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転生魔王の英雄物語  作者: 陽山純樹
第二章

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悪魔と魔王

 時間的にはおそらく日が出るくらいの時間だろうか……そこで全員が起床し、支度を調えた。


「全員、体調は問題ないか? もしあるのなら手を挙げてくれ」


 エヴァンの問いに反応はなかった。よって俺達は泉を脱し、迷宮の奥へと進む。

 決戦はそう遠くないうちに始まると思うのだが……しかし、散発的に悪魔と交戦はすれど、寝ていた際も襲撃はなく、なんだか拍子抜けと思うくらいのもの。


 ここまで何もないと魔王ガルアスに考えがあるってことなんだろうけど……魔族との戦いを考慮し悪魔をけしかけてもあまり意味がないと考えたのか。

 そうなると、ガルアスが次に打ってくる手は……予想をしながら仲間達と共に進む。やがて、進行方向から明らかに今までとは異質な魔力が生まれ始めた。


「どうやら、近いようだ」


 エヴァンが呟く。にわかに騎士や冒険者達が動揺し始める。ここまでついてきたにしろ、やはり恐怖は感じるらしい。


「魔王に挑むのは……私でいいのか?」


 そしてエヴァンは確認を行う。俺はそこで首肯し、


「ああ、それで構わないさ……こちらはできる限り援護させてもらう」

「ありがたい。では進もう」


 エヴァンを先頭にさらに迷宮を歩み――程なくして、俺達は巨大な鉄扉の前へと到達した。


「ここにいるようだな」


 索敵魔法など使わなくてもわかる。扉の奥からひしひしと感じられる強い魔力。

 で、この扉をどうするのか……そう考えている間に、重い音と共に扉がゆっくりと開き始めた。


 全員がここで武器を構える。さすがに魔王が現われるということでアイーダなんかも表情が固まり、前方を注視。

 扉の隙間から、中の景色が見え始める……直線的に進めばどうやら玉座へと辿り着く。ただそこまでの道のりは、どうやら相当険しいようだった。


 なぜか――悪魔がいた。それも大量に。


「このパターンできたか」


 いくつか浮かんだ候補の中で戦力の集中というのがあった。魔族がやられた事実を重く受け止め、またその戦力を考慮し最奥で最大限の戦力をもって迎え撃つ。魔王ガルアスはそういう選択をしたようだ。


「遠路はるばる、ようこそ我が迷宮に」


 玉座にいる存在が立ち上がり、俺達へ朗々と告げた。

 遠目だがはっきりとわかるのは黒髪かつ、赤いまるで王様が着込むような法衣姿であること。顔立ちなんかは三十前後の男性といったところで、野性的な顔つきから法衣より無骨な鉄鎧の方が似合っていそうな容貌。そして傍らには大剣が一本。ただ魔力からすると、聖剣ではないようだ。


 たぶんあの法衣も奪ってきた物なのだろう……そんなことを考えていると、エヴァンは口を開いた。


「魔王ガルアスで相違ないか?」

「ああそうだ。ずいぶんと余裕に見えるな。私の部下によって恐怖を植え付けられたというのに」


 魔法か何かで見ていたようだ……戦力を減らすことも計画の一つか。


「とはいえ、逃げ出す者はいても犠牲者が出なかったことは想定外だった……そこの冒険者達の腕が良いと見た」


 こっちやメリスに視線を移す。ひとまず俺達が何者か、という情報は持っていない雰囲気。

 俺はともかくこの国で活動していたメリスについて知らないというのは……ガルアスにとっては騎士達に注意すべきで、冒険者は眼中になかったということなのか。


「しかしながら、大変残念だ。ここまで来てもらって申し訳ないが、お引き取り願わなければならない……奈落の底へ」

「断る。底へ行くのは貴様だ」


 エヴァンの体に魔力が生じる。それに対しガルアスは哄笑を上げ、


「この絶望的な状況で吠えるとは褒めてやろう! では始めようか! 一方的な蹂躙を!」


 叫び、タクトを振るかのようにガルアスは両手を挙げる。同時、悪魔達が一斉に俺達へ向け進撃を開始した!






「アイーダ、オルバ! 後方への注意と騎士や他の冒険者達と連携し身を守れ!」


 交戦が始まる前、俺はアイーダ達へそう指示を出して騎士エヴァンと並び立つ。同時、凄まじい勢いを伴い悪魔が突進してきた。

 まともに食らったらダメージはなくとも衝撃により吹っ飛ぶかもしれない。あるいは悪魔に飲み込まれ身動きがとれなくなるかもしれない――どちらもお断りだった。


 メリスやエヴァンが動く前に俺は左手をかざして魔法を発動させる。真正面を覆う巨大な光弾……なのだが、それが炸裂した瞬間、間近に迫っていた悪魔が全て吹き飛んだ。

 その衝撃は仲間が予想していたよりもずっと大きかったはずで、後続から悪魔が一時やってこないほどの結果を生む。とはいえ吹き飛び消滅した悪魔の屍を越えて俺達の下へ迫ろうとする個体が現われ――


「面倒だな!」


 再度光弾を放つ。二つ目の魔法により、またも目の前の悪魔は全て吹き飛ぶ。

 たぶん後続からいくらでも出てくると思うが、それをどうにか抑え込んでいる……今使っている魔法は極めて単純な光弾で仕掛けもない。ただしその何もなさから複雑なことは何もいらず素早く魔法を放つことができる。


 結果として悪魔が肉薄するより前に魔法を発動することができ、連発により一掃する……うんうん、光によって敵が見えないのが残念だけど、敵の目論見を潰すことはできそうだ。

 ただガルアスとしても戦力を集中させたわけだからあんまり浪費はしたくないはず……ということは十中八九戦法を変えてくるだろう。


 それなら俺は……と、色々考える間にまたも光弾が炸裂。だが今度は手応えがなかった。どうやら悪魔は退いたらしい。

 まあさすがに被害が拡大したら退いて当然だよな……何も撃たず待っていると光が消え、数が減った悪魔とガルアスが見えた。


「それなりに強化したしもべだが、ずいぶんと簡単に消してくれるな」


 迷宮に入った直後に戦っていた個体よりも強いのだろう。しかし俺の魔法がそんなこと知らんと言わんばかりに敵を倒すものだから、警戒した様子。

 ここまでは前哨戦で、本番はここからかな……悪魔を全部なぎ倒して魔王を丸裸にするのもやり方としては悪くないけど、もっといいやり方はないかな……そんなことを思った矢先、一つ思い浮かんだ。


「面白いぞ、お前達」


 状況からして相当まずいはずだが、魔王ガルアスは平然と語る。


「なるほど、ここまで来た以上は生半可な実力でないことは承知していたが……面白い」


 あくまで余裕で語るその姿に対し、騎士エヴァンは剣の切っ先を魔王へ向け、


「ここで終わらせる……魔王ガルアス」

「ああ、いいだろう。逃げるつもりもない。ここで全てを終わらせよう」


 宣言と共に魔力が高まる。どうやらここから本番……しかも一気に終局へ向かうことになりそうだ。

 そうした中で俺ができることは……思考する間にいよいよガルアスが動き始める。さらに悪魔達も戦闘態勢に入り――こちらもまた、それに対抗するべく武器を構えた。


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