第三話 「バンド結成の兆し……が見えるはず!」
学校の昼休み、僕は机でパンにかじりついている。
「ふぁぁ。眠い……」
ギャルゲーに夢中になっていた僕は、夜中まで起きてプレイしてしまった。
あそこまでハマると思っていなく、複雑な気分になった。
ーーギターが使われている曲がたくさんあったな。
パンをかじりながらそう考えていると、誰かが話かけてきた。
「がんちゃん大丈夫? 顔が死んでるよ」
こんな失礼なことを言うやつは、同じクラスメイトの山岸ひなたである。
「何回も言うけど、そのがんちゃんって呼び方はやめろよ」
僕がそう言うとひなたは、隣の席に座る。
「なんで? いいじゃん。かわいいあだ名だよ?」
ひなたは、クラスで誰よりも明るく、誰に対しても気さくに話すためクラスでも人気がある。
友達のいなかった僕に、最初に声をかけてきたのもひなただった。
「おまえな……友達が多いんだから、僕に話しかけてくることはないだろう?」
話しかけてこられると、他の男子から睨まれてしまうため、あまりいい気分はしない。
「そんな、ひどい……がんちゃんが一人で寂しくごはん食べてるの見て声をかけてあげたのに!」
ひなたは、しくしくと泣くしぐさをしている。
冗談のつもりで言っているのだろうが、こういうからかう感じが僕は苦手だ。
「余計なお世話だよ! さっさと友達のところに帰れ帰れ!」
僕が手で追い返すも、彼女は無視して話を続けた。
「そういえば、がんちゃんって軽音楽部になにかしたの? 友達から聞いたんだけど」
ーー思い出したくないことを言ってくるな……こいつ。
僕は少しだけ、不機嫌になった。
「そうだよ。軽音楽部にムカつくことを言われたからな、ついカッとなっちまった」
それを聞いたひなたは、大笑いしている。
「あはは、がんちゃんピンチじゃん! バンドを組みたいとか言ってたのに」
ゲラゲラと笑い出してそう言うと、ひなたは席を立つ。
「早くバンドできたらいいね! 頑張ってー」
言いたいことだけ言ったひなたは、友達のところへ去っていく。
ーーあのやろう! 今に見てろよ。必ずバンドを組んで見返してやる!
そう心に決めた僕は、残りのパンにむしゃぶりついた。
放課後になり、昼間のことにイライラしながら同好会がある教室へ向かった。
「なにがギャルゲーだ! 妹が大好きじゃボケが! そうだよ、バンドだバンド!」
僕がぶつぶつとしゃべりながら教室の扉を開けると、中から音楽が聴こえてくる。
「やあ! 岩崎くん」
金本が奇妙な音楽を聴きながら、僕にあいさつをする。
「先輩……また変なアニメの曲を聴いてるんですか?」
呆れながらも僕は椅子に座る。
「変とは心外だな! これは、人気のアニソン歌手の名曲だよ」
自慢げに曲について話す金本を無視をして、僕はギターを取り出す。
「おやおや、無視ですか。岩崎くんは冷たいなー」
そう言うと金本は曲を止めて、なにか準備を始めている。
「岩崎くん! 今日は週一回の研究報告会だから、君にも参加してもらうよ」
ファイルを取り出すと、いきなり金本はそう話す。
ーー研究報告会?
僕はよくわからず、どういうことなのかを聞いてみることにした。だが、金本は僕が言う前にいきなりしゃべりだした。
「今日のテーマは、ゲーム音楽について各自報告してもらう」
金本はみんなの前で言うと、僕のほうをチラッと見る。
「岩崎くんは、貸したゲームの音楽についてで構わないよ」
四人は、それぞれ自分が気になったゲームの音楽について話し始めた。
僕はなにをしていいか見当もつかず、黙って金本たちの話を聞くことにした。
金本、岡山は恋愛ゲームの音楽について。和田は、RPGゲームの音楽。
荒木は、スマートフォンのゲームの音楽についての感想や、気に入った曲などをそれぞれ語っている。
「やっ、やっぱり。どのゲームもクオリティが高いよ、ハズレがないって感じ」
岡山の話を聞いた荒木は、それについて話す。
「最近は似たような曲が多くなっているし、どれも同じに聴こえてこないか?」
ーーいったいなにを話してるんだ? こいつらは。
会話についていけない僕は、まったく会話に入れずにいた。
「一般のアーティストが使われていることもあるよね、ゲームに限らずアニメにも」
和田は曲についてパソコンから調べると、その画面を僕らに見せる。
「たまになんでこのアーティストの曲を主題歌にするよね、作品に合わないような感じに」
金本たちは和田の話を真面目に聞いてうなずいている。
金本たちは真剣になって、それぞれ意見交換をしながら談笑する。
「じゃあ、最後に岩崎くんの番だね。貸したゲームの音楽について、君はどう思ったかい?」
全員が、僕のほうを見ている。
「え? どうって……」
いきなりどう思ったかなんて聞かれても、僕はなにを話したらいいかわからずにいる。
「なんでもいいんだよ? 岩崎くんが、あのゲームに使われていた曲について話すだけでいいんだ」
そう言われてもなかなか言葉が出てこない。昨日、ギャルゲーをプレイした時の感想を話すことにした。
「主題歌もすごい良かったですが、ゲームプレイ中に流れてくる曲も印象に残りました」
ーー僕はなにをいっているのだろう。
ただ感想を言ってるだけなのに、僕はなぜか恥ずかしい気持ちになった。
「ギターがカッコいいのばかりで、練習して弾きたいフレーズがたくさんありました」
僕がそう感想を言うと、全員は納得したようにうなずいている。
「確かに、あのゲームに使われているギターはどれも良かったよね。 僕もすごく気に入って必死になって覚えたな」
ーーあれ、こんな感じで良かったのか?
ギターが良かったということしか話をしていない僕はそう思った。
これでよかったのか、金本たちに聞いてみることにする。
「こんな感想でいいんですか? 先輩たちの会話より、適当な感じがしますが……」
僕の話を聞いていた荒木が答える。
「そんなもんで構わないでしょ? 岩崎くんがそう思ったならさ」
荒木がポンポンと僕の肩をたたき、笑顔でそう言った。
少し恥ずかしいような気分になった僕は、ゲームで気に入った曲をコピーしたことを伝える。
「実は昨日、ちょっとだけ覚えてきたんですよ! 聞いてもらえますか?」
僕はさっそくギターケースからギターを取り出すと、弾く姿勢になる。
「おお、どれどれ」
金本たちは椅子を動かして、僕のほうへ向ける。
僕はギターアンプのスイッチを入れて、覚えたところを弾く。
ーーあれ? こんな感じだったかな?
完璧に覚えてはいなく、弾いてみて少しおかしいと気づく。
「ちょっと違うんじゃないかな? そこは、そうじゃなくてこう弾くんだ」
和田はギターを手に持ち、 僕が弾いたところを弾き始める。
ギターの音色は、ゲームに流れていた曲そのものだった。
「ここはコードチェンジがしにくいから、こうやって弾くといいんじゃないかな?」
和田がゆっくりとわかりやすいように、弾き方を教える。
僕は教わったところをもう一度弾き直す。
「うん、できてるできてる」
和田は僕が弾いてるギターに合わせてギターを弾いてくる。
ーー最初は嫌なやつだと思ってたけど、いいやつじゃないか。
初めて会った時の印象とは違い、和田が親切な人だと僕は思った。
「まさにゲームサウンドだ! なら僕らも、参加させてもらおう」
金本たちは楽器を取り出すと、僕らのギターに合わせてくる。
気がついけば、全員で一つの曲を弾いていた。
ーーセッションみたいで、なんかテンションが上がるな!
一人で弾くより誰かと一緒に弾いたほうが楽しいことをあらためて実感する。
僕がそう思っていると、教室の扉が突然開かれた。




