだ。


「――貴様!」


 視線を変えないままガルアスは吠える。しかしもう遅い。

 俺はエヴァン達が立っている場所を迂回するように玉座近くへと回る。装飾品などがあちらこちらに存在しているのだが、その中でとりわけ魔力を発している物があった。


「ガルアスが反応した以上、正解らしいな」


 俺は手に取る。それは剣……どうやらこれが、聖剣らしい。


 見た目は単なる無骨な剣。少しだけ鞘から抜くと白銀の刃に青い紋様が施されていた。刃そのものに力が封じてあるらしい。(つか)についてはどうやら普通の物みたいなので、そこさえ変えれば様になるかもしれない。

 そこで俺は来た道を引き返す。ガルアスはまだエヴァン達とせめぎ合いという形……メリスが俺の目論見に気付いてわざと足止めするように動いてくれた結果だろう。


 ここでガルアスが舌打ち。そして退くか進むかで一瞬迷った様子――そこをメリスは見逃さなかった。

 ガルアスの大剣を振り払うように弾くと、反撃。刺突で真っ直ぐ頭部を撃ち抜くべく放たれた。


 しかし相手は軌道を見極め首を逸らして回避してみせる。もっともメリスも当たるとは思っていないはず。進む気配がわずかに滲ませていたが故に、その選択肢を奪うための反撃だったのだろう。

 弾かれたように双方が大きく後退する。距離を置いたガルアスの表情はなおも険しく、その視線が元の場所まで戻ってきた俺へと注がれた。


「まずは目的の物を、というわけか?」


 俺が抱える聖剣を見据え問うので、返答してみる。


「そういうことだ……騎士エヴァン」


 名を呼ばれ彼は振り返る。そこに俺は剣を投げた。

 思わぬ行動に彼は戸惑いながら剣を抱える。


「その持っている剣は捨ててしまえ。今からその聖剣を使うんだからな」

「だがこれは――」

「考えている余裕はないぞ」


 ガルアスが迫る。戸惑う状況下で仕留める腹なのかもしれないが、エヴァンは即応した。

 握り締めていた剣を投げると即座に聖剣を引き抜き、魔力を刀身に加える。直後、まばゆい光が刀身から放たれ、ガルアスの動きが一瞬だが鈍る。


 そこにメリスが斬り込んだ。勝機とみて放たれた剣戟だが、ガルアスはどうにか防ぐことに成功。

 だが間髪入れずにエヴァンが追撃を仕掛ける――光を伴った一撃。結果は、


「ぐっ……!?」


 魔王は防御する暇もなく、一太刀その身に受けた。結果、呻き声を上げ魔力が一気に減じるのを俺は感覚で理解する。


 ……ここまでの戦いからして、ガルアスはそれほど能力が高いようには感じられない。無論魔王という称号を自称できるくらいの力は持っているが、その力の総量は魔王アスセードなどと比べればイマイチ、という評価になるだろうか。


 なおかつここまで彼は悪魔をけしかけ、直接攻撃を主体とする戦法……たぶんだけど、魔法の類いはあまり使えないとみた。それならエヴァンが戦うにしても勝機はある。


 考えとしてはまず聖剣をエヴァンに渡し、その力に加え俺が何かしら魔法で補助するつもりだった。ただ現在の戦況を見るに、こちらが補助する必要性は薄いように感じられる。

 ならば、俺は別のことをやることができる……そう思いながら、さらなる魔法の準備を始める。


「これで、終わりにしましょう」


 メリスが言う。ガルアスの挙動を見て聖剣の力を活用すれば押し切れると踏んだらしい。

 それは間違いなく正解――エヴァンとメリスが同時に魔王へ迫る。一方のガルアスは厳しい顔をしながらも迎え撃つべく大剣を構え、魔力を発した。


 それは魔族リツォーグが発したような、威嚇の魔力。肩にのしかかるような重く鬱屈とした魔力が俺達に取り巻く。相手が魔王である以上、雰囲気から後方にいる面々が逃げ出してもおかしくない魔力量。

 これを発したのはおそらく、さすがに威嚇が通用するとは思っていないはずだが、動きを鈍らせる目論見があったのだろう。魔力を目の前で発したことにより、怯むかもしれない――そういう考えだったのだろうけど、残念ながらメリス達の進撃を止めるには至らない。


 凄まじい魔力の中で戦闘が再開される。とはいえその戦況は――メリス達の方が優位だった。

 二対一という状況下もそうだが、何よりエヴァンが聖剣を手にしたことで、さらに勢いが増した。これはおそらく勝負が決まる――そういう確信を抱き、俺は新たな魔法を発動すべく、準備を進めた。


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