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第四話 「グッドアイデア! いや、バッドだろ?」

 教室の扉を開けたのは、同好会の顧問である山本先生だった。先生は困った顔をしながら教室へ入ってくる。


「どうしたんですか先生? 顔が暗いですよ」


 金本が、先生の顔を見てそう話しかける。


「それが軽音学部の生徒から、この教室を使いたいと突然言われてな」


 その言葉を聞いた僕らはおどろく。


「ええー! 部室なら音楽室があるじゃないですか?」


 一番におどろいていた金本は、そう言葉にする。


 軽音学部へ入部した生徒が今年は多すぎて、音楽室だけでは限界だと先生は僕らに話した。


「そんな、急に言われても困りますよ! 僕らにはこの教室が必要ですし」


 金本は納得できずに、先生に抗議をしている。


「わたしも、そうは言ってはみたんだが……音楽研究同好会にこの教室は、もったいないと言われてしまってなあ」


 わずか五人しかいない同好会に広い教室。


 ーーたしかにもったいないと言えばそうだろうけど。


 あの軽音学部に教室を取られてしまうのも気にくわない。それに、この教室にはギターが弾ける設備が整っている。


 仮にバンドができなくてもギターを弾くことができるため、僕にとっては一大事だ。


 ーー同好会のピンチというより、僕が大ピンチだ!


 そう考えた僕は、先生に詰め寄る。


「なんとかならないんですか? 軽音学部の要望が通ったら、教室を追い出されちゃいますよ」


「……うーむ、部活動の要望は生徒会が判断するから生徒会を説得すればなんとかなる……かも?」


 先生が先生の名前を出すと、金本達は困惑した顔をしている。


「どうしたんですか? 今すぐ生徒会へ行って、軽音学部の要望を取り下げてもらいましょうよ」


 僕がそう言うも、金本たちは黙っている。


「生徒会か……それは、難しいかもしれない」


 金本はこういった部活動の要望があった場合、生徒会はその部活動の活動内容を見て判断すると僕に話した。


 学校や地域に貢献しているような活動であれば、その部活は優遇されるらしい。


「じゃあこの音楽研究同好会って、なにか貢献してる活動をしてたんですか?」


 説明を聞いた僕は、金本に尋ねた。


 アニメ、ゲームの音楽を広める活動をしているならば、なんらかの貢献はしているはずと僕は思った。


「いや、その……」


 金本は、言いづらそうな様子をしていると、僕は席を立って教室を出る。


「こうなったら、僕が生徒会室に行くしかない!」


 僕は生徒会室へと向かい、歩き出した。金本の反応からして、貢献しているような活動はしていないだろう。


 ーーこうなれば、僕が直談判するしかない!


 僕は生徒会室へ着くと、扉にノックをする。


「失礼します! 音楽研究同好会一年の岩崎です」


 扉を開けると、生徒会長と思われる上級生、そして数人の生徒会役員の生徒がいる。


「なにかご用ですか?」


 生徒会役員の生徒がそう尋ねてくる。僕は軽音学部の要望を取り消して欲しい趣旨を説明する。


「とにかく! 音楽研究同好会は、あの教室がなくてはダメなんです」


 横で聞いていた生徒会長は、役員から紙を受け取ると、話し始める。


「音楽研究同好会はこの活動報告書を見る限り、目立った活動はしていないようだね」


 僕は話を聞いて、なにかの間違いかと思った。


「え? つまり、なにもしてなかったということですか?」


 そう聞いと、生徒会長は黙ってうなずく。


「正直、この同好会には手を焼いていてね。学校側と相談して、今後どうするかを検討しているんだよ」


 ーーそれはつまり、同好会を無くすってことなのか。


 最悪の場合を考えた僕は、ショックを受ける。


「軽音学部は、ライブを通じて我が校の生徒だけでなく他校からも人気がある」


 僕は生徒会長から、軽音学部の活動報告書を見せてもらう。


 学園祭などだけでなく、音楽のイベントにも参加していると書いてあった。


 たしかに、会長が話すように僕らと軽音楽部では活動の差があきらかに違う。


「ここまで差があるのだから、軽音学部に教室を譲ったほうが我が校にもいいだろう」


 生徒会長は嫌味を含むような口ぶりで、そう話した。


「アニメやらゲームの音楽を聴いてしゃべるだけの同好会など、無意味ではないかね?」


 僕は、その手の音楽など誰も興味がないと言っているように聞こえた。


「つまり僕らは、軽音学部みたいな活動をして評価されれば生徒会は納得するんですね?」


 生徒会長の見下したような言い方に、カチンとした僕はそう尋ねてみた。


「もし成功したら、教室はそのまま音楽研究同好会が使わせてもらいます!」


 すると、生徒会長はニヤリと笑っている。


「よかろう、そこまで言うならばやってみたまえ」


 話が終わると僕は、扉をバタンと閉め生徒会室を出て行く。


「くそ生徒会が! 黙って聞いてれば、好き勝手に言いやがって」


 イライラする僕は、同好会がある教室に着くと、思いっきり扉を開けた。


「岩崎くん、どうだった? 生徒会に行ってたんだろ?」


 そう聞いてきた金本達に、生徒会で僕が言った内容を伝えた。


「ええ……そんなこと言ってきたのかい?」


 僕の話を聞いた金本は、驚くような顔をしている。


「簡単な話ですよ! 今こそ、この同好会の活動目的を全校生徒に知らしめるチャンスです」


 この活動はアニメ、ゲームの音楽の良さをみんなに分からせるのが目的なはずだ。


「とは言っても、軽音学部のように生徒から人気になる活動ってなんだろうか?」


 和田がそう言うと僕はニヤリと笑って答えた。


「あるじゃないですか、軽音学部のように音楽をわからせてやる方法が」


 理解していない顔をする金本たちに、僕はこう話した。


「同好会でバンドを組んで、ギャルゲーソングでライブをしましょう!」


 それを聞いた全員は、おどろいたのだった。

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